「やべぇ、俺明日誕生日だよ」
この世界では何故か15~17の間に童貞の男が突然女になるTS症候群という現象が起きている。
そして、その奇妙な現象は誕生日に起きる確率が高い。
そしてそれはどういう条件で、どのように発生するかも分からないので実際の所は病気なのかそうじゃないのかも分かっていない。
それはともかく、自分は童貞を捧げる相手もいないし、風俗なんて行く金も度胸もない。
だから自分、清川 恵一(16)は自分がTS症候群にならないか、なってしまったらどうすればいいのかと色々不安なのだ。
そんなことを考えながらため息をついていると不意に後ろからからかうような声をが聞こえた。
「きよっちの誕生日プレゼントは女物の服だな(笑)」
「町田か、誕生日が先の奴は余裕だな・・・」
こいつは町田、何となく俺と波長が合うので良く二人でふざけたりしている。
家はそこそこ裕福らしく、最新ゲームの発売後は自慢しまくるので買えない貧乏人には非常に鬱陶しがられてる。
「まぁな、そんな訳でメイド服とゴスロリどっちが萌え?」
どうやらこいつは俺に自分の趣味の服を着せたいらしい、
「まだ女体化すると決まった訳じゃないんだから別のにしてくれ」
「いやいや、女体化せずとも女装すればいいじゃん(笑)」
「いい加減にしないと殴るぞ」
「サーセン(爆笑)」
そんな感じでふざけて
―翌日―
俺は目が覚めて直ぐに自分の体をチェックした。
「・・・ついてる、ちゃんと男だ」
登校途中に見知らぬ女子生徒に声をかけられた。
「きよっちー、おはよー!」
「・・・お前、だれ?」
はて、どこかで見たことあるような・・・
「オレオレ、俺だよ」
「オレオレ詐欺じゃないんだから名前を言えよ」
「町田 将平改め町田 翔子(苦笑)」
あろうことか、町田が女になっていた。
混乱した俺は三秒間ゆっくりと深呼吸をし冷静に・・・
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
なれなかった。
「落ち着けよきよっち、お前ももうすぐこうなるんだ・・・」
「そんな事いわれて落ち着けるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
-昼休み-
清川「そういえば町田」
町田「ん?」
清川「その制服は一体どこで手に入れたんだ? それに女になった当日に学校来てるのも気になる」
町田「あぁ、それか きよっちの為に用意した物が制服からなにまで一式あったから買い物とかしなくてよかったのだ(笑)」
清川「あぁなるほど、俺の為に用意したものを自分で使ってるのか」
町田「すまんな、もう一度買い直すからさ」
清川「いや、買わんでいい。 てか、いくら親友の誕生日プレゼントとは言えそこまで用意するのは気持ち悪い」
町田「褒めても何もでないぞ~」
清川「普通に褒めてねぇ」
町田「照れんでもええぞ~」
清川「照れてもいねぇ!」
―帰り道―
町田「なぁ、家帰って着替えたら買い物行かねぇか? 服を買いたいんだ」
清川「どうした? お前服用意してたんじゃねぇのか」
町田「良く考えたらメイド服やゴスロリで外でたら浮きまくりだということに気づいてな(笑)」
清川「もっと早く気づけよ」
そんな訳で俺たちは一旦家へ帰った後、駅前の商店街で適当に町田の服を買うことになった・・・
-放課後、商店街-
町田「やぁ、待たせたね(笑顔)」
清川「・・・あ、あぁ」
町田黒いワンピースを着て現れた。
某(元)電脳街や年に二回東京で開催されるイベントにいそうなメイドだとかゴスロリを想像していた俺は少し驚いた。
町田「どうした? もしかして俺に惚れちまったとか? 勘弁しろよな俺(元)男だぞ?」
清川「別にそんなんじゃねぇよ ところで服がロクでもないのしかなかったんだろ、そのワンピースは親戚とかから借りたのか?」
町田「これはメイド服の一部だ。 これにエプロンメイドキャップetc付けると本格的メイドさんの出来上がりなんだぜ」
清川「へぇ・・・」
そうか、メイドカフェとかそういうのじゃないメイド服だったのか。
-そこらへんの安い洋服屋-
町田は何故か女物の服を選ぶセンスがよかった。
町田「こんなのどうだ?」
町田が試着室から出てくる。
どこからどう見ても普通の女の子としか思えない服装だ。
清川「いいんじゃね?」
それに、さっきから仕草まで女の子っぽくなってる気がする。
さっきから試着する度に見せてきては『かわいいか?』なんて聞くのだ。
町田「かわいいか?」
ほら。
かわいいって素直に言うのもなんか恥ずかしいので誤魔化すように
清川「普通」
と答えた。
町田「そうか、ちょっと他の服も見てくる」
やっぱり、何かおかしい。
体が女になると心までそうなるのかな~。
それにしても、まるで俺たち恋人みたいなシチュじゃね?
