>「な、なぁ…ヒートアップするのはソレ位にしないか?学食で火花散らすのも、ほら、な?」
流石にツインテールの娘に見とれていたのがバレた訳では無いだろうが出歯亀だと思われてるであろう気まずさから
音速を超えんばかりの勢いで身を捩った結果、我が昼食の主役は胃袋に到達する事無く犠牲になったのだ。
「あ"ッ?!俺のハンバーグがあああああっ」
思わず叫ぶ。食べたい盛りの高校生が丼モンの主役を亡くしたのだ、お察し下さい。我に帰ると突き刺さる視線、視線、視線。
先程まで見ていた対象にまで見られている始末だ。鬱だ死のう。
「あーあ、勿体な…まあ、コレやるから落ち着け」
後ろから声を掛けてきたのは我が友人。トマトは食べれないからいりません。て言うかお前も食べれないだけだろ。
「またあの娘見てたんだろ?まじストーカーだな」
「そこににょっぱいがあれば視姦するそれが正義だ。」
「へーへー」
「見ろ!あの推定Dカップの御胸様、素晴らしい!!」
「お前は鴻上会長か!?」
俺が思わず欲望を解放するとどこからか出したスリッパでシバかれた。そう言うお前は探偵事務所の所長か!?
「お前、会長ならケーキ作ってくれよ?ハッピーバースデーとか叫びながら」
「誰が宇梶さんだ!?で、なんでケーキ?」
俺の趣味はその会長と同じくケーキ作りだ。あんなにやたらと作りはしないし、メダル集めたりもしてないけど。
「ボク、明後日で『女の子』になって一年経つんだけど」
「あー、そうだったな」
つまりこいつの誕生日だ。こいつは童貞ながら奇跡的に男である事を保っている俺と違い、一年前に『なってしまった』側だ。
「去年はあのバタバタで作ってやれなかったからな」
「買い物とかは手伝ってくれたから助かったよ」
「まあ、今年は気合い入れたの作るよ」
「本当か?!お前のケーキ好きだから楽しみにしてるよ」
女体化して一年、最初こそ『可愛く』なってしまったこいつに戸惑いはしたけど、今でも大切な友人だ。
……うむ、可愛いとは思うが、あのツインテールの娘や赤毛の娘みたいな『ぽよよん』が足りないから友人でいられるのかも知れないが。
「なあ、だれが無乳だ?思考が筒抜けだぞ」
「馬鹿なッ!?」
俺はただの以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします(中国・四国)だ。そんなSSの主人公みたいに思考が漏洩するなど有り得ない。
まさか俺はサトラレ…?
「ネタが古いぞ馬鹿、それにお前は馬鹿だろ」
「馬鹿を重ねるなよ!」
「それにだな…」
右手に押し付けられたやーらかい感触。ザワつく周囲。先程より鋭さを増し突き刺さる視線、視線、視線。ナニコレ怖イ。
「これでも…足りない、か?」
「」
耳まで赤らんだ顔、上目遣いの潤んだ瞳、熱い息遣い、右手の中の程良い膨らみから伝わる鼓動。友よ、それはズルい。
「た、大変素晴らしい、です」
「そっ…か良かった」
なんだその表情、レベル高杉で訓練された童貞の漏れには理解出来ん。
なんだこのにょっぱい、こんな小さいのに夢とか希望とか詰まってんのか?
胸が熱くて手が離せん。ライフが0になりそうだ。
そろそろ周囲の視線が驚愕から憎悪のそれに変わったのを察知して俺達は脱兎の如くその場を離れた。
ハンバーグはそのまま床に放置してしまった。ごめんなさい。
後日、ケーキを持ってあいつの家に行ったら、逆にあいつをプレゼントされた。
最終更新:2011年06月19日 11:05