?「ぼ、僕と付き合ってください!」
狼「断る」
?「そ・・・即答・・・」
友「うわー・・・即答かー」
狼「当たり前だろ?でも男から告白なんて初めてされた」
友「あら?知らないの?って知るようなことでも無いんだろうけどさ・・・あんたって結構男子の間で話題になってるよ?」
狼「・・・そうなの?でも、告白されたのは初めてだぞ」
友「そりゃあ公衆の面前で彼氏とあれだけ堂々とベタベタしてれば誰も男は寄り付かないわよー」
狼「そ・・・そうかな?ベタベタしすぎてるかな?」
友「んー?まあ、確かに、傍から見てればそうよね」
狼「そっか・・・」
友「・・・で、でもさ!さっきのあいつ、それでもこうして言ってきたって事は、
よほどの根性持ちか空気読めない馬鹿かのどっちかよね!ああいうのは怖いかもよー!」
~放課後・帰路~
狼「はあ・・・遅くなっちゃったな・・・」
…ザッ…ザッ…ザッ…
狼「?」
…ザッ…
狼「・・・(トッ…トッ…トッ…」
…ザッ…ザッ…ザッ…
狼「・・・?(チラッ」
…ザッ…
狼「・・・(タッタッタッ…」
ザッザッザッザッ…
狼「・・・!!!(タッタッタッタッタッタッ」
ザッザッザッザッザッザッ
~狼子のマンション~
…バタン!
狼「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ふぅ・・・(ズルズル…ペタン」
…ピンポーン
狼「!!」
ピンポーン ピンポーン ピンポーン
狼「~~~~~~~~!!!!!」
ピンポーン ・・・
狼「・・・」
狼「・・・ぇ・・・ぅ・・・うぅ・・・」
続く。
~学校~
(´・ω・`)「へえ・・・油揚げをねえ・・・」
辰「目からウロコだろ?w」
狼「・・・」
狼「・・・(ベタベタしちゃいけないよね・・・)」
狼「・・・ねえ・・・ゆう・・・?」
友「え?どうしたの?」
友「・・・ほんとに?大丈夫だったの!?」
狼「・・・大丈夫・・・だった・・・」
友「・・・でも、オートロックの先まで追いかけてくるなんて・・・ただの変質者じゃ無さそうだよね・・・」
狼「・・・どうしよう・・・こわい・・・」
友「・・・狼子にはあたしがついてるじゃん!なんでも相談してよ!友達でしょ?」
狼「・・・ありがとう・・・」
~狼子のマンション~
友「おじゃましまーす♪おお!一人暮らしなのに結構片付いてるんだね」
狼「あ・・・散らかってるの苦手だから・・・」
友「あたしは片付ける方が苦手だよーwwwww狼子すごいよー!憧れる♪」
狼「えへへ・・・褒めてもなんにも出ませんよ。でも、女の子が来るのは初めてかも」
友「ほんとに?」
狼「うん、あんまりもてなかったから・・・あ、お茶淹れて来るね」
友「どもども♪」
友「・・・で、ついて来た奴に見覚えある?」
狼「・・・わかんない・・・暗くて見えなかったから・・・」
友「うーん、そっか・・・じゃあ、誰か尾けて来そうな奴に心当たりは?」
狼「・・・わかんない・・・」
友「無いか・・・でもさ、こういうのって、全然関係ないところで一回見かけただけの奴が犯人だったりするからね・・・」
狼「・・・知らない人なのかなあ・・・?」
友「・・・とにかく、あたしは今日ここに泊まってくから。変な奴が来ても心配しないでね。これでも空手の有段者だし!」
狼「えへへ・・・ありがとう」
続く。
~狼子のマンション~
狼「まずい・・・晩御飯買ってない・・・買いに行かないと・・・」
友「うっそ!?でもこんな時間だしスーパー開いてないよね・・・レトルト食品の買い置きとか無い?」
狼「無い・・・」
友「うーん・・・じゃ、あたしが行って来るわ、近くのコンビニにでも」
狼「でも・・・」
友「あ、お金は立て替えとくから大丈夫だよ」
狼「・・・」
友「・・・すぐ帰ってくるからさ。なんかあったらすぐ電話してよ。・・・あたしのケー番書いたの置いてくから」
狼「うん・・・」
友「じゃ、行って来る。10分以内に帰ってくるわ!それと、あたしが電話入れるまで絶対にドアの鍵は開けないように!(バタン」
狼「・・・」
狼「・・・(もう少しで10分・・・)」
…ピーン…ポーン
狼「・・・(帰ってきた?)」
…ドガン!!
