「お前、本当に女になったんだよな?」
「何を今更・・・この声とこの格好を見れば判断つくじゃん・・・」
「そう・・・だけど。けど、なんとなく信じられなくてさ」
彼はそう言って彼女から視線を逸らすとボリボリと頭をかく。
彼は友人が女になってしまった事が今だ信じられないと何度も同じことを彼女に問いただしていた。
「む、なら、これ触って確認してみるといい!」
彼女はそういうと、自分の胸をぐいっと押し上げて、それを彼に障れと強調する。
そんな大胆な彼女(元男)に驚いた彼は慌てながら真偽を確認する。
すると、彼女は更に自分の胸を突き上げて、男は度胸!ほらほら!と茶化してくる。
それでも、モジモジして彼女の胸を触ろうとしない彼に、
「なんだよ。さっきはあんなに触りたそうに言ってたじゃん」
「い、いいのか・・・・?」
「もったいぶってるだけの他の女と一緒にしないで欲しい」
「・・・・ではちょっと失敬・・・」
意外と小さいな・・・と思いながらも慎重に触っていく。
そんな手つきに耐えられなくなった彼女は・・・・
「あはははははは!む、むり!くすぐったい・・・!!」
おっと、と言って彼は彼女の胸から手を離し、何か手つきが悪かったのか?と自分の手を見返している。
「どうだ?おんなだろ?」
ああ、そうだな。と若干歯切れの悪い返事が帰ってきて、彼女は内心にやりと笑む。
「で、さ。お前のも触らせてよ。こっちだって触らせてあげたんだからさ」
「は?俺の!?」
彼女は彼の胸元を見て少しモジモジしている。
今は衣替えが終わった後で、夏の制服になっている。比較的薄着で男性の胸元もそれなりに強調される形になっている。
「そ。胸元を触らせて欲しい」
ああ、そんな事か。とそんな簡単な事に承諾など必要ないと言わんばかりに半そでのシャツを脱ぎ捨てる。
「え?で、何で男の胸なんて触りたいの?」
シャツを脱ぎ捨てた後、我に返った彼は彼女の言葉を聞き返す。
すると、顔を真っ赤にした彼女がこういった。
「む、胸を・・・胸の筋肉を触らせて欲しい!!」
改まって言ったのが恥ずかしかったのか、彼女は更に顔を赤くした。
なんだか可笑しな頼みだなと、彼は深く考えずに承諾した。
「ほれ、好きなだけ触れ」
「む、えと、力入れてもらえる・・・?」
上目使いに言われて彼は少し怯んだように頷いてこれに同意した。
彼はフンと鼻から息を漏らして胸に力を入れる。鍛えられた胸元はすぐに厚い肉の壁となった。
それを目と手の感触で確認した彼女はうっとりとした表情で
「うわぁ・・・凄い・・・」
そういいながら細い指が彼の大胸筋を縁からなぞるように動かしていく。
その様子は映画のハリウッドスター同士のベッドシーンのように見えたかもしれない。
「凄い・・・硬いです・・・」
「おおぅ・・・!!」
「鍛えてるんだな・・・」
「ま、まあな。伊達に毎日80回プッシュアップしてないさ。あ、腕立ての事な」
そっかぁ・・・と相槌を適当に彼女は彼の大胸筋に注意を向けたままだ。
その手は更に激しくなっていく。突っついたり、手のひらで撫でたり。
そんな事をされていては大の男の下半身が元気にならない方がおかしい。
彼の下半身は既に臨戦態勢であった。
必死に胸を撫でる彼女に対し、彼は少しずつ居たたまれなくなり、ソワソワと周囲に目を泳がせる。
そうでもしないと股間のテントは天井を突き破りそうな勢いだったからだ。
彼は気づかなかったが、彼に対して彼女も両足の太ももをもじもじさせていた。
彼はどうして良いか分からず身を固めていると、彼女がこう言った。
「俺ってさ、昔から力弱かったじゃん?だからさ、こういうの憧れてたんだ。男らしい体ってさ、好きなんだ」
告白じみた様な言い方に彼は沈黙を続ける。
「で、でさ・・・もう手に入らないからさ・・・だから・・・」
「いいさ、好きなだけ触れ。その方が鍛え甲斐がある。けど、条件がある!」
彼女は、え?と嬉しそうな顔のまま彼の顔を見上げた。
「俺も触らせろ!それが条件だ!」
彼女は一瞬驚いた表情になって暫く沈黙する。
彼としては一種の賭けの様な提案ではあったが、一度言い出した事を撤回する事はなかった。
彼はじっと彼女の返事を待った。ただし、ここは二人以外誰も居ない放課後の教室である。
彼女は首を縦にこくんとぎこちなく頷く。
彼は思う。これは彼女は女として男の自分を受け入れたと。
彼女は思う。自分を女として受け入れてくれたのだと。ただ、女としてこのシチュエーションはまずかったかな?とは思ったが。
しかし、彼はすぐに動き出した。一度動き出した雄の本能は止まる事を知らない。
「あっちょっと、そ、そこは!」
彼の手が彼女の肢体へと伸びた。
彼女が懸念したのは女としての恥じらいもあったが、それ以上に自分のアソコが濡れている事実を知られる事。要するに、自分が筋肉フェチであった事を性的な意味で知られてしまう事にあった。
だが止まらない。雄は止まらない。
えあちょっ、とか言っている間にスカートの中に彼の手が入り込む。
それを阻止すべく彼の腕を両手で捕まえる。
彼の腕は素晴らしく筋肉質だった。彼女は一瞬うっとなってうろたえる。
頭の中がよくわからなくなってきた彼女は次第にその抵抗を弱めた。いや、弱めずには入られなかった。女になった自分の性癖をど真ん中の直球で打ち抜く彼の体。
「はぁっ…んん!!」
体中に電気が走って自然に腰が逃げる。同時に、自分自身から信じられない声があがる。
彼は確信した。彼女は欲情していると。彼は彼女が初めての女性ではない。所謂非童貞であるがゆえ、彼女のスイッチが入った事を。
対して彼女は、迫り来る初めての快感に、もうどうなってもいい。自分が元男とか、筋肉フェチだとか、そんなのはどうだっていい。目の前の男に抱かれるのを良しと決意した。
何度も言うが、ここは放課後の教室である。
キーンコーン
二人がはっと我に帰る
「場所、替えっか」
笑いながら言う彼に、彼女はしばらくの沈黙の後、荒っぽいようでいて、かつ甘えた声でこう言った
「ばか…その前にキスだろ…」
彼は彼女をリードするように口づけをした。
再三申し上げるが、ここは放課後の教室である。
最終更新:2010年09月04日 22:55