両親からの誕生日プレゼントは、女の子として生きる為に必要な物全てだった。
部屋は誕生日前の三日で壁紙や床板ごと変えられ、前は無かったウォークインクローゼットや全身が映る鏡とベッドで部屋の半分が消費されている。残りの半分は勉強机とテーブルと少しのぬいぐるみ達。
誕生日当日、パステル色の部屋を目の前に俺は笑うしかない。
「あたしの部屋より女の子だね、お姉ちゃん」
俺の隣で、変わり果てた部屋を見ていた妹が言う。
「まあ、女の子だしな、俺」
この部屋と同じく、変わり果てた俺にはお似合いだろう。
一方部屋に入ると、鏡にまだ慣れないスカートとレースの付いたブラウスを着た自分の姿が映った。
「似合ってるんだけど似合ってないな」
感じた事を言葉にしたら妹に笑われた。
早く慣れてしまいたいと思う反面、この慣れない感覚が男の俺だと思うと慣れるのが怖い。ああ、でも下着には数時間で慣れてしまったのだから男の俺はもう薄れているのだろう。
そう考えて、気付くとスカートに違和感がなくなっていた。
「ばいばい、俺」
なぜか涙が流れ落ち、この一人称もこれで最後だと思った。
お わ り
最終更新:2010年09月04日 22:49