それは、甘い唇。綿菓子の様に軽く溶け消え、甘さだけが残る。
…八重としたキスや、篤史としたキスとも違う、胸の奥がきゅうと苦しくなる様な。
ずっと抱えていた気持ちが輪郭を帯び色を濃くなる。それは男だった時に感じていた…
長い間、それは胸の中にあった。いつも近くにいる、近所の幼なじみで、同級生で、親友の可愛い女の子。
なんでもない時でも目で追ってしまう、そばにいるだけでドキドキして苦しくて、でもそれが気持ち良いような。
敷島 静花が好き、ただそれだけで世界は光っていた。敷島 静花が好き、その気持ちがオレにはすごく大事な宝物だった。
『幼なじみで親友』それだけで充分だった。一緒にいられるだけで嬉しかった。そこから動きたくなかった、動くのが怖かった。
この気持ちを伝える事なんて出来る筈もなかった。だから、静花が篤史の『彼女』になった時も直ぐに受け容れられた。
伝えるなんて事はもう諦めていたから。でも気持ちだけは残っていて、嬉しさは小さく、苦しさは大きくなった。
それをどうにかしたくて、静花で…した事もあった。結局どうにもならず、自分の気持ちも静花のことも『汚した』罪悪感で最悪な気分だった。
その頃には『男』でいる事も諦めていたと思う。
「ん…ッ」
「……ずっとね…こうしたかったのー」
「しず、か…」
「タクちゃんはキス…それ以外もだけどー、初めてじゃないんだよねー?やっぱり悔しーな」
「……ごめん」
「ううん…私が、悪いんだよー…」
「そんな…そんな事、ない…」
目の前の、今のオレよりも背が高い女の子がどうしようもなく可愛く見える。
でその表情はさっきまでの、何かを押し殺した様な笑顔は僅かに綻んで…少し辛そうに見えた。
オレもこんな顔をしてたのか…なんとなくそう思った。
オレは篤史と静花はお似合いで、あの2人はいずれ付き合うんだろうと思い込んでたし、事実そうなった。
『私は…ずーっと昔からタクちゃんが大好き』…そんなの思いもしなかった。気付けなかった。
…オレが悪いんだ…オレが、好きな女の子にこんな顔をさせてる。
オレも今更だけど気持ちを伝えたい。でも、それは拒まれた。理由は分からないけど、それは訊いてはいけない気がした。
ふと、篤史の『あの表情』が脳裏を過ぎった…何かが繋がりそうな…
「…ねぇ?おっぱい触ってもいいー?」
「ぅえ?……い、いやソレは…」
「ダメー?」
「あ、あの…オレ、静花より…かなり小さいから…その、恥ずかしぃ…」
「…………タクちゃん、それは見れば分かるー…ってゆーかー、ソレ狙ってるよねー」
何が?と言おうとしたら、ごろんと床に寝かされた。…静花に押し倒されるとかオレ弱すぎじゃね?
視界の端で等身大の九○りんちゃんがペタンと座ってる。見られてる様でアレな感じだけど、この娘なら無問題か。問題あるけど。
とか考えてたら既にネクタイとシャツのボタンが外され、ブラも捲くられてた。…随分慣れてる感じだけど[禁則事項です]なんだろうな。
「タクちゃん…やっぱり、可愛いー」
「ちょっ…静花っ…ひゃんッ!」
「確かにー膨らみはウ~ムだけどー、じゅーぶんフニフニだし乳首もほんのり桃色でキレーだよー」
「…言わなくてもいいですからッ…ぅン…揉むな…よ…ッ」
「敏感なんだねー、乳首もう勃ってるー」
「うるさい、うるさい、うるさ~いっ」
「…タクちゃん、やっぱり釘宮病ー?しかもS型…いや、ひょっとしてI型ー?」
「いや、もうそのネタは…」
どうしよう、ドキドキが止まらない。静花に触れられてる。好きな女の子に触れられてる。
オレももう女の子なのに。こんな風になるなんてもうないと思ってたのに。お腹の奥がきゅうと熱くなる。
オレ、静花に『して欲しい』と思ってる…ってバカか?フツー逆だろ?いや、見た目は確かにオレの方が色々小さいけど…
「タクちゃん、何もじもじしてるのー?」
「ッ!?何でもない!」
「へへーっ、タクちゃんー?顔まっかかだよー?この状況で何でもない筈ないよねー?」
「っほんとになんでもないからーッ!」
「ぱんつヌギヌギしよっかー?」
「いッ!?ムリムリっ…!い、今っ、せ、せ、生理だからッ!ホントに!」
「へ?……でも、日にち…まぁ、そーゆーのもあるのかー、タクちゃんなったばっかしだしねー」
「う、うん、オレも思ったより早くて焦ったけど、オカンも似たようなコト言ってた」
「私も初潮の次の生理ズレたよー、遅れるパターンだったけどー」
「…正直、周期とかまだちゃんと分かんなくて困る…」
「どうしても変かなーとか思ったらお医者さん行った方が良いよー?恥ずかしかったら一緒についてくしー」
…その方が恥ずかしい様な気が…でも気遣ってくれて嬉しいかな。
……えーっと、胸を揉んでる手は止まってないから…コレ、やめる気はないんだな…orz
「じゃあー、下は触れないからー」
「そ、そうだから…」
「おっぱいだけでイかせたげるねー」
……………………………………………………………………………へ?
