---迷う指先の辿る軌跡--- Ⅰ
「………………」
ある土曜日、中学時代から仲が良かった女友達と、いつもの如くウチで遊んでいた。
別段卑猥なことはしていない、普通にゲームをしていた。
自分に姉が二人いたこともあって、女の子といることに慣れてたから、女の子と遊ぶのも男と遊ぶのも特に差異がなかった。
「………まじかぁ………」
だから別に、いつものように家で一緒にゲームをして、疲れたから少し姉の部屋で昼寝をしていたんだ。
姉はもうとっくに自立して家を出てたからここはもう一つのオレの部屋だし。友達はゲームしてるし。
で、なんだか妙な夢を見て、でもそれがなんだか心地よくて、目が覚めたときまだ夢の続きを見ていたいと思いながら寝ようとしたんだが、やっぱり眠れなかった。
そして寝返りをうってうつぶせになったとき、気がついたんだ。
「……オレまだ、15歳なって一週間だぞ……」
あまりにも長いこと部屋に戻ってこないオレを怪訝に思った友達……ケイコが、呆然としているオレに声をかけてきた。
「おーい、いつまで寝て……起きてるじゃん。起きてるならこっちきなよ」
「あ、あぁ、あの、ちょっと……」
「どしたん? もう夕方だし電気点けるよ?」
「ちょっと! 待って! 電気ダメ!」
「はぁ?」
「いや、その、ちょっと悪いんだが、電気点けないでこっち来てくれないか」
オレの体が異常事態を起こしてなければ、まるで卑猥な行為を誘っているかのような台詞だな、等とこの非常時に考えているオレは冷静なのかバカなのか。
「あぁ、まぁいいけど……」
ケイコがベッドの横で膝立ちになり、ベッドに座っているオレに目線を合わせる。
「ちょっと、手貸して」
「ほれ」
差し出されたケイコの手を取るオレの手は汗ばんでいた。こんな形でケイコの手に触れることになるとは思わなかったが、そのケイコの手がなんだか、小さい様な大きいような、不思議な感じがした。
そして、おそるおそる、まるでこれが夢ではないか確かめるかのように、オレはケイコの手をオレの胸にあてた。
「………あちゃー………」
その、どこかのんきな言葉で、オレはこれが現実であることを悟った。
最終更新:2010年11月09日 00:50