第7話

4月末。世間はGWに突入し、敷島家は例年通りに結構な人数で旅行するらしい。
オレと篤史も「一緒に行こーよー」と誘われたが、
篤史はレザークラフトの資金調達の為にバイトを始めたのでパス、オレは…当然、気まずいので断った。

静花がいない、連休…。

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夕方、コンビニの帰り道の途中、前方にノロノロと自転車に乗って何やら熱唱してるバカを発見。バイト帰りか?

「…~壊れた世界で彷徨って私は~♪」
「引き寄せられるように辿り着いた~♪」
「……どこから見てた…?」
「喜びも~悲しみも~♪の辺りから?」

そっからの話はあんまり覚えてない。他愛も無いコトを喋ってたと思う。
篤史が「うち寄ってくか?」って訊いてきた……正直、少し期待してたかも知れない。
暁芳さんは出掛けていて、家にはオレ達2人だけだった。
どちらが誘うでもなくオレ達はまた……セックスをしていた。

それから連休中何度も、した。

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…目を覚ますと自分の部屋じゃなくて、一瞬びびってからここは篤史の部屋だと気付いた。
ベッドの下には、脱ぎ捨てられたオレの服。布団の中のオレは裸で…あ、ニーソは履いたままか。髪もほどいてる。

身体に残ってる倦怠感と…『あそこ』の違和感、それらがさっきまでこのベッドの上でしてた行為の証明の様で、
気恥ずかしかったり、少し嬉しかったり…後ろめたさがあったり。

この部屋の主で、その…した相手である篤史は、机に向かい何やらゴソゴソとしている。
…革を編んでんのか。デスクスタンドの明かりに照らされてるその横顔は真剣そのもので、なんと言うか…
その、なんだ…カッコいい、とか思ってみたり。こっ恥ずかしいコトを考えてるのを自覚して頭を抱えもぞもぞしてると、

「面白れー動きだな」

にやけ顔でこっちを見ている篤史。手にはいつも通りケータイ。…ムービーですか、そうですか。

「………あれ?蹴りが来ないな」
「……この格好でしたら、その…見えるじゃねぇか…」
「だが、それがいい?」
「いや、しねーよ!?」
「いいじゃん、さっき隅々まで見せたんだし」
「~っば、バっ…バカっ…てめ…」
「お願いしたら『…お、お前にだけ、だからな?』とか言って、自分でくぱぁって…げぶゥ!?」
「それ以上言ったら本気でぶち撒けるからなッ!!!?」
「……いい右だ、世界を獲れるそんな右だ…が、結局丸見えだぞ?タク」
「っ!?滅びろ!!お前なんか絶滅しろッ!!」
「まぁ、これでも着れ」

と、椅子に掛けてたシャツを羽織らされた。つまり裸Yシャツ完成。

「…随分と『紳士』なんだな…?」
「当然です」
「…ギン勃ちだぞ『紳士』…?」
「当然です」

裸ワイにオーバーニーソの美少女である。まぁ、胸の辺が大変残念ではあるが。
男の時のオレなら「もうガマン出来なーい」とキレていただろう。童貞だから想像だけど。
………今のこのバカみたいに。

「ちょ…篤史…っふぅ!…ん、んぅ…」

オレはベッドに再び押し倒されて、耳に、首筋に幾度となくキスをされている。
軽く、啄む様なそれに体から力が奪われ、抵抗を試みていた手足もいまやふにゃっと弛緩している。

「…っ、やっ、それっ…ダメだっ…て」

顎の付け根の辺を啜られ、甘噛みされる。ゾクゾクと脊髄を電流が走る様な感覚。
トクトクと心臓の鼓動が早くなる。下腹部にとろりとした熱を感じる。…濡れてきてるのが、わかる。

「…本当、コレに弱いよな、タクは」
「そ、んな…弱いっ、とかッ…あッ…あぅ!?」

ぐちっ…と音を立て割れ目に篤史の右手が這う。

「じゃあ、これは?俺よくわからんから説明してくれないか?」
「っ!!?バ…カやろ、見せんな!舐めるなっ!!」
「説明してくれないなら、いいよ?自分で調べる」
「えっ…ちょ…見るなッ……えっ!?…やめっ、あっん、あっ、っくぅ…ん」

舐められてる…。篤史に舐められてる。
真ん中ら辺を、まわりを、おしっこの穴を、先っちょを、穴の中を、全部舐められてる。
柔らかい舌が、まるで突き刺さる様に、溶けて染み込み侵される様に、
複雑に混ざり合うそれらは全て快感で、呆っと頭の真ん中が痺れる。

「はぁ、はぁ…ふぅっ、っ、…くぅんッ」
「っ…ぷぁ…ウム、甘露」
「…嘘つけバカ、苦かったぞ」
「…お前、自分の舐めたの?」
「前にお前が舐めさせたじゃねーか!!指に付いてたヤツ」
「記憶にございません」
「白化っくれんなよ!?前から言おうと思ってたけど、お前『俺ってMだし』とか普段言ってっけど思いっ切りドSだよな?オレの扱いとか!?」
「個別の案件にはお答えできません」
「やかましーわバカ」
「まあ…黙ってコレでも弄ってろ?女の子はその方がカワイイ」
「…やっぱりドS…」

目の前に出された篤史の…なんだ?エクスカリバー?…ゴメン、ちょっとアーサー王に謝ってくる。

何回か、その、えっちはしてるけど、どうして良いのか判らず、ずっとツナ缶の如き有様だったから、
その…篤史の息子を扱うのは初めてだ。自分のを思い出しながら、怖ず怖ずと触る。
…あー、何か、懐いわーコレー。お前は元気だねー?
ウチの息子は家出しちゃったけどさ?まあ、お前が元気なら、それでいいよ。
今は亡き我が子に思いを馳せる。オレはこの辺が好きだったんだよな、と感慨に浸りながらカリ首の辺を強めに扱いたり、
裏筋に沿う感じで摩り上げたりした。…涙が出そう。

