お題「体重」
「げぇ~~~っ、まだ2キロも落とさなきゃだめなのか・・・・地区大会まであと2週間しかないのに」
大紀が武道場の更衣室で体重計をのぞき込んで悲痛の声を上げていた。
「よう大紀、減量うまくいってないのか?」
俺が大紀に声をかけると、げんなりした顔で大紀がこっちに振り向いた。
「芳照か・・・・今日からさらに打ち込み100本とランニング3km追加だな・・・・」
「ご愁傷様、まあ小1から柔道やってんだもんな。その体、ほんとあとどこ絞れっていうくらいなのになww じゃ俺は先に道場に行ってるぜ」
道場でウォーミングアップをしていると、突然まわりから黄色い声が飛ぶ。大紀が道場に入ってきたのだ。去年1年生ながら学校でただ一人インターハイに出場した大紀目当ての女子生徒たちだった。
「おう大紀、今日もギャラリーが大勢だな、おまえ目当ての。・・・・いいよな選りどりみどりで」
俺はかるく嫉妬を含んだ口調で大紀に声をかける。
「何言ってるんだよ、地区大会間近なんだぜ。そんなことにうつつを抜かしてる暇なんてねぇよ」
大紀は軽く受け流すと、ウォーミングアップをはじめた。
「そんなことより芳照。おまえも今年は黒帯をとったんだし、今年は一緒に県大会に進めるようにがんばってくれよ?」
「おう、今年は俺も調子いいしな。地区大会は突破したいぜ。」
しばらくして部活での練習も終わり、みんなそれぞれに学生服に着替えると帰宅していく。今日は金曜日だ、俺もこのあとは塾の時間が迫っている。
大紀もトレーニングウェアに着替えて道場から出てくると、待ち構えていた女子の何人かが声をかけていた。
「大紀く~~ん、一緒に帰ろう?」「何言ってるのよ、大紀くんはわたしと帰るの!」「いやいや、わたしとよ!」
そこかしこで言い合いが始まるのを、大紀はまたかと思いつつも笑顔で手を振る。
「ごめんね、僕はこれからランニングしながら帰るから。またいつかね」
女子生徒たちを尻目に、そのまま大紀は走っていった。
月曜日の朝、大紀は部活の朝練に顔を出さなかった。
いつもは一番に来ているはずなのに、どうしたのだろうと思いながら道着に着替えていると携帯がメールの着信音をならした。
From:大紀
件名:減量
本文:できた。いや・・・・した?
メールには写メも添付されていた。そこに写っていたのは、どう見てもだぶだぶの大紀の制服を着た、小柄な美少女の姿だった。
最終更新:2012年03月11日 17:17