「皆々様!よくぞ集まってくれましたー!」
僕の友達、青木佐和子ちゃんは、私の為だとかで麻雀パーティーを開催してくれた。
「いえーい・・・・」
そう言う僕はあまり乗り気じゃなかった。なぜならば。
「いえーーーい!!」
「どんどんぱふぱふー」
このパーティーには二人の男性が居たからだ。
一人はスポーツマンタイプの黒髪短髪体育会系、もう一人は茶髪ロンゲの遊んでそうなの。
開始早々から飛んでもないハイテンションで、それだけで僕は着いていくのがやっとだった。
「まずは自己紹介からーー!はい!」
と、佐和ちゃんは張り切って声を上げる。
「○×体大の修造です!ほら、もっと熱くなれよ!!」
暑苦しい程の熱意を迸らせるのは黒髪短髪体育会系の修造君。
「○□大のエイジだよん!よろしくね!えっと、君は?」
佐和ちゃんが紹介を促す前から僕に名前を聞いてきた馴れ馴れしい茶髪ロンゲの遊んでそうなのはエイジ君。
「ほら、そこ!手ぇ早すぎ!はい!ほらほら!」
と、背中をパンパン叩かれてケホケホと咳き込んでいると、3人の視線が僕に注目する。ううう・・・恥ずかしい・・・。
「えと・・・えと・・・・"私"は・・・藍那・・・です」
くっはーーー!とエイジ君が身もだえすると、佐和ちゃんの顔を見てこう言った。
「佐和子さー、ほんとにお前の友達なわけ?俺、すっげー感動した!」
すると、佐和ちゃんはジト目でエイジ君を睨んで
「あんた、殺(やら)れたい?」
「いや!いやいやいや!!どっちも簡便!!!」
半笑いにもマジメにも取れる感じで佐和ちゃんの提案を拒否した。
「え・・・どっち?って?」
僕の素朴な質問に修造君はにやーと顔を緩ませて耳打ちしてくる。
「それはね・・・・」
「ほら!そこ!!こっそりいちゃいちゃしない!ゲームはまだ始ってないの!」
修造君は佐和ちゃんにそう釘を刺されて、がっはっは!と笑いながら僕から離れる。
「と、言うわけで、自己紹介も終わったことだし・・・・早速始めましょ、ほら、藍那、こっちくる!」
佐和ちゃんは立ち上がって僕の手を掴むと、強引に引っ張って部屋の外へ連れて行こうとする。
「えっ?えっ?な、なに!?」
「ほら!折角呼んだ男の子をほっぽらかして、一人黙々麻雀するつもり?だめだよねーいけないよねーサプライズは最低限の義務だよねー?」
なにをわけのわからないことを・・・佐和ちゃんは昔からこうだ。
とか考えていると、ぽいっと部屋から放り出されてしまった。
「じゃーん!これなーんだ?」
「せ、セーラー服?って、なんで二着も!?」
「うふふふふ!あんたも着るの☆」
「えーーーーーーー!!」
廊下に僕の叫びがこだました。
仕方なくセーラー服に着替えて、再び部屋の中に戻ると、男衆から歓喜の声が上がる。
そんな視線に僕が顔を熱らしていると、修造君が目をキラキラさせて僕のほうを見ているような気がした。
「セェラァ服を~~ぬ~が~さ~ないで!びっくりどっきりお色気脱衣麻雀大会の開始ーー!!どんどんぱふぱふーーー!!」
おぉぉぉぉ!!と雄たけびを上げる男衆に対して、僕はえぇぇぇぇぇ!と悲痛な叫びを上げた。
かくして『セェラァ服を~~ぬ~が~さ~ないで!びっくりどっきりお色気脱衣麻雀大会』が開催された。
しかし、麻雀となれば僕にも勝算はある。
佐和ちゃんと二人打ちで鍛えた腕は伊達ではないのである!
