しばらく辺りを見回した後、俺にかけられたとされる声の主の方を向く。
「あなた、新聞部に入らない?」
声をかけてきたのはこのメガネっ娘だったらしい。
なかなか可愛い。しかしメガネはいらんか……じゃなくて!
「今なんて?」
「だから新聞部に入りなさいって言ってんの!」
なんか命令口調になっとる。
「いや俺は……「決定ね!」んぎゃ!」
話の半分も言わないうちに、気がついたら拉致られていた。
連れてこられたのは古い部室。こんなとこあったっけ?
「ここが新聞部よ」
説明ありがとう。でも見れば誰でもわかるだろ。戸に新聞が張り付けてあったら。
「新入部員連れてきたから。ところで翼、記事はどう?」
[ところで]ですますな、と言いたかったが、それより先に記事の方に目がいった。
<男×元男!女体化初日からバカップル!!>
……プライバシーって何だっけ?
記事を見て唖然としている俺に気づいたのか、部長?が声をかけてきた。
「凄いでしょ大スクープ!これでわが新聞部の名もどっと知れ渡るはずよ!」
確かに……今まで新聞部の存在すら知らなかった。
と、ここでようやく俺は正気を取り戻した。
「じゃなくてお前は誰だ!というか何で俺はここにいる!」
「私は新聞部部長の大間美咲。あなたはいわゆる客寄せパンダね。某団長様もいった通り、萌えは必要よ!」
つまり俺は萌えのためだけに連れてこられたと。これには未来人もびっくりだな。
「それはいいとして、俺はまだ入るとは言ってない。それにこの記事はプライバシーを配慮しなさすぎだ!これは職員室に抗議が来るレベルだぞ?」
この写真の人物は……町田と清川?こいつらは確か隣のクラスだったはずだな。
それはいいとして、とにかくここから出たい。そう思った矢先に、部長の口から悪魔の言葉が飛び出た。
「ふ~ん。入らないなら、こればらまいちゃうけど?」
そう言って、部長は制服から一枚の紙を取り出した。
これは……昔先輩に告白したときの写真!何でこんなものがここに?
「ここは校内の全情報が集まるいわば大宇宙。脅しのネタには事欠かないわ。で、入るの?」
「……つまりここは正規の新聞部じゃなかったと。」
「いいえ、ここは「新」新聞部よ!あのクソマジメな本家に嫌気がさしたから、新新聞部として独立したのよ。」
話が長いので後は割愛する。
つまり真面目に行事のお知らせなどしかしない本家がイヤになり、新しく人を集めて再結成したらしい。
どうりで聞いたことないと思った。
「この部室は?」
「物置よ。もはや管理すらされてないから、勝手に使わせてもらってるの。いいでしょ。」
ますます危なそうじゃないか。バレたら怒られるかもしれないし、そもそも部活じゃない。
しかし、部長のこの言葉に俺はこう返すしかなかった。
「じゃあよろしくね、客寄せパンダちゃん。」
あちらには脅しの武器があるからだ。
「これからよろしく、部長さん。」
こうしてデマと真実と胡散臭さにまみれた、女としての生活が始まった。
おまけ
優「新聞部に入ったはずなのに、偽物だったってどういうこと?」
俺「いやそれは……無理にクロスしようとしたらこんなことになっちゃって……」
優「そもそも部活に入る予定なんかなかったのに勝手に詰め込まないでよ!」
俺「悪かったってほんとに。まあここから題名は「新」聞部にしちゃうし、もういまさら怒っても……」
優「バカっ!」
題名:「新」聞部
優「決めるなぁ~(泣)」
最終更新:2010年09月13日 21:26