狼「!!!???」
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
狼「!!!!(バタバタバタ…ガチャッ!バタンッ」
…ゴン…ゴン…ゴン…ゴン…
狼「(・・・辰哉・・・!!!)」
…ゴン…ゴン…ゴ…
狼「・・・」
……………
狼「・・・っはぁ・・・っはぁ・・・っはぁ・・・ぇう・・・ぅうぅ・・・」
…リリリリリリ! …リリリリリリ!
友『やほ♪狼子、帰ったよー。今からインターホン鳴らすから下の玄関開けてね』
狼「・・・うん・・・」
友「・・・ろ、狼子!!玄関・・・何この跡!?バッドで滅多打ちにしたみたいな・・・!!」
狼「・・・」
友「・・・来たの?」
狼「・・・」
友「(ギュッ)・・・ごめん・・・ひとりにしてごめんね・・・」
狼「・・・ぅ・・・ぇ・・・えぇ・・・」
~狼子のマンション~
巡「ではこれで。また何かあったら派出所の方に連絡願います」
友「はい・・・」
狼「・・・なんだって?」
友「何かあったらすぐ交番に電話くれって。あと、この辺りの夜の巡回も強化してくれるって。それで捕まればいいんだけど・・・」
狼「・・・どうしよう・・・もう・・・出かけられない・・・」
友「・・・狼子にはあたしがついてるって言ったじゃん!守るよ!だから、心配しないでよ・・・」
狼「うん・・・ありがとう・・・」
友「よし!もう寝ようか。へへへwww添い寝してあげよっか?」
狼「ん・・・えへへ・・・大丈夫。今日は頑張れるから・・・」
友「ええー!つれないなーwww愛してるよ♪じゃ、おやすみっ!」
狼「うん・・・おやすみ・・・」
狼「・・・」
~翌朝・学校~
友「ふー、無事に着けたね。てか朝は流石に動かないか、ストーカーも」
狼「うん・・・あの・・・昨日はありがとう」
友「んー?まあまあ♪じゃ、ちょっとあたし先生のとこ行ってくるから、先に教室行っててよ。すぐ追いつくからさ!」
狼「うん・・・」
友「じゃあね!」
狼「・・・」
?「・・・あの、月島先輩・・・」
狼「・・・?」
?「僕・・・佐伯です・・・昨日話した・・・」
狼「・・・」
佐「ちょっと話しておきたいことが・・・」
狼「!!」
佐「あ、ちょ、ちょっと待って!(バッ」
友「・・・あんた!!何してんのよ!!」
狼「・・・ゆう!」
佐「あ・・・」
友「あんたねえ・・・!!振られたくせに未練がましいのよ!!男ならきっぱり諦めとけ!!!」
佐「あ・・・す・・・すいません・・・すいません・・・じゃあ・・・(タッタッタッ…」
友「狼子!大丈夫!?変なことされなかった!?」
狼「・・・大丈夫・・・」
友「ったく油断も隙も無い・・・男ならウジウジ付きまとってんじゃねえっつーの!!」
狼「友・・・ありがとう・・・」
友「んー?いーえー♪じゃ、教室行こうか!」
~放課後~
狼「・・・(遅いな・・・友・・・)」
辰「おりょ?狼子じゃん。お前どうした?」
狼「あ・・・辰哉・・・」
辰「・・・お前、顔色悪いぞ?大丈夫か?」
狼「あ・・・なんでもない・・・ちょっと考え事してたから・・・」
辰「そうか?何か心配事あるなら言ってくれよ。つーかお前一昨日からどうした?