「む、むむむ。これで・・・・倍返しだぁぁぁぁぁぁ!」
と、何処かのシローさん張りの台詞で捨てハイをバチーンと卓に叩きつける。
僕はその瞬間を見逃さない。
「ふふ。ふふふふふふ!おやおや、ありがとうございます。ロンです☆」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!はこったぁぁぁぁ!!!」
乗りに乗りまくった僕の配パイは、実は麻雀素人だったエイジ君の服をあっという間にひん剥いていく。
一方体育会系の修造君は経験者だったのかかなり検討している。
タンクトップにジーパンを維持したままその丸太のような腕を露にさせているにとどまっている。
「あーん・・・修造君のそれ、見たいかも!ロン!」
「げ、マジかよ!ありえねぇぇぇぇ!!」
ここぞとばかりに飛び出した佐和ちゃんの役マンは薄い生地のタンクトップを指名。
そして、鍛え上げられた胸元が露となった。
我々女性陣(一人にょた)は何一つ脱いでは居ない。
佐和ちゃんと僕のやりたい放題の戦場と化していた。
「ちょっとぉ、藍那手加減くらいしてあげなさいよー」
「佐和ちゃんこそ」
「む、お、俺がんばる!熱くなれ!もっと熱くなれーーー!!」
「あぅあぅあぅ・・・俺もうまっぱなんだけど・・・・」
女性陣の脱衣に燃える修造君と既に恥ずかしいものを身をかがめて隠しているエイジ君。
「俺頑張るよ!藍那ちゃん!俺藍那ちゃんの脱衣シーンみたいな!!!」
「やだ。だって負けるの悔しいからだめだもん」
「も、も、も、萌えてキターーーー!」
どうやら乗りに乗っている僕の発言は迂闊だったらしい。彼の煩悩の炎に油を大量にぶちまけてしまった。
そして、戦況は思わぬ事態へと発展していった。
「だっしゃーーーーー!!ろん!ロン!RON!!」
「う、うそ・・・」
「えっへへへへへ!藍那ちゃんのスカーフいただきまーす!」
流れるだろうと思われる捨てハイの流れからは読みきれなかった闇ロンが僕へと炸裂した。僕も元男だ。と勇気を振り絞ってスカーフを取り去る。
「よーし!次はどこだ!どこにする!」
「お、俺も応援しちゃうぞーー!」
崖っぷちすら飛び降りたエイジ君は、修造君となにやらアイコンタクトを行うと、次の局面もなにやら怪しい流れへと変貌していく。
(まずいわね、藍那。奴ら、連携を始めたわ。このままだとこっちも危ういわよ)
(そ、そんな!)
しかし、佐和ちゃんの声は何処か楽しそうだった。対して僕は段々とその余裕が無くなっていく。
「あ、あぁ・・・・そんな!」
「きたぜ・・・ぬるりと・・・!」
修三君の顔が何か尖ってきたような気がする。そんな彼にスカートを指名される。散々エイジ君を3ループ程ひん剥いてきた僕にそれを拒否する事もできず、指名されるままスカートを脱ぎ出すしかなかった。僕の顔が今までに無いくらいの熱を帯びて、視界がぼやけてくる。
「うっ・・・うっ・・・・うぅ・・・」
3ループ目のエイジ君は遠い目をしながらもこう言った。
「焼かれながらも・・・人は・・・そこに希望があればついてくる・・・!」
ちょっと!どこの闘牌伝説ーーーー!?やばい、やばいよこれ。二人の男達がどんどん変貌していく!ま、負けていられるか!
