208 名前:
◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:58:42.97 ID:Ji74kvwo
快晴だった天気も徐々に風が拭き始め、あちこちに小さい竜巻がちらほらと目立つ。
そんな中で静かに対峙する2人・・周囲は固唾を飲んで今か今かと溢れ出す興奮を必死に抑えながら
見守る、そして2人も体中から溢れる熱いモノがある。
「さて・・行くぜッ――!!」
「来いッ――!!」
そのまま聖の姿は消え、藤堂の身体に痛みを伴った衝撃が走る。どうやら聖はあの一瞬の間で持ち前の
スピードを駆使して藤堂に一撃を与えたようではあるがとっさに藤堂もガードしていたためダメージは
それほどないが・・しかしガードしていたとはいえ、聖の一撃の重さは凄まじい。
「チッ! やっぱ防がれてたか・・」
「この一撃の重さ・・流石に不良と呼ばれた事だけある。だがこれならどうだ!!」
藤堂はそのまま目を閉じると構えを取る、聖もそれに合わせて構えを取ろうとしたその瞬間、藤堂の拳が聖の
顔面めがけて飛んでくる。しかし藤堂の拳を察した聖はそのまま捌いて軌道を逸らすとそのままカウンターとして
左拳を藤堂に放つが藤堂もまた聖と同様に拳を捌いて軌道を逸らす。
「避けられたか」
「驚いたぜ、俺のやり口を再現してくれるとはな。お陰で少し勉強になったぜ」
「だったら・・俺にもっと見せてみろ。全て叩き潰す!!」
「この俺を舐めるな!!」
そのまま聖は藤堂に向かい、両者はそのまま両手を合わせながら一進一退の単純な力比べを始める。
「力は俺の方が少し上のようだな。団長さんよ!」
「だからどうしたと言うんだ。だが・・」
藤堂は聖を突き飛ばし体制を立て直すが、藤堂はそのまま聖に殴りかかろうとするものの突如として藤堂の体が
宙を舞う。しかし藤堂もそのまま受身を取って瞬時に体制を整えると聖に向けて突進を試みる、普段の聖なら
ここでかわすところなのだがあえて藤堂を受け止める。しかし藤堂はその瞬間を狙っていたのかそのまま聖の
左腕を取るとそのまま一本背負いの構えを取る。突然の出来事に驚いた聖はそのまま藤堂の一本背負いを
もろに受けてしまい尻餅をついてしまう。
あまりの光景に観客はおろか、解説席に居た翔も驚きのあまり呆然としてしまう。一方の聖はそのまま
立ち上がると藤堂をじっと睨む。
209 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 05:59:19.41 ID:Ji74kvwo
「まさかこの俺に一本背負いをかまして来るとはな・・」
「お前の合気道は主に手首や腕を掴む事を重点的にしている。しかしいくらお前でも体全体は掴む事が出来まい」
「なるほどな。・・だが俺を余り舐めるんじゃねぇぞ。合気道だけだと思ったら痛い目見るぜ?」
「ほぅ・・」
そのまま聖は別の構えを取り独特な動きで藤堂にじりじりと詰め寄る、突然の聖の行動に戸惑いを隠せない
藤堂ではあるが冷静に聖の動きを察したのか即座にガードの構えを取る。
「なるほど、ボクシングか・・だがッ!」
「・・・」
一向にガードを崩さない藤堂に対して聖はそのまま動きを続けるが、藤堂がガードを崩さないのを見ると
先ほどの動きを止めて瞬時に別の構えを取り、なんと藤堂のガードを掻い潜り鳩尾めがけて空手の技である
正拳突きを放つ。突然の聖の行動に呆気に取られてしまった藤堂はガードをするが突然の事に判断が
遅れてしまって正拳突きを綺麗に貰ってしまい鳩尾を抑えながら立ち竦んでしまう。
「言っただろ? 合気道だけだと思っていたら痛い目を見るって・・」
「チッ、ボクシングの動きに空手の技か」
「今まで倒してきた奴等の中で役に立ちそうなものは目で見て実践している。
それにしても綺麗に放ったはずなのに意外にタフだな」
聖の言うように藤堂もダメージを受けているものの、まだピンピンとしているようだ。
「女になってからもお前と同じように日々の鍛錬は怠らんようにしてるんでな。・・だが、今度は油断しない!!」
「考える事ってのは一緒って訳か・・面白ェ! 徹底的にぶちのめしてやるぜ!!」