いつも電話かけてくるくせにかけてこなかったし、こっちからかけても繋がらないし」
狼「あ・・・あの・・・友が来てたから・・・」
辰「ゆう?ああ、お前のクラスの娘か?それならいいんだけどさ・・・でもかけた電話ぐらい出てくれよ。心配するだろ?」
狼「ごめん・・・」
友「狼子!おまたせ・・・あれ?」
狼「あ・・・ごめん、友と帰るから・・・」
辰「?そうか?じゃあ、また明日な」
狼「うん・・・」
辰「・・・ほんとにどうしたんだ?あいつ・・・」
続く。
~狼子のマンション~
友「じゃ・・・ごめん、あたし、今日は帰らなきゃならないんだ・・・ごめんね」
狼「・・・大丈夫だよ。それより、ありがとう。元気になった」
友「ん、いいよwあと、何かあったらすぐ電話かけて。交番の番号はほら、そこに書いといたから。電話のとこのメモ帳」
狼「うん・・・ありがと」
友「・・・じゃ、あたし行くけど・・・ほんとに気をつけてね!?」
狼「うん。じゃあね」
…バタン
狼「・・・」
チッ…チッ…チッ…
狼「・・・ふぁ?あれ?俺、寝てたんだ・・・」
狼「・・・よだれが・・・」
狼「・・・顔洗ってこよ」
バシャバシャ…
狼「ふぅ・・・(ゴシゴシ」
ピーン ポーン
狼「!!?」
……………
狼「・・・」
狼「・・・(友が来たのかもしれないよね・・・覗き穴から見てみるまで・・・わかんないよね・・・)」
狼「・・・(ソー…」
ガンッ!
狼「!!!!!!!!」
ガンッ! ゴガンッ! ガンッ! ドガンッ!
狼「~~~~~~~~!!!!!!!」
~夜道~
辰「ふう・・・女って難しいよな、ズゴック」
ズゴック(ry「アウ♪」
辰「・・・そういえばお前も女だったか」
ズ「アウ♪アウ!アウ!アォーーーーーォォオ♪」
辰「夜になるとお前のテンション鰻昇りだな・・・ふぁ~あ・・・俺は眠くてたまんねーってのに」
ズ「ハウハウ♪(カクカク」
辰「ちょwwwwww雌犬の癖に腰振ってんじゃねえよwwwwwww」
ズ「アウ!アン!アォーン♪(ダダダダッ」
辰「ちょwwwwwwどこに連れてく気だお前はwwwwwww引っ張っちゃらめえええええぇぇぇ…」
ズ「ハッハッ・・・アウ♪」
辰「ひー・・・ひー・・・どんだけ走らせるんだお前は・・・ん?なんだ、狼子のマンションの前か、ここ」
ズ「ウゥゥゥ・・・ガウ!!!!」
辰「今度はなんだ?何が気に入らないわけよ・・・・・・ん?」
ズ「ガウ!!ガウ!!ガウ!!」
辰「・・・なんだあいつ?」
?「・・・!!(ダダッ…」
辰「おっ、逃げやがった!おい!あんたちょっと!・・・ズゴック行け!!」
ズ「アォーーーン♪(ダダダダッ」
辰「ちょwwwwwww明後日の方向に行ってんじゃねえよwwwwwwww」
~狼子の部屋~
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ガンッ!
狼「・・・もうやめて・・・!!!」
ガンッ! ガンッ! ガンッ! ・・・
狼「・・・」
……………
狼「・・・はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
……………
狼「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ぇう・・・」
ピーンポーン
狼「!!!!!!!!」
…ドンドンドンドン
狼「はぁっ・・・はぁっ・・・(電話・・・」
ドンドンドンドンドン
狼「(・・・あれ?交番の・・・メモが無い・・・!!)」
ドンドンドンドンドン
狼「(・・・辰哉・・・助けてよ・・・!!!)」
ドンドンドンドン…こー…
狼「・・・?」
ドンド…ド…ろこー…ろこー!