「ふ、ふん!3ループも負けていて何が希望よ!絶望よ!マイナス千円・・・いえ、マイナス1万円よ!それがあなたの男の価値です!」
「がーーーーーーーん!!あわあわあわ・・・俺もう帰りたい・・・助けてください・・・」
しなしなしな、と萎れた植木の様にしなびていくエイジ君。しかし、そんなエイジ君にすかさず修造くんのフォローが入る。
「命乞いなど・・・自分のプライドまで明け渡すな!失うものなど、服だけでたくさんだ・・・!胸を張れ・・・!手痛く負けた時こそ・・・胸を・・・!」
「あ、ああ!!ありがとう・・・修造!俺、もっと熱くなる!!」
「くっ・・・・!」
その声の主は佐和ちゃん。ワナワナと震えて何かに耐えているみたいだった。
「だーーーーー!!私をのけ者にするなーーー!3人だけで楽しんでんじゃないわよーーーーー!!」
すると、大騒ぎして服を脱ぎだす佐和ちゃん。あっという間に真っ裸になって、男二人の視線を釘付けにする。
露になった胸元はツンと上を向く見事なマスクメロン。腰から足先まで見事な曲線を描いている。
「もういいわ!あんたら二人とも・・・・覚悟なさい!!」
「うぉーーーー!」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」
熱い雄たけびを上げてがっつく修三君。何か悪い夢でも思い出したかのように頭を抱えて青白くなるエイジ君。二人は対照的だったが、ふたりまとめて相手してやんよ!とベッドへダイブした。
ここから先は僕の口からでは形容しがたい。あまりの驚愕の事態に、僕はそれを呆然と眺めているしかなかった。そして、事も次第にエスカレートし、僕は恥ずかしさのあまり、部屋の隅っこで体育座りで身をすくめていた。
「はっはっ!うあ!!」
「あら、もう出ちゃったの?もうすこし頑張りなさいよ」
「む、むりだって!」
「だーめ!エイジはもう枯れ果ててるんだから、修造!あんたが気張りなさい!」
「ひ、ひぃぃぃ!!」
「ほら!元気にしてあげる」
佐和子は、修造の萎えた肉棒を乱暴に掴むと、それを口に含む。ちゅっぽじゅぽといやらしい音が部屋に響き渡り、それを聴覚で捉えた修造はあっという間に息子を元気にさせる。
「いっちょあがり」
「くぅっ!す、すげぇ・・・!!」
「まだ、本番はこれからなだもんねー」
「くっ、毒を食らわば皿まで・・・!S・E・X・・・セックス!やぁってやるぜ!!」
第5ラウンドの開始である。修造は佐和子の体を強引に仰向けにすると、佐和子の秘部をまさぐって壷の入り口の位置を確認する。そして、その上部にある突起を親指で確認すると、親指に絶妙な振動を与えつつ、それをヴァイブレーションさせる。
「あっ!んんんんんん!!」
「まだまだ!」
親指のヴァイブレーションを維持したまま、壷の入り口の位置を確認した人差し指と中指は十分な湿り気を確認すると、それを一気に差し込んだ。
「はうっ!んああああああ!!」
「へっへっへ!熱くなれ・・・もっと熱くなれよ!!」
「はぁん!す、凄い・・・!い、今までで一番いい・・・かも!!あんっ!」
実はゴールドフィンガー修造だった彼は、その強弱を上手に調節しながら佐和子を絶頂に導いていく。
佐和子の両手はベッドのシーツを快楽から耐えるかの様に握り締め、足先はピンと爪先立ちで腰を浮かせては落とし、浮かせては落としている。
「あっ!あ!んんん!!はっ!い、いい!お○んこいっちゃ・・・イッちゃう!!」
その声を聞いた修造は、はぁはぁっ!と呼吸を荒げながらもラストスパートをかけた!
「あぁ!!んんんん───!!」
佐和子の体が一瞬硬直したように固まると、太ももが修造のゴールドフィンガーを力強く挟み込む。そして、
彼女から声にならない甲高くも細い声が上がり、下半身がビクンビクンと跳ね上がる。
それを佐和子が絶頂を迎えたというサインと受け取り、修造がゴールドフィンガーの動きを止める。
佐和子の目は空ろで、口元からはだらしなく涎をたらしている。時折「あっあぅ!」と喘いでは下半身もだらしなく蟹股に開いたままビクンビクンと痙攣させていた。
「いっしょあがりだ。どうだ!」
「はぁ・・・はぁ・・・うふふふふ・・・・やってくれるじゃな・・・あんっ・・ないの」
佐和子は、よいしょっと体を起こすと、悦に入る修造の体を力いっぱいに押し倒す。
「あんっ!・・・・ふふふ・・・・まだ、感じてる・・・けれど、まだ始ったばかり・・・よね?」
「な、なんだこの女は!!!」
「理由はお解りよね・・・?あんたにはここで何度も果ててもらうわ!」
アッーーーー!と修造からだらしない声が上がって、その言葉の通り、何度も何度も果てていた。
「く、狂ってる・・・がく・・・」
ついに修造が枯れ果てた。
「あら、もう終わり?でも、欲頑張った方かしら?」
室内は男と女の異様な熱気と臭いで充満していた。
僕はそんな一部始終を耳で聞き取り、竦めた足をモジモジと動かしていた。下半身に貯まる卑猥な感覚に少しでも耐えるために。
「ん~~っと・・・藍那?大丈夫?」
「・・・・・・」
「ゴメンね・・・ついかっとなっちゃって・・・・折角、藍那のためにセッティングしてあげたんだけど・・・・やっちゃった☆」
「いいよ・・・・別に"僕"、最初からそんなつもりなかったし」
軽い風だがアレでも反省しているのだ。彼女なりの照れ隠しなのだ。
「けど・・・・!」
「けど?」
「佐和ちゃんのあんな所見たくなかった!」
僕の感情は爆発した。彼女は・・・・僕の気持ちを何も分かっていない。
だから、こんな男達を用意して・・・・こんなこと・・・・!