激戦は更に熾烈を極める。
210 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 06:00:49.68 ID:Ji74kvwo
当初は盛り上がりを見せて裏側では賭けをしていた観客達ではあったが聖と藤堂の予想外の激戦を見せつけ
られてその事もすっかり忘れてしまうほど、2人の激戦を食い入るように固唾を呑んで見守っていた。
それは解説席に居る翔や宗像も同様で普段は沈着冷静な宗像も珍しく2人の激戦を何も言わず見守って
いたのだが、中身の入っているペットボトルを力いっぱい握り締めるほど興奮しているようだ。
「おい、珍しく真剣だな」
「こんな面白い事になるとはな・・実現して正解だった」
「しかしこれだと誰が勝つかわかんねぇな」
「決まってる。・・団長だな」
「ちょっと待て! 勝つのはあいつだ、何せ俺が唯一決着をつけれなかった奴だからな!!」
「好きに言ってろ、時期に勝負はつくだろう」
「何だとッ!!」
- とまあ、解説席のちょっとした騒動はさておいて当人達はと言うと激戦に次ぐ激戦でお互いに生傷が
ちらほらと目立って居るのにも関わらず一進一退の攻防を繰り広げていた。
「ウラッ!!!」
「まだまだッ!!!」
拳と拳が行き交うその光景はまさに喧嘩そのもの、最初はお互いに出し抜いたり様子見をしていた
ものの中盤以降になってからはお互いに本気モードとなっているようで己の拳だけで真っ向から勝負を
している。そんな状態が続く中でついに決定的な出来事が起きてしまう、藤堂の放った拳が聖の右胸に
当たってしまいついに怯んでしまう。
211 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 06:00:56.82 ID:Ji74kvwo
「ハァハァ・・チッ、一発貰ってしまったか!!」
「どうやらお前は格闘技の技術はあっても肝心の体力が俺より低いようだな」
体力というものは人間運動するにはとても重要なものでその量は女性よりも男性の方が多い、女体化した
聖はなんとか落ちた体力を補おうと様々な技を身につけて基礎もしっかりと鍛えてはいたもののやはり
根本的な部分は難しいようだ、だけど聖には諦めると言う2文字は存在しない。
「・・それがどうした!! 俺はまだくたばっちゃいねぇぞ!!!」
「何ッ!!」
そのまま聖は立ち上がると藤堂に向けてアッパーカットを放つ、完全に油断をしていた藤堂は聖のアッパーカットを
貰ってしまい今度は藤堂がその場に倒れ混んでしまう。聖に殴られてしまった影響で藤堂は軽い脳震盪を起こして
しまうがふらつく身体に渇を活れて何とか立ち上がる。
「まだそんな余力があるとは・・油断した!」
「へへへっ・・これで五分だなッ! このまま頂くぜ!!!」
「同じ手がそう易々と通用すると思うなッ!!!!」
もう2人には観客の歓声は愚か周囲など全く目もくれず、もはや相手しか見えていない。
212 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 06:02:26.90 ID:Ji74kvwo
様々な盛り上がりを見せる学校の外はごくありふれた日常の日々を送っている。そんな中でカバンを
持ちながら学校へと帰る女性が一人・・養護教諭、春日 礼子。年齢は本人の希望により不詳にさせて
貰う、彼女の職業は俗に言う保健室の先生ではあるのだが・・その経歴は元超有名暴走族の総長を
勤めており普段は普通の性格を偽ってはいるので地が出ないものの限定された人物には出てしまう。
そんな彼女の出張の理由は年に一度の養護教員の勉強会、学校内で行われている決闘など知る由もない。
「しかし勉強会は凄かった、年に一度と言うのが勿体無いな」
礼子自身、経歴はああではあるが成績のほうは頗る良く大学も卒業する際には主席候補に選ばれたぐらいだ。
しかし礼子自身は自分の経験を元に考えているので成績など余り気にしてはいない、今回の勉強会もかなり
参考になった意見が多かったようで心なしか満足しているようだ。
「さって・・戻っても結局は仕事か、校長に今回の事を書類でまとめなきゃいかんしな」