町田「何ニヤニヤしてんだよ」
清川「秘密」
町田「いーえーよー!」
清川「いーやーだー!」
あぁ、町田は気づいてないみたいだけどレジの店員さんが『他所でやれよこのバカップル!』みたいな目線で睨んでくる・・・
--買い物後--
俺は日が沈むまで散々試着に付き合わされた後、荷物持ちをさせられることになった。
これじゃ彼女の買い物に付き合わされる彼氏に見えるじゃねーか。
清川「おもうぃ~」
ちなみに町田は試着した服を全部買った。
この量をどうやって紙袋に収納したのかは謎だ、もしかしたら未来の技術が使われているのかもしれない。
町田「がんばれ少年(笑)」
こいつは少し自分が持とうとかそういう気は無いようだ、コンチクショウ。
清川「てか、お前もつい昨日まで少年だっただろ」
町田「そうだっけ?」
清川「そうだろ」
こいつ、女になった事を楽しんでやがるな・・・
何て思いながら会話をしていると駅前についた。
ここからは二人の帰り路は別なのだ。
町田「・・・ここで分かれるか」
清川「あぁ、そうだな。 ほれ荷物」
重い荷物を差し出す俺、名残り惜しそうな表情で受け取ろうとする町田。
しかし、ドスンと地響きのしそうな音をたてて紙袋は地面に落ちた。
町田の小さくなった手は明らかに比重のおかしい紙袋の重みを支えきれなかったのだ。
町田「ちょwおまwやっぱコレ無理(爆笑)」
清川「そらみろ買いすぎだバカww(苦笑)」
結局家の前まで荷物持ちをしたのは言うまでもない。
―翌日の校内新聞の朝刊―
『男×元男! 女性化初日からバカップル!! 女性化前から付き合っていた?』
昨日の放課後、2-1の清川 恵一と町田 翔子(元・町田 将平)が駅前商店街の洋服屋「クロシチ」にて目撃された。
証言によると仲睦まじく長時間に渡り試着をし、バカップルぶりをアピールした模様。
女性化一日目でこれほどのバカップルぶりはありえないだろう、もしかしたら二人は禁断の恋をしていたのかもしれない。
―朝の教室―
朝、俺は珍しく早起きしたので学校へ早めに行くことにした。
いつもより早い時間帯だけあって通学路は空いていて朝の鳥のさえずりが心地よかった。
しかし、教室に入った途端その爽やかな気分は台無しになった。
町田「おいきよっち、コレ見てみろよ。 愉快痛快な事が書いてあるぞ(懲笑)」
そういって怖い笑い方をした町田が差し出したのは『校内スポーツ速報(朝)』と題された新聞風のプリントであった。
清川「あれ? うちの学校って新聞部あったんだ」
町田「それよりこの記事」
ふむふむ、男×元男・・・
清川「って、なんじゃこりゃー!!!」
思わず大声で叫んでしまった。
まさか翌日にこんな形で昨日の出来事が広まるとは・・・
町田「ひでぇを通り越して、むしろ愉快だろ」
清川「いや一文字足りない、『不』愉快だ」
芸能人のスクープならまだ仕方ないと思えるが(芸能人のスキャンダルは宣伝にもなっているらしいし)
でも俺たちはただの学生で一般人だ。
プライバシーって物がある。
町田「コレ書いた奴、ブチコロしにいこう(微笑)」
清川「・・・ブチコロしなくてもこれは明らかな名誉毀損なんだから、先生に出せばアウトじゃね?」
いま一瞬、町田の笑顔が般若に見えた・・・これはマジで傷害事件になりかねねぇ。
そう思った俺は咄嗟に、比較的平和な解決方法を提案した。
―昼休み―
町田「ゴホッゴホッ!」
清川「ほらやっぱりむせた、ハムスターみたいに食いもん詰め込むと逆に遅くなるぞ」
町田「うるへー!」
昼休みの始まりを告げる鐘がなると、俺らは弁当を素早く胃の中に押し込で職員室へ急行した。
清川「すみません2-1の清川ですけど、新聞部の顧問の先生いますか?」
先生A「あぁ例の君か、ちょっと待って。 厚木先生~! 2-1の清川くんがお呼びです!!」
中年の先生に呼ばれて出てきたのはショートカットで気の弱そーな顔の女の先生だった。
厚木「お待たせしました~、新聞部顧問の厚木です。 えーと、今朝から出回ってる校内新聞の話よね?」
町田「あぁそうだ、書いた奴に一発蹴り入れないと気が済まん!」
町田が既に臨戦態勢って感じで気の弱そうな先生に言う。
厚木「それだけど、アレ書いたのウチじゃないの」
町田「ふざけんな! 餅は餅屋、新聞は新聞部だろ!」
清川「おい町田、落ち着けよ・・・」
その後の厚木先生の話をまとめると、正規の新聞部の活動は月一回に作った真面目な内容の新聞を掲示板に張り出すだけらしい。
それに加え、最近は正規でない校内新聞(以下例の新聞)に関する苦情の対処まで部の活動になりつつあるとのことだった。
清川「新聞部も大変だねぇ・・・」
厚木「生徒会でも犯人探しやってくれてるんだけど、なかなか成果が上がらなくて」
町田「納得行かねぇ」
清川「たしかに勝手にそんなもの配ってたら目立つし怒られないはずが無い」
厚木「それが、毎朝違う人の机に例の新聞が入っているらしいの」
清川「あの、それだけじゃここまで広まるか疑問なんですけど」
厚木「残念だけど、そういうのって面白がって広める人がいるのよ・・・」
(おまけ)
清川「そういや、俺らなんでこんな大事になってる事件を知らなかったんだ?」
町田「作者の都合じゃねぇの?」
清川「もっとそれっぽい答えを考えようぜ、ウチにはスキャンダル好きな奴がたまたま居なかったとか俺らが自分たちの会話に熱中してて気付かなかったとか」
町田「なるほど(笑)」
えーとポンさん、展開が全然別物でごめんなさい。
最終更新:2010年09月13日 21:23