「し、静花さん…?…ひゃゥ!?」
つーッと脇腹と胸の『継ぎ目』の辺を柔らかい舌が沿う、もう片方の胸も外側から徐々に弧を描きながら滑らかな指が這う。
じわじわとした刺激、じりじりと先端に近付くそれ、否が応でもまだ触れてない『そこ』に意識が行ってしまう。
「ふぅ、ふぅ、ふ…んッ…」
「んふふー、ほんとにビンカンだねー…すっごい女の子の顔してるよー?」
「ィやだ…そんなの言うなよ…ッ」
胸から離れた舌が首筋を伝う、鎖骨を軽く齧られ、舐られ、そのまま胸の真ん中を通り、また元の胸を旋回する。
決して『そこ』に到達しない刺激。じれったい快感だけが募る。期待だけが高まっていく。
「くッ…ん…ふ…し、ずかぁ…」
「んぅ……タクちゃんがどうしてほしいかわかるよー?でもまーだだよー」
「そ…ッ…んゥ…」
滑らかな感触の指先が『そこ』のふちに触れる。それだけで胸の鼓動が更に速まる。
するとそこを指で押し広げられる…まるで『くぱぁ』されてるみたいで居た堪れない。
「やぁ…やめ…それ、恥ずい…」
「ふーん、じゃあーこの『先』もやめるー?」
「え…?い…や、その…」
「やめるー?」
「…いじめ、ないでくれ…ッ」
「…『先っちょペロペロして下さい』ー…」
「…ふぇ?」
「『先っちょペロペロして下さい』」
「え?な…ソレ…言う…」
「『先っちょペロペロして下さい』さん、はいー!」
「……………先…っ、ちょ、ペロペロ…ぅ……って、く…ださぃ……くッ…死ぬっっ…!」
「……よく出来ましたー」
『くぱぁ』されたままのそこはじんじんと熱をもってるようで近付く静花の唇から漏れる息にも感じてしまう。
股は漏れてるんじゃないだろうかと思うほど濡れているのが分かる。
「じゃあ…いくよー」
「………………~ッッッ!!!!?」
ちろりと舌先が触れた瞬間、一瞬何が起きたか分からなかった。目の前が赤くチカチカとして何も考えられなかった。
まるで性感帯がそこだけに集中してるような、圧倒的な快感。
「ッあ、あっ、あっ、あぅん、あ、あ、あ、あッ!!」
柔らかい舌がペロペロと乳首を舐めてる、ただそれだけなのに、それ以外のことが何もわからない位感じてる。
乳首から伝わる舌先や唾液の温度や感触、ちゅっちゅっと乳首を啜る音、もう片方の乳首も指先でくりくりと弄られる。
お腹の奥に溜まった熱がこみ上げ溢れそうになる。
「うぁ…ッ…うそ、うそ、うそっ…こんな…」
足を突っ張って、身を捩っても逃れられない、一際大きな波。胸をぎゅうと締め付けるような切なさにも似た感覚。
堪えようが無い快感に身体がぶるぶると震える。
「ッ…ひあッ………!!」
…………ふわふわと意識が浮かんで身体に力が入らない、弄られた乳首がまだ熱をもってる。
「ごちそーさまでしたー」
「………………………………ひどい」
「ちょー可愛かったよー、タクちゃんまじ天使ー」
「ちくしょう」
「……タクちゃん」
「…ん」
静花に唇を塞がれる。じんわりと熱の引かない身体…触りたい…静花に触りたい。
『負けっぱなしじゃ、終わんねぇ』……どっかのカラスの声が聞こえた気がした。
最終更新:2011年06月04日 00:46