狼「!!!!!(バタバタバタ」
ガチャッ
辰「狼子!」
狼「・・・わああああああああああああ!!!!!(ガバッ」
辰「お、おい・・・お前大丈夫か?つーかこの玄関どうしたんだ?」
狼「ああああああああああああ!!!!!」
ズ「クゥー…ーン?」
辰「あーあ・・・こりゃ落ち着くまで待たなきゃダメか」
続く。
辰「・・・で、どうして黙ってたんだ?」
狼「だって・・・っぇ・・・ベタベタしたら・・・迷惑だと思って・・・」
辰「・・・お前ねえ・・・それで何回俺に怒られたと思ってんの?だから困ったときは電話しろって言ってるのにさ・・・
困ったときこそ知らせないってどういうことなんだよ。それとも俺って頼りにならない?」
狼「・・・ぅ・・・ぐすっ・・・そんなことない・・・」
辰「だろ?・・・ベタベタし過ぎないようにしてくれるのはこっちとしては助かるのかもしれないけどさ・・・
こういうときくらい頼ってくれたっておかしくないはずだぞ?つーかこういうときくらい遠慮しないでかかってこいよ」
狼「・・・ごめんなさぃ・・・」
辰「・・・うん・・・まあ、お説教はこれで終わり。狼子が無事でよかった。もっと早く来られなくてごめんな」
狼「・・・うん・・・いい・・・」
辰「まあ俺が来たからにはもう心配要らないからな!わっはっは!!」
狼「・・・」
辰「・・・あ、ごめん、今の笑うとこ・・・」
狼「・・・つまんない」
辰「ははは・・・ごめん」
狼「・・・うわああああああああああああああん!!!!!(カプッ」
辰「ちょwwwwwww」
ズ「アウ♪♪♪(カプッ」
辰「ちょwwwwwwお前まで噛むなwwwwwwwwいたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!!!!」
巡「・・・これは手で殴りつけたというより何か硬いものでぶん殴って出来た跡に見えますね」
辰「・・・そうですよね」
巡「これは流石に大事だし、ちょっと人呼んで調べてみますか」
辰「お願いします」
辰「何かわかりましたか」
巡「うーん・・・ちょっと出なかったみたいですね。殴った跡だけではなんとも・・・
玄関についていたのはまあバッドの様なもの・・・で殴った跡らしいというのは判りましたがね」
辰「そうですか・・・」
巡「それからお聞きしますが、先ほど下の正面玄関で見かけたという不審な人間の、何か特徴でも覚えてらっしゃいませんかね」
辰「うーん・・・暗くてよく見えませんでしたが・・・まあ、覚えてるのは
黒のキャップに白のマスク、それから、黒のジャンバー・・・そんなところですね。さっき言ったとおりです」
巡「身長は、どのくらいでしたか?」
辰「うーん・・・まあ、俺と同じか、低いくらい・・・ですかね」
巡「そうですか・・・まあ、明日もう一度お伺いしますんで。何か思い出したことでもあればそのときに。
それから、この区域の夜間の巡回は強化しますが、日が暮れた後はなるべく外出しないようにしてください」
辰「・・・だってさ。気をつけろよ」
狼「うん・・・」
巡「では、私らはこれで。こちらに交番の番号置いていきますんで。何かあったらすぐかけてください」
辰「ありがとうございます」
バタン・・・
辰「はあ・・・しかし、警察の事情聴取なんて初めて受けた!疲れるなーあれ!」
狼「えへ、そうだね」
辰「あー、それから狼子、俺今日帰らないって連絡入れちまったから、泊まってくわ。ズゴックと一緒に」
ズ「アウ♪」
狼「えへへ・・・もー、ペット禁止なんだぞ?ここ」
辰「ははは、まあまあ。今日は無礼講でいいだろ?バレないって。今夜ぐらい」
狼「仕方ないなー」
辰「はは」
