掌編『玉袋』

20キロでもうまくやれば潰れる。
そんなことを知ってるのは実際に潰したから。

私を襲ってきた痴漢。
怖くて逃げたのに、捕まえられて藪の中に連れ込まれた。
いきなり下半身を露出して、モノを私の前につきつける。

気持ち悪い。

でも私は、それを握りこんだ。
恐怖から言いなりになるふりをして。
痴漢にとって不幸なのは私が男だったってこと。弱点は全部心得ている。

いきりたった棒の部分を握りこみながら、袋の方に指を滑らせて……。
『グエ!!!』
内部で何かがはじける感触。蛙が潰れるような声が上から聞こえてきた。
瞬間的に力が出たせいかもしれない。
転げる痴漢の頭を思いっきり蹴りつけると、頭の下に石があって、びくんと痴漢の体が撥ねた。

こうして私は無事に家に帰りつくことができた。
――アレは使い物にならないんだろうな…。
私とは違う意味で、『男ではなくなった人間』のことを……思い出すだけで嗤えてくる。

ねえ、あなたも……そう思うでしょ?

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最終更新:2008年06月14日 23:11
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