無題 2013 > 11 > 30 ◆fJTEST3ltw

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俺の家の前まではあっという間に着いた。だが外はもうほとんど暗くなっている。
俺も先輩もここまでほぼ全速力で走ったため息が上がりきっている。髪からは水滴が滴り落ちていた。

「かあさん!タオル!」

ドアを開けて開口一番に叫んだ。が、返事は聞こえない。

仕方がないのでそのまま入ることにした。仕事だろうか?確か今日は仕事はないと言っていたはずなのだが。買い物ではないはずだ。基本的にうちは土日に一週間分の買い物を済ませるタイプなのだ。

考えていても埒が明かない。とりあえず中に入ることにした。

「おじゃましまーす」

俺に続いて先輩も中にはいる。
中には誰もいない。

「先輩、どうぞ」

「おっ、おりがと」

ダンスから適当にタオルをとって先輩に投げ渡してやった。
で、なんで母さんはいないんだ?

あたりを見回すとテーブルの上に紙とボールペンが置いてあった。

『急きょ仕事が入った。夕食はかっ手に食べて明日の夜には帰るp.s.へんなことするなよ』

平仮名混じりの書きなぐったような筆跡だ。汚い字ではあるものの、間違いなく母さんの字だ。よっぽど急いでたと見える。そのくせpsなんて書いてるのが気になるが。変なことってなんだ。変なことって。

「え?なに?誰もいないの?」

「みたいですね」

横からひょいっと顔を出す先輩。濡れた髪が何処と無く色っぽい。
身体こそ拭いたものの服はびしょ濡れのままだ。

「ところでリョウくん」

「何ですか?」

「今携帯で調べたんだけどさ、この雨明日の朝くらいまで続くって」

「…………え?」

「てなわけで悪いけど今日はリョウくんのとこに泊まらせてもらってもいい?親に連絡もしちゃったし」

「……………………」

「あ、そうそう。さっき言いたかったのは近くに雨宿りできる場所あったってことだけど…………まあこの様子じゃあ結局はこうなったよね」

フリーズしかけている俺を尻目に先輩はポンポンと話していく。え?何?先輩泊まるの?うちに?俺と二人きりで?
落ち着け。落ち着くんだ俺。とにかく何か言わなければ。

「…………とりあえずシャワーでも入ったらどうですか?風邪とか引いたら困りますし」

言った直後だった。自分の言葉の意味に気がついたのは。瞬間、顔がカーッと熱くなった。自分が風邪でも引いたんじゃないかと思うくらいに。

「いいの?じゃあありがたく入らせてもらうよ。…………で、何で顔が赤くしてんの?」

一瞬戸惑ったような表情を見せたが、すぐにニヤリとした。どうやら俺の考えてたことがわかったらしい。多分元男だとか関係無しに単に俺がわかり易すぎるだけなんだろう。


「あっ……まさかそういうこと考えてた?やーいすっけべーすっけべー」

先輩はさんざんからかい、さっさと風呂場の方向へ行ってしまった。
更に顔が熱くなる。考えてたことを完全に見透かされたおかげで余計に恥ずかしくなった。

「……………………はぁ」

無意識にでてきたため息はきっと自分に向けてのものだろう。
先輩がシャワーを浴びてる間に準備するのはお互いの着替え、それと制服をかけとくくらいか。まあ飯と洗濯機は俺が風呂に入った後でいいだろう。


さて着替えを用意するのだが俺のを着てもらうとして、何を持ってけばいいのやら。
適当に衣装ケースを漁っているとワイシャツがでてきた。

……いや、これはないだろ。着てもらいたい気もするが。
あの人ならなんやかんやで着てくれるかもしれないが散々からかわれるに違いない。あと寒そう。
これはパス。

結局わ選んだのは適当なシャツとパーカーとジーンズというなんとも当たり障りのなさそうなものになった。




「先輩。替えの服置いときますね」

「あーうん。ありがと」

風呂場からはジャバジャバとシャワーの音が聞こえてくる。
つい邪な妄想が思い浮かんでくるが抑えるんだ俺。無心になれ。



先輩が風呂から出てくるのは思いのほか遅かった。やっぱり元男とはいえ女の子ってことなのか。

それから俺も風呂に入り、ついでに下着とかを入れて洗濯機をかけといた。
先輩の薄いブルーの下着を入れるのはさすがに躊躇したが。
「おかえりー。漫画読ませてもらってるよ」

部屋に入ると先輩は布団の上で漫画を読んでいた。
ぶかぶかのパーカーやジーンズはそれなりに似合っている。

「晩飯どうします?」

先輩がこっちを振り向く。
やたらニヤニヤしているのが気になる。まさかアレが見つかったのか?

「そんなことよりさ、リョウくん。これなーんだ」

「あっ…………!」
予想的中。
先輩が見せつけてきたのはコンドーム。しかも前に山内が俺に押し付けてきたアレだ。

「机の上に置いてあったよ。せめてもうちょっと隠すぐらいはさ……」

「え?」

「うん?」

俺は山内からもらったアレは机の引き出しの中に入れてあったはずだ。それも適当な物で隠してぱっと見ではわからないようにしてある。見つけようとしない限り見つかるないはずなのだが……

まさかと思い辺りを見回した。やけに部屋が綺麗な気がする。
そう言えば布団もキチンと直されている。
もし先輩が自分で直したんじゃないならまさか…………

「お母さんに見つかったんだね……」

「…………」

「ど、ドンマイ。リョウくん。とりあえずご飯食べようか」

親指をグッと立てられた。その微妙な心遣いが心にくる。

psの意味もわかったのだが俺の気分は下がりっぱなしだ。
なんてベタなことしてくれたんだ母さん……




そんなこんなで数時間後、晩飯も洗濯も済ませあとは寝るだけになった。
ちなみに晩飯はカップ麺だった。理由は簡単。俺も先輩も料理ができないからだ。

部屋に戻ってからはお互いに無言の状況が続いた。
何となくだが気まずい。そんな感じだった。
俺も先輩も家に二人だけってことを完全に意識している。

そして、その沈黙を破ったのは先輩だった。
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