狼「えへへ」
ズ「アウ♪♪♪」
辰「んー?なんだズゴック、遊びたいのか?ほらおいで」
ズ「アオーン♪♪♪(ガバッ」
狼「うわ」
辰「・・・」
ズ「ハッハッ(ベロベロ」
狼「うひゃあ!く、くすぐったいよ」
辰「だからお前はなんで雌犬なのに女好きなんだよwwwwwww・・・ん?なんだ?この布切れ」
ズ「アウ♪♪♪」
辰「何?お前が拾ってきたの?ったく、何が良くていつもいつもこんなんばっか拾って来るんだよ・・・」
ズ「アオーン♪♪♪(ベロベロ」
狼「うひー!」
辰「さて、寝るか!」
狼「うん」
ズ「アウ♪」
辰「ダメ!お前はそこ!」
ズ「クゥー…ーン?」
辰「そんな顔してもダメ!」
狼「ふふ」
辰「よっしゃ、電気消すか!おやすみ!」
狼「おやすみ・・・」
狼「・・・たつや」
辰「ん?」
狼「ありがと・・・」
辰「当たり前だって・・・すー・・・」
狼「えへへ・・・」
続く。
仔犬達「「「アン♪アン♪アウ♪」」」
辰「賑やかだなー、ズゴックの小さいのが3匹かー」
祈「へへー、もう名前も決まってるんだ♪」
辰「ほうほう。じゃあ聞かせてみろよ」
祈「よしよしwwwwじゃあ聞かせて進ぜようwwwwwまずこの子がEね」
辰「Eかー。何のE?エリックだとか英名の頭文字?それとも単語?」
祈「本名はズゴックE。愛称はE♪」
辰「・・・」
祈「で、この子はゾック。それから、この子はちょっと迷っててさ・・・兄貴はアッガイとアッグガイのどっちがいいと思う?」
辰「え・・・アッガイとアッグガイって違うの?」
祈「・・・なんていうか、突っ込む気も失せるわ」
辰「???」
狼「…おーい!狼子さんが来たぞー!仔犬見せろー!」
祈「おっ♪狼子さん来たじゃん♪♪狼子さーん!!狼子さんはアッガイとアッグガイとどっちがいいーーー!?(バタバタバタ…」
辰「・・・;」
~夕方・校門前~
狼「・・・」
辰「・・・家で話したらついてきてしまったんだが・・・」
祈「おう!お姉ちゃんの危機には妹としては黙ってらんねえだろうがよオイ!!」
ズ「アウ♪♪」
辰「・・・お前らまだそれやってるわけね・・・」
友「ワンちゃんもいるんだ・・・随分賑やかになったね」
ズ「アオォーーーン♪♪♪(ガバッ」
友「ひゃあっ!な、なに!?」
辰「ごめん、そいつ女好きなんだ・・・」
狼「あはは・・・あれ?友、手首どうしたんだ?その包帯・・・」
友「あ、近道しようと思って公園の茂みの中通ったら木の枝に引っ掛けちゃって・・・意外とざっくり行っちゃったからさ」
辰「うわあ・・・大丈夫なの?」
友「うん、まあ大丈夫。病院行ったし」
狼「それならいいんだけど・・・ところで辰哉、今日はこんなに人集めて何するんだ?」
辰「ああ・・・そこは祈美に聞いてくれ・・・」
祈「今日はストーカー抹殺の前哨戦として囮捜査を行う!!」
狼「・・・おとりそうさ?」
友「狼子を囮にするの・・・?」
祈「馬鹿者!そんな危険なことが出来るか!おばば二等兵には黙って軍曹の言うことを聞いていてもらおうか!!」
ズ「アオォーーーン♪♪♪」
友「おばば・・・」
祈「今行ったとおりお姉ちゃん本人を囮にするのは危険すぎる!ということで、お姉ちゃんは安全な場所で待機させた上で、
このヅラを使用してお姉ちゃんと背格好の似た囮を立てることとする!!」
ズ「アウ♪」
狼「・・・ほんとにやるのか?」
辰「やめろとは言ったんだけどさ・・・どうやっても聞こうとしないから・・・」
友「だったらあたしがその囮役やる!これでも結構丈夫なつもりだし」
祈「だから貴様は馬鹿者だというのだ糞戯けが!!ウチの兄貴に届かんばかりの長身で小柄な狼子さんの代役が出来ると思うてか!!」
