俺も先輩もかれこれ数十分ベッドに腰掛けたまんまだ。気まずいなんてもんじゃない。
「リョウくん」
「な、なんですか?」
「…………しちゃおっか」
胸がドクン、と言った。鼓動がどんどん早くなる。
先輩の頬はみるみるうちに赤みを帯びていった。
先輩の言うことが何を意味するのかは聞かなくてもわかる。
多分俺の顔も先輩の顔と同じくらい、いやもっと赤くなってるにがいない。
少し間をおいて先輩は続ける。
「あのさ、さっきは茶化しちゃったけど…………本当だよ?」
なんとなくだがこんな光景が前にもあった気がする。ただ、あの時は先輩の家で、俺たちはただの先輩と後輩でしかなかった。今は俺の家で、俺たちは付き合っている。
「あの時は女体化をさせないためにしようとしてたけど今は違う。女の子としてリョウくんのことが好きだからってのもあるから――」
「先輩!」
そんなの俺だって同じだ。
「俺も先輩が大好きです!」
言葉の勢いのせいだろうか。
俺は先輩の抱きしめベッドに押し倒し、そのまま口を塞いだ。
いい匂いがする。
「ひゃっ、んっ…………」
そのままパーカーのチャックに手をかけようとすると額をグイッと押されて顔を離された。
「ま、まって、電気消してよ電気!恥ずかしいから!」
あっ。
完全に忘れていた。
軽く先輩に謝罪を入れ枕元のリモコンを手に取りスイッチを押した。
カチリ、と音を立てて部屋から明かりが消える。
これでもう先輩の身体がうっすらと見えるだけだ。
「あのさ……ありきたりな言葉なんだけど…………優しくしてね」
「もちろんです」
軽くキスをし、俺は先輩をそっと抱きしめた。
目が覚めると目の前には先輩の顔があった。
その目はバッチリ開いている。
窓からはカーテンを通して朝日が差し込んでいた。
寝起きの頭が徐々に覚醒していく。
あのあと、そのままふたりで寝たんだっけか。
俺も先輩も一糸まとわぬ生まれたまんまの姿なのが何よりの証拠だ。
ベッドのすぐそばには脱ぎ散らかした服が置いてある。
「あ、起きた?」
「えー……まあ。先輩起きてたんですか?」
寝顔を見られてたと思うとなんとなく恥ずかしい。だからといってどうこう言うわけではないが。
「なんか目覚めちゃって」
いつも通りの笑顔で笑う先輩がそこにいた。
先輩を見てると数え切れない程の言葉が溢れてくる。
その中の一つは昨日言った。けど、もう一度伝えたい。
「先輩」
「何?」
「大好きです」
「うん、私も」
最終更新:2014年04月19日 15:06