嘆いていても仕方がない、礼子は気持ちを切り替えるとそのまま学園に足を踏み入れる・・が、そこには
ガチの殴り合いを繰り広げている聖と藤堂や周囲を察知して全てを悟る。
「なッ!! あいつら――」
そのまま礼子は行動に移り、手始めに裏口に設置してあった主催本部を占拠。どうやら盛り上がりすぎて
礼子の存在に気がつかず、なす術もないまま制圧されたようだ。そして置いてあった予備のマイクを取ると
会場一杯に張り裂けんばかりの怒声を放つ。
「てめぇら!!!!! 静まりやがれェェェェェェ!!!!!!!!!!」
「あ・・あんたは――」
「れ、礼子先生――!」
突然の礼子の出現にガチの殴り合いをしていた2人は防衛本能からか、動いていた体が硬直してしまって
目が点になってしまう。そもそも2人にとって礼子の出現は絶対にあり得ないことであり必ず避けたかった
ことで、なのにこうして現れているという事実は2人の身体を硬直させる理由になりうる。
「全く、たかが喧嘩ごときにここまで騒ぎやがって・・ 今からこの場にいる全員、体育館に集合だッ!! わかったなッッ!!!」
こうして校内を散々に騒がせたこの決闘は決着がつかないままで1人の女性の手によりあっさりと終焉を迎えた。
213 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 06:03:48.20 ID:Ji74kvwo
ここで後日談を話そう、あの後は全員一人も欠けることなく礼子によって体育館へ強制連行させられて
全員夜の八時近くまで説教のフルコースを受ける羽目となった。そして大半の者は各担任教師を通じて
宿題の倍増という処分が下され、生徒会を含めた主催者側は前途の処分に加えて3週間の奉仕活動という
厳しい処分が下される事となった。
しかし全員、賭けや景品である沙織の極秘ブロマイドの存在は辛うじて守りぬいたようではあるが、その
行き先などは未定となっており当初は騒ぎになりかけていたが時が経ってからは次第に有耶無耶となってしまった。
そして決戦を繰り広げらた当人達はと言うと・・
「おいッ! そこ汚いぞ!!」
「うるせぇ!! お前こそ床がなっていないぞ!!」
聖と藤堂がいるのは男子トイレ、元男の彼女達には懐かしくもあり悲しくもありと複雑な場所ではある。
聖と藤堂に下された処分は宿題倍増と奉仕活動に加えてこの学校にある全てのトイレ掃除、しかも2人揃って
礼子の監視つきときているものだから心境は最悪と言っても過言ではないだろう。
ちなみに藤堂は部活停止処分を暗いそうになるものの宗像の必死の嘆願もあってか何とか回避されて
いる、しかし昨日までは拳を交えた相手・・フォローというものは皆無なのは見ても明らかだろう。
「大体お前の掃除にはムラがありすぎるッ!! いいか! 掃除というものはな・・」
「そう言うてめぇだって水浸しじゃねぇかッ!! ホントはド下手くそじゃねぇのか?」
「何だとッ!」
「やんのか!?」
「いい加減にしてちょうだい。喧嘩する暇あったら手を動かしなさい」
溜息混じりの表情で礼子は2人を諌める、このような光景は既に40回近くにも上る。礼子とて他に雑務やら
勤務があるので監視に時間を割く余裕などない、以前は生活指導の教師が引き受けていたのだが2人の前に
僅か1回で折れてしまって礼子にお鉢が廻ったのだ。
214 名前: ◆Zsc8I5zA3U 投稿日: 2009/04/04(土) 06:03:52.73 ID:Ji74kvwo
「だってよ礼子先生、こいつが突っかかってくるんだぜ?」
「先に吹っ掛けてきたのはお前だろ!」
「何だとッ!!」
更に言い争いを始める2人・・そしてついに礼子の堪忍袋の緒が切れた。
「・・くだらねぇ事言ってないでさっさと手ェ動かせ!!! これが出来なきゃお前等の進路はないと思え!!!」
「「は、h・・」」
「返事してる暇あったらさっさとしろッ!!!」
「「はいッ――!!!」」
泣く子も黙る2人でも礼子の鋭い眼光には適わず、せっせと掃除に勤しむのであった・・
―fin―
最終更新:2009年05月28日 05:09