友「・・・」
辰「友ちゃんごめん・・・あいつ、夢中になると周りが見えなくなるからさ・・・」
祈「ということで!背丈に関しては一番近いと思われるこのあたしが囮役となる!このヅラで!!(バサッ」
辰「おい!それは聞いてなかったぞ!?」
祈「どうだ!あたしの後姿はお姉ちゃんとそっくりだろう!!」
辰/友/ズ「似てる・・・」
辰「・・・」
友「・・・」
ズ「・・・クゥー…ーン?」
辰「ちょwwwwwwwwwwww」
狼「???」
~友の家~
辰「一応部屋には戻らない方がいいな。狼子は今日ここに隠れててくれ。俺と祈美とズゴックで行って来るから」
ズ「アウ♪」
狼「わかった・・・ほんとに気をつけてね?」
祈「おうまかせとけ!お姉ちゃんを残しては死なねえよwwwwwwww」
辰「祈美お前自重しろwwwwwwwww・・・じゃ、行くから。友ちゃん、狼子のことよろしく頼む」
友「うん。任せて。誰か来ても絶対に玄関は開けないよ」
~夜道~
祈「・・・(ザッザッ」
辰「うーん・・・こんなんでほんとに釣れるのか?」
ズ「アウ♪」
辰「こら静かにしろ!・・・しかし、あんなヅラどこで手に入れたんだあいつは・・・ん?」
?「・・・(コソコソ…」
辰「(・・・マジか!?ほんとに釣れやがった!!)」
?「・・・(…タッタッタッタッ…」
辰「お!やばいやばい!・・・ズゴック行け!!」
ズ「・・・ガウ!ガウ!ガウ!(ダダダダッ」
?「・・・!!??!!?」
祈「わ!?」
ズ「ガウ!!(ガブッ」
?「うわぁああああぁぁぁああぁ!!!!」
ズ「ガウッガッガウ!!!」
辰「でかしたズゴック!!・・・喰らえ変質者!!怒りの鉄拳・・・え?」
祈「ギャラクティカマグナム!!!!!」
・・・ ゴーン ・・・
~三十分後・喫茶あぼーん~
佐「・・・この前、月島先輩に告白したんです・・・でも、断られてしまって・・・でも、諦め切れなくて・・・」
辰「・・・夜道で尾けたと?」
祈「ストーキングしやがったと!?」
佐「ひっ!・・・すみません・・・」
辰「・・・で?これからどうするんだ?」
佐「・・・これから、警察に出頭しようと思ってます・・・本当に、ご迷惑をおかけしました」
祈「警察に行ったくらいでお前の罪が許されるとでも!?」
辰「おい祈美!・・・じゃあ、もう狼子を尾け回したりしないんだな?」
佐「はい。もう、絶対に・・・自分でも、おかしかったと思います・・・本当に・・・すみませんでした・・・」
辰「・・・だったらいいさ。痛い思いさせて悪かったな」
佐「・・・でも・・・」
辰「?」
佐「・・・この前、あの人のマンションの前まで行ったとき、誰かが横手から塀を乗り越えてるのを見たんです」
辰「・・・この前・・・?」
佐「あ、この前です・・・今日と同じように、ワンちゃんに追いかけられそうになったとき・・・」
辰「・・・この前ってあの夜か!?君、そのときも今日と同じ格好だったか!?」
佐「あ、はい・・・今日と同じです、黒のジャンバーに帽子・・・それで、
マンションに入り込もうか迷ってるところで、木村先輩達に見つかってしまって・・・」
辰「・・・君、狼子の部屋の前まで行ってバッドでドアをぶん殴ったりしてたか?」
佐「そ、そんなことしません!」
祈「ほんとか!?フカシこいてんじゃねえだろうなコラ!!?」
佐「ひぃ!!ほ、本当です、信じてください・・・僕は絶対そんなことしません・・・したくありません・・・」
辰「・・・その、塀を乗り越えようとしてた奴の事、覚えてないか!?どんな奴だった!?」
佐「え?えと・・・黒っぽい格好で、帽子を被ってました・・・背丈は、