「え・・・・と、どういう意味?」
「まだわからないの!?僕は・・・僕は!ずっと佐和ちゃんの事が好きだったのに!!」
「・・・・・・」
佐和ちゃんは何も言わなかった。驚いて身を固めていたが、表情はどこと無く複雑な感じだった。
「やっぱ、そうだったんだ」
「え?」
僕は佐和ちゃんの意外な答えに耳を疑った。
「知って・・・たの?」
「そりゃ、そうよ。昔から、あんたはずっと私にべったり。おち○ちんが、こーんな小さなときからね」
「なぁ・・・!」
僕は顔を熱らすと、佐和ちゃんははぁ・・・とため息をついて言葉を続けた。
「あんたがそんなウブだからイケナイの。女の子は何時までも待ってくれないのよ?」
「・・・・・・」
「こうこうしてる間に、あんた女の子になっちゃったじゃない?アタシ、あーあーって感じ」
そ、そんな!佐和ちゃんが、僕・・・を?
「じゃ、じゃあ!じゃあ、どうして・・・・!」
「・・・・・そんなの決まってんじゃない。あたしもアンタのこと好きだったから!ずっと襲われるの待ってたんじゃない!」
!!そ、そんな・・・・そうだったなんて・・・・最後の方は少し下品だったけど、佐和ちゃんも僕の事が好き・・・だったなんて・・・。
僕は・・・・僕は・・・・
「馬鹿だ・・・・うっ・・・うあ・・・うわああああああん!!」
唐突に襲ってきた激情に僕は抗う事もできずに目頭を熱くさせて泣き喚いた。頬には沢山沢山、熱いものが流れ落ちていく。
「ほんと、馬鹿よ・・・」
そう言って、佐和ちゃんは僕を優しく抱き寄せた。暖かかった・・・。
「ふふ、こっち来なさい」
「うん・・・・」
「まったく・・・どっちが元男なのかしら」
「佐和ちゃんは最初から女の子だよ・・・・」
佐和ちゃんは黙って僕のセーラー服を脱がせていく。
僕は下着だけの姿になったが、自然と恥ずかしくなかった。逆に嬉しかったのかもしれない。
けれど、顔がどんどん熱くなっていく。
「綺麗ね、男も女も知らない体・・・・純潔っていうのかな?」
「・・・・・・」
「汚したくなっちゃったかも☆」
その言葉を皮切りに、佐和ちゃんが動き出した。
佐和ちゃんの手が僕の肢体へと伸びる。そして、小さなぽっちを人差し指の内側で優しくノックする。
「あっ!」
本当に優しかったそれに、頭が麻痺するような刺激が前進に駆け巡る。
「わお。すごい」
「え・・・・?」
「凄い感度ね」
「ええ!?」
自分でしたときのそれは、こんなものでは無かったと思う。ただ、小さなぽっちがピリピリと疼くだけだった。
「もうだめ、脱がしちゃう!」
佐和ちゃんはそう言うと、ブラジャーを置き去りにしたまま僕のパンツに手をかけて一瞬で剥ぎ取った。
「ブ、ブラは取らない・・・の?」
「やーよ、藍那の胸の形は女の理想系だもん。見たらショックでアタシが萎えちゃうじゃない」
「そーなの・・・?」
「もぅ!二度も言わせないで!とりゃ!」
「ひゃう!!」
今までに上げた事のない女の子な声が自分から上がる。
「藍那」
「佐和・・・ちゃん?」
「アタシたちのセックス見て、濡らしてたでしょ」
「なっ!?」
図星を突かれて一気に顔から湯気が上がるのがわかった。
「ふふふ、ねぇ、藍那。男だった時ちゃんとしこってた?」
「えぇ!?そ、そんな!そんな事・・・!」
「ないって?ふふふ、本当のこと聞きたいなー」
優しく耳元で囁かれて嘘を貫きとうせなくなる。
「1度だけ・・・」
「う、うそ・・・・」