ふと篤史顔を見上げると、えっらい男前な表情…『紳士』のつもりか?口元をよく見るとプルプル震えてる。
あ、ひょっとして効いてる?コレ。面白くなって口を近付ける。
直前でちょっと躊躇するけど、オレの息がかかってピクっと反応するのが、なんか自分でも信じれないけど『可愛い』と思えて、ちろりと舐めた。

…少し、しょっぱい?あと、何か…変な、肉っぽい味?
セルフフェラとかした事無かったから比べ様も無いけどこんなもんなんだろうか?
…ここの筋とか、イイのか?ちろちろと舐めてみる。

つぅ…と何かが腿を伝う。……うん、わかってる。オレ、今…興奮してるんだ。篤史のを、舐めて…
少し夢中で舐めてると頭上の気配に違和感。

「やってくれた喃、谷田拓海」

正気でも曖昧でもなく、人でも獣でもない。
『紳士』へ『変貌』した篤史が正体不明の『何か』に『変質』していた。…魔神篤史ェ…。

ヤバい、犯られる…と思ったらもう遅かった。股を開かされ篤史のをそこに擦りつけられる。

「やっ…ふッ…ぅッん…」

ゴムを着けたそれが再びそこに触れて、「挿入るぞ」そう聞こえた瞬間、ズリュリュと体の奥深くまで押し拡げられる様な圧迫感。
息が出来ない程の…それが快感だと直ぐに分からない位に激しい感覚は篤史がオレの行き止まりにコツっと達した瞬間に、爆ぜた。

「………~ッ!!!?…ゥ…ッ!!」

ぎゅっと目を閉じ歯を食いしばる。背中が丸まり篤史の胸に顔を埋める様な格好になる。
しがみつく指先は篤史の背中に食い込んでたかも知れない。それでも堪えられない、深い快感。

…イってる……入れられただけで…

「……タク?」
「…はっ、はぁっ…ふっ…くぅ…」
「……へぇ?」

……気付かれた…?!イってるって気付かれたッ!
イヤらしい顔してる、当社比何倍か分かんないけどイヤらしい顔してるよ?この篤史!?

頼むからッ!!頼むから今動かないで!?息継ぎしか出来ない、声が出ない。

「…あッ、あ、あ、っァ、ア、んあ、あっ!」

言葉が紡げない、なのに篤史の動きに合わせて声は漏れる。
ずちずちと肉の擦れる音が直接頭に響く。自分が、篤史が、今どんななのかわからない。
篤史の感触だけが脳に伝わってくる。快感の波がずっと引かずに大きくうねる。

駄目に、なる。こんなの駄目になる。
いや、いや、いや、いや、いや、いや!
ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ……また……来るぅ…っ!!

「っ……きゃっ…ゥっ!!!?」
「…っく!!」

中で篤史がびくんと跳ねた、一際大きな波に呑まれてオレは……

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…ぼぉっとして、視界も焦点が定まらない。
篤史がごそごそ片付けをしてるのはわかるけど体に力が入らなくて動けない。
天井をぼんやり見てるような見えてないような、そんな感じでいると手に何か握らされた。

「……なに…これ?」
「ああ、さっき作ったやつ」

それは銀細工が付いた編み込んだ革とゴムで出来た輪っか。

「ヘアゴムなんだよ、これ」
「へぇ…やっぱ、すげーなお前…」

素直に感心する。本当、スゴいと思う。

「…やっぱり、プロ目指すの?」
「……」
「…篤史?」
「あっ…ああ、そうなれたら…良いな」

…なんだ?今の表情…前にも見たような…?

「……前に、な、3人で大阪行った時」
「…うん」
「観覧車乗っただろ」
「…うん」

そう、覚えてる。あの時に篤史の口からは初めて聞いた、篤史のお父さんの話。
篤史のお兄さん-暁芳さんにはそれより前に話は聞いていたけど、
篤史からはお父さんの事はそれまで聞いた事はなかったから、
観覧車の中で窓の外を指差して「あっちの方、あの辺に…親父、住んでるらしい」と、
突然言った時にはオレも静花もびっくりした。只々、びっくりして何も言えなかったけど。
思えば中学の卒業旅行に大阪に行こう、と提案したのも篤史だった。

「中学に上がった頃な」
「うん…」

机から何か取り出す。あれは…

「これが届いたんだ」

それは革のブレスレット。オレが篤史から貰った…今、左腕に着けてるのと同じデザインの。

「俺、別に親父を恨んだりしてないんだよな」

あの時、観覧車でも言ってた言葉。その時はそこでその話は終わりだった。

「親父、革細工の職人してるんだって」
「…うん」
「最初は…なんとなく、真似て作りだしたんだ」
「…うん」

知っている、レザークラフトを始めた頃。篤史の部屋に明け方まで灯りがついていた。何日も。

「タクの、今着けてくれてるそれも、やっと納得したヤツなんだ」
「そっか…」
「でもな、まだまだで…な」

そう言いながら、篤史はどこか嬉しそうな、誇らしげな、そんな顔。

「…今は、親父のこと…職人としては憧れてる、かも」
「…うん」
「……でも……」

…また、あの表情。

「篤史…?」
「…あ、いや…うん、なんでもねー、服着せてやろうか?ホレ、水玉パンツ」
「~っ、自分で着るっ!!」

もう、いつもの篤史だ。…何なんだ、あの表情。聞きたい、けど、オレにその資格が有るのか?
結局、聞けないままオレは帰宅した。



第8話★へ続く


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最終更新:2011年07月14日 20:45
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