そんなに低い感じじゃなかったけど・・・でも、あれは多分女の人だと思います」
辰「・・・本当か!?」
佐「あ、はい。動きがそれっぽかったのと、香水の匂いが風に乗って来ましたから」
祈「さすがストーカー!」
辰「祈美!・・・待て、思い出せ・・・香水の匂い・・・」
祈「兄貴?」
辰「・・・わかった。佐伯くんだっけ?君はもう帰っていい。ありがとう。引き止めて悪かった」
佐「え?あ、はい・・・じゃあ・・・」
祈「あいつ帰っちゃったよ・・・ねえ兄貴、ほんとにどうしたの?何か思いついたなら言ってくれなきゃわかんないよ」
辰「・・・祈美、お前狼子のマンションに行った事あるか?」
祈「え?まあ、入ったことは無いけど、場所は大体わかるよ。でっかい公園の前のとこだよね?」
辰「そうだ・・・あの夜ズゴックは何故か明後日の方向に・・・そして拾ってきた布切れの色は濃紺・・・ウチの学校の制服と同じ」
祈「???」
辰「・・・ちょっとまずいことになったかもしれない。祈美、友ちゃんの家に戻るぞ!!」
祈「ねえ兄貴!ほんとにどうしたの!?」
辰「すまん!説明してる時間無い!とにかく急ごう!」
ズ「ワン!ワン!」
~友の家~
祈「・・・あれ?玄関が開いてる・・・」
辰「・・・くそっ!とにかく中に!」
祈「・・・ねえ、家の中誰もいないよ?友さんと狼子さんは?ねえ兄貴ったら!!」
辰「・・・香水の匂いだ」
祈「え・・・?」
辰「ズゴックは女の子が好きだろ?どうしてかお前ならわかるよな?」
祈「あ、うん、ズゴックは女の人向けの香水の匂いが好きだから、それに混じっていつも漂ってくる女の人の匂いも・・・」
辰「・・・あのとき、狼子の部屋の玄関から香水の匂いがした。それで気付いてりゃよかったんだ。
それにズゴックが拾ってきたこの濃紺色の布切れ・・・あの時は気付かなかったけど、ほんのり香水の匂いがする」
祈「・・・この部屋もするよ、香水の匂い・・・」
辰「・・・祈美、俺から三十分以上連絡が無かったら、警察呼んでくれ」
祈「あ、ちょっと兄貴!!」
辰「行ってくる!ズゴック借りてくぞ!」
ズ「アウ♪アウ♪」
祈「兄貴!!」
辰「今出て行ったばかりなら、匂いも残ってるはずだ。匂いが残ってるなら、この布切れに残った香水の匂いで・・・ほら、ズゴック」
ズ「・・・(クンクン)・・・アウ♪♪(ダダダッ」
辰「うおっと!・・・警察犬みたいに訓練されてるわけじゃないけど・・・お前だけが頼りだ!頼んだぞ!…」
~公園~
ズ「ワン♪アン♪アォーン♪♪」
辰「はぁ・・・はぁ・・・狼子のマンションの前の公園・・・ここか?このトイレのどこかにいるのか!?」
ズ「アウ♪」
辰「女子トイレの個室・・・ひとつずつ探していこう・・・」
辰「まずひとつ・・・」
・・・ ギィ ・・・
辰「・・・いない・・・次は・・・」
・・・ ギィ ・・・
辰「・・・いない・・・次が・・・最後・・・」
辰「・・・」
・・・ ギ ・・・
辰「・・・」
・・・ ギィイー ・・・
辰「・・・・・・・・・」
辰「・・・・・・嘘・・・だろ・・・・・・」
静かな公園・・・辺りにはすっかり夜の帳が下りていて、遠くから時折車の音が聞こえてくる。公衆トイレは管理が満足に行き届いておらず、明かりの切れた暗闇の中から異臭を漂わせていた。そして、それに混じってかすかに香る、捜し求めてここまで来た香水の匂い。
手元に残った布切れの匂いを頼りにここまで導いてくれた愛犬は外で待たせ、俺は女子トイレの個室を一つ一つ調べていく。そして、最後の一つ。誰かがいるとすれば、この中。
慎重に、慎重に、扉を開く。隙間から覗く中は、暗くて何も見えない。しかし、そこに存在する何者かの気配が木の扉越しに伝わってくる気がした。