「ほ、ほんとだよ!でも、なんか凄い罪悪感で・・・・佐和ちゃんに綺羅割るかと思った!」
「あんた・・・アタシを想像して・・・・また何と言うか・・・・普通の男なら、好きな女の顔にぶっかけて悦に入るもんでしょ?おかしいんじゃないの?」
「!!そ、そんなことない!」
「まぁ、いいわ・・・あんた、女の子に生まれ変わるために生きてたようなモンだったんでしょ・・・・もうそう言うことにするわ」
か、勝手に結論付けないで!まだ何も言ってないのに!!
「なのに・・・・女の子のここは・・・・こーんなに大洪水!」
そのとき、じゅるじゅるという音が聞こえて、下半身にありえない衝撃が走る。腰が自然に浮き上がって太ももで佐和ちゃんの頭を挟み込む。
「かはっ!!あぁぁぁぁぁぁ!んんん!くぅ───」
一瞬にして意識が真っ白になった。それが元に戻りそうになるたびに、下半身から全身に電気が走ってまた意識が真っ白になる。
そして、下半身からちゅうっと言う音が聞こえたと思うと──
「ふぅんん~~~~~~~~~~~~~~!!あっ!」
僕の意識が途絶えた。
「ん・・・」
気がついたたら部屋は薄暗かった。
体を起こすと、いつの間にかベッドに寝かされていたらしく、胸元から掛け布団がずり落ちた。
周囲を見渡してみると、もう誰も無い。
テーブルにはトンシーマットと呼ばれる薄いジャン卓と牌が転がったままだった。
「みんな・・・帰ったんだ・・・・」
そこでふと我にかえる。
恐らく意識を失う前は、佐和ちゃんとあんなことやこんなことを・・・・というか一方的にやられてたはず。多分。
男の子がいる前で!!
そう思うと顔がやけに熱くなってくる。
下着姿のまま一人身もだえしていたので、一気に体が冷えてきてしまった。
ううっとぶるぶる体を震わせてしまう。
そして、冷静になってから、一度自分の股間にてを這わせてみる。
綿生地のサラリとした感触と、ざらざらとした感触がそこにあった。
「本当に・・・やってたんだ・・・」
すると、ガチャっと突然部屋の扉が開かれて、佐和ちゃんが入ってきた。
寝巻きにするようなTシャツとハーフパンツのラフな格好で濡れた髪をタオルで水気を取りながら足でどけしと扉をしめる。
「あー起きたんだー」
「・・・・・・佐和ちゃん・・・・」
僕が不安げに佐和ちゃんを上目遣いで見上げると、彼女は優しく微笑んで
「大丈夫、処女はしっかり守ってあげたから☆」
「なっ!!」
空気が読めない人!僕は心でそう叫ぶとぷいっと顔を背けた。
熱りの冷めた意識では下着姿ではあまりに滑稽だったので、もと着ていた服に着替えてベッドに腰掛けていた。
その脇には佐和ちゃんが少し間を置いて座っていた。
薄暗い部屋のなか、佐和ちゃんの体からお風呂上りの香りが漂ってくる。
自分も体の臭いが気になって、くちゃくちゃになった髪の毛を指先で大丈夫かと確認してみる。
ついでに臭くないかとその指をにおってみた。
「くんくん・・・」
「あはは・・・・ごめんねー一人だけお風呂に入っちゃって」
「ん、いいよ。そんなの」
佐和ちゃんとの間に妙な間が発生した。
なんだか、佐和ちゃんから発せられるオーラみたいなものがそうさせているように感じられた。
「あのね、藍那」
「なに?」
「あたしね、好きな人がいるんだ」
「!!」
気を失う前の佐和ちゃんの会話を思い返してみる。
自分に対してはどうだった?好きだ。ではなく、好きだった。では無いか?
