「はあ……」
「どうした、レミ。溜め息なんかついて。珍しく悩み事か?」
「珍しくって……まあ、悩み事があるのは本当だけどさ」
「そうか、頑張れよ」
「ユウタ、私の悩み事聞いてよ。友達でしょー」
「特に興味無いしな。それにいいかげん僕をユウタと呼ぶのは止めろ。今はユウだ」
「ああ、ゴメン。意識してないとついユウタって呼んじゃうんだよ」
「僕が女になってからもう一ヶ月だぞ。いいかげん慣れろ」
「まあ、そこはおいおい慣れてくよ。それで悩み事なんだけど……」
「勝手に悩み事を話すな。僕は興味無いって言っただろ」
「そんな事無いよ。ユウにとっても関係無い話じゃないし」
「ほう、なら聞いてやる。話してみろ」
「……上から目線なのが気になるけど、今はいいや。悩み事って言うか願い事って言った方が近いのかもしれないんだけど」
「どっちでもいい。早く言え」
「おっぱい大きくしたいなって」
「……なにかと思って聞いてみれば、それか」
「私、真剣だもん!」
「僕には関係無い」
「……私より小さいくせに」
「うるさいよ」
「だって本当の事じゃん」
「とにかく、僕には関係無い。」
「大きくする良い方法無いかな~?」
「知らん」
「今日のユウ、冷たい……」
「知らないから知らないって言ってるだけだ」
「ちえっ、貧乳同士良いアイディア出してくれると思ったのに」
「人に頼る前に、自分でなんとかしろ」
「しょうがないかー……あ、そういえば揉んでもらえば大きくなるってよく言われてるけど。揉んでもらえば大きくなるって」
「何故、二回言う。そして何故、僕の方を見て言うんだ」
「揉んでもらえば……」
「揉まないからな」
「ケチ!」
「うっさい。そもそも、揉めば大きくなるってのはデマらしいぞ」
「えっ、そうなの?」
「ああ、科学的な根拠は無いそうだ」
「じゃあ、なんで揉めば大きくなるって言われてるの?」
「さあな、だけど揉めば云々は真っ赤な嘘だ」
「うーん、あ、じゃあ牛乳飲んだり乳製品食べたりすれば大きくなるってのは」
「それも根拠は無い」
「ええーっ!」
「まあ、牛乳含めて乳製品はカロリーが高い物が多くて、胸は脂肪の集まりだから、もしかしたら大きくなるかもな」
「でもそれって、要は脂肪が付くって事だから……」
「ああ、腹とかの余計な所にも脂肪が付くかもな」
「乳製品食べるのは止めとく」
「ま、好きにしな。止めようが太ろうがお前の自由だ」
「ところでさ、ちょっと気になる事があるんだけど」
「なんだ?」
「一ヶ月前まで男だった割には、やけに詳しいね」
「い、一般常識だ! だいたい半年も女やってて知識の無いお前が無知なんだ」
「でも、同じくらいの歳でも信じてる女の子、結構いると思うよ」
「う……そんな事、僕が知るか」
「自分が言われる発端を喋ったくせに~」
「う、うるさい! 元・童貞が!」
「はいはい、ユウも同じでしょ」
「くっ……!」
「それで話は戻るけどさ」
「戻さなくていい!」
「だが断る。胸についての知識があるって事はさ、自分の胸を大きくしようとして、調べたの?」
「そ、そそそんな訳ないだろ」
「そっかー、じゃあすでに実践して効果が無いから、デマだって言ったんだ」
「ち、違う!」
「ん? 何が違うのかな? 私、あまり頭良くないからちゃんと言ってくれないとわからないよ?」
「お、お前……っ!」
「ねえ、ちゃんと言ってよ。何が違うの? さあ、何がどう違うの?」
「~~~~っ! 黙れ!」
「あっ、あいたたたたたたた!ちょっ、アイアンクローは止めて!」
「さあて、どうしようかな!」
「痛い、痛いぃ! 謝るから! 調子にのってすいませんでした!」
「ふん」
「あ~……痛かった、酷いよユウ」
「調子にのりすぎたからだ」
「それにしても、慌てふためいて真っ赤になったユウ……可愛かったなぁ」
「まだやられたりないようだな」
「ゴメンゴメンゴメン!」
「……ったく!」
「それで、実際のところはどうなのさ」
「何がだ」
「だから、調べたの? それとも実践?」
「言わないからな」
「言わないって事はどっちかは本当って事なんだね?」
「……チッ」
「舌打ちしないでよ」
「お前がしつこいからだよ」
「でも舌打ちするって事はどっちかは本当なんでしょ! ねえ、どっちなの? 調べたの? 揉んだの? それとも、まさか両方とも!?」
「落ち着け……調べただけだ」
「調べたんだ。そっか、やっぱりおっぱい無いの気にしてたんだね」
「……まあな。それに胸が無いって程、絶望的でもない」
「それにしても、おっぱい大きくしようとするなんて、ユウも女の子らしくなっていたたたたたたた! アイアンクローは止めてってばー!」
「お前が、事あるごとに、僕の胸が小さい事を、いじるからだ・ろ・う・が!」
「いだだだだ! さらに力込めないで! ゴメンってば! もう二度とおっぱいの事でからかったりしないから許してえええ!」
「今度、胸の事でいじってみろ。アイアンクロー十分間の刑だからな」
「き、気をつけます……」
「その言葉、忘れるなよ」
「はい……ところでさ、調べたんなら、おっぱいを大きくする効果のある方法って何か見つかった?」
「そうだな……指圧によるツボの刺激とか、かな」
「ツボ? おっぱい大きくなるツボってあるの?」
「あるみたい。まだ試してはないがな」
「それって、どこがツボなの? 教えて!」
「いや、一応胸の近くだから上半身裸にならないとわかりづらいし、ツボも押しづらいだろうけど……さすがに学校でやるのはな」
「んじゃ帰りにユウの家に寄るから! いいよね! はい、決定!」
「おい、勝手に決めんな! まあ、用事は無いからいいけどな」
「ようし、卒業するまでに大きくなってやる!」
「あんまり期待はすんなよ…………おっと、そろそろ昼休みが終わる頃だな。早く教室に戻るぞ」
「あっ、待ってよー!」
最終更新:2011年07月04日 02:53