ならば、好きな人がいる。これは一体何を意味するというのだろうか!?
「ごめんね、藍那じゃないんだ。別の人。あたしさーこんな性質だからさ、つい色んな男とやっちゃうんだけどさ、もうこういうのもヤメにしようと思ってるんだ」
「・・・・・・」
藍那じゃない。僕じゃない。じゃあ一体誰?誰なの?
僕の心の中に嫉妬のようなドス黒い感情があふれ出していく。
「ほんとにゴメンね、でもね・・・・・藍那の所為なんだよ?あたしも、あんたが女の子になっちゃってホント動揺した。いっそのこと襲ってしまえばよかったなんて、何度も後悔した・・・・忘れようとした」
「・・・・・・・」
「でもね、やっと楽になれたの。藍那の気持ち聞いて、そんで今好きな人と本気で一緒になりたいって思った」
「うぅ・・・・・」
「彼にね、大学卒業して就職できたら・・・・結婚しようって・・・・プロポーズされたんだ。本当に嬉しかった。こんなアタシを本気で好きになってくれてるんだって・・・・」
「うぅ・・・あぅぅぅ・・・・」
「でも、彼にはまだ返事をしてないんだ」
「あぅぅ・・・・え・・・・?」
「あんたの所為よ」
期待と不安が入り混じっていた。この先に続く言葉が希望か、絶望か。
「でも、あんたのおかげ」
「うぅぅ・・・・うあぁぁぁぁん・・・・」
その言葉はおそらく、ごめんなさい。あんたのおかげで彼のプロポーズを受ける決心がついたよ。だろう。
辛かった、正直辛かった。泣き叫ぶほどに辛かった。でも、佐和ちゃんの嬉しそうな声は・・・・嬉しそうな声だけはとても嬉しかった。
「もう・・・泣かないでよ・・・・」
「だってぇぇぇぇ!!」
「ねぇ、藍那。これからさ、アタシのことなんてきっぱり忘れて、新しい恋人を探して、ね?」
「むりだよぉ!そんなの、できないよぉ!!」
「・・・・ホントに困った子・・・でも、アタシ彼に返事する。はい。って」
佐和ちゃんの言葉の一つ一つが僕の心に突き刺さっていく。痛くて痛くて心が砕けそうになる。
「あたしが言える筋合いじゃないんだけど、失恋して、失恋して、次頑張っていい人見つけて・・・・ね?」
「さわちゃん・・・・」
「アタシだって、苦しかったんだから」
「ごめんね・・・さわちゃん・・・・」
「いいの・・・今回謝るのはアタシ!ごめんね。そして、ありがとう」
2年の月日が過ぎ、大学も無事卒業。そして、佐和ちゃんの結婚式を迎えた。
式場には私も呼ばれた。佐和ちゃんは沢山の友人に囲まれてとても幸せそうだった。
そして、私の傍らにも一人の男性がいた。
○×体大を卒業して晴れて体育教師になった修造君だった。あの後、何度も頭を下げれれて困り果てた私は、じゃあお詫びにという事で何度か食事にも連れて行ってもらった。
私はあの後、佐和ちゃんの助言を下に、恋人というものを模索してみる事にしたのだった。その後、彼の暑苦しい猛アピールを受け、半ば強引なその熱意を受け止めてみた。
私が元男であることも告げたが、そんな事は気合で払拭したらしく、一緒に乗り越えてくれた。
そんな事もあり、今彼が隣にいる。
「いよっ!熱い!熱いよ!二人とも!!」
彼の馬鹿でかい声が会場に響き渡る。
それを聞いた佐和ちゃんは、ありがとーー!と。
そしても私も。
「ありがとう」と──
「おわり」
最終更新:2010年09月04日 23:12