もう少し。
あと少し。
もうすぐ。
瞬間、俺は取っ手を一気に引き放つ。バーンと豪快に音を立てて開く扉。その向こうには・・・
「・・・・・・嘘・・・だろ・・・・・・」
中にいた人物は、俺の姿と声に驚いて一瞬身体をびくりと震わせ、その主が俺だと認めると助けを求めるように呻き声を上げた。
「んー!んんー!!」
俺の高校の制服を着たその人物は、口元をガムテープで塞がれた上、後ろ手に縛り上げられて和式便器の向こう側のわずかなスペースに座らされていた。便器の両脇に無理な姿勢で投げ出された足をしきりにばたつかせながら目で訴えかけるその少女は・・・
「・・・友ちゃん!?」
「ん!んんー!!!」
名前を呼ぶと、友は一層大きく呻く。目には恐怖と焦り。視線は下と俺の顔をしきりに往復して何かを伝えようとしている。口元のテープを外して欲しいらしい。
「ご、ごめん、今取って・・・」
と、背後の出入り口から射す月の光に影が落ちる。
それに気付いてゆっくりとそちらに首をめぐらせると、そこに佇む黒い影。次第に目が慣れてきて、逆光の中のその人物が浮かび上がり始める。
「・・・どうかしましたか?」
なんの感情も読み取れない、無表情にただ言葉の意味を伝える為だけに発されたような声は、静かなトイレ内に冷たく響く。低い響きは一瞬間違えそうになるが・・・それは女の声だった。
「・・・あの?」
俺はぼんやりとしていたらしく、人影から再び無機質な声がかけられる。婦警用の帽子に、濃紺色でパンツタイプの制服を着た立ち姿はすらりとして綺麗だったが、暗闇の中そこだけもやがかかったように顔がどうしても見えなかった。
「・・・あ。すみません。この辺りに変質者が潜んでるかもしれないんです!」
「・・・ん?んんー!!んんんー!!!」
一際大きくなった呻き声に友を振り返る。友の目は恐怖と驚愕に染まっていて、畳んだ足を必死にばたつかせていた。
「・・・友ちゃん?どうしたんだ・・・?」
「んんー!!んんんん!!!」
と、俺はやっと今友の口元を塞いだテープをはがそうとしていたところだったと気付き、慌てて手を伸ばす。
ビリリ ・・・
「ぷはぁっ!」
テープをはがしきると、友は荒い息をつきながら俺を見つめる。と、その目が更なる驚愕に見開かれる。そのとき、背後から風に乗って漂ってきた芳香・・・
「木村くん、後ろ!!!」
ガンッ!!
振り返る間もなく、突然後頭部を襲った衝撃に俺はみっともなく頭から便所の床に倒れこむ。
倒れこんだ視界に入ったのは、ちぎれた袖からにゅっと飛び出た手に警棒を握り締める婦人警官の姿。その顔は相変わらずぼんやりとして見えない。まるで、顔の無い悪魔のように思えた。悪魔はこちらに目を向けることも無く、個室の奥に座り込んでいるはずの友の方へゆっくりと歩み寄る。個室の外側を向いて倒れた俺の視界には入らないが・・・彼女の鋭い悲鳴が響く。
その声で俺は、うまく回らない頭をなんとか奮い立たせ、起き上がる。肩が婦警の腰の辺りにぶつかる感触。それを頼りに俺はこん身の力でくるりと振り返り、膝のばねを使って体当たりをぶつける。不意を突かれた女はよろけて肩を個室の壁にぶつける。
しかし次の瞬間、今度は額を襲う衝撃。俺は後ろ向きに木の壁に叩きつけられて倒れる。壁に寄りかかったまま脱力していると、目に額から何かがたれ落ちてきた。多分、額が割れたんだろう。
目の前の女はダメージを受けた様子は無い。手に構えた警棒で、今度こそ俺に止めを刺してくれるようだ。
はは、最後まで冴えなかったな・・・
でも、俺が死ぬまでは友も生かされるだろう。それまでに、誰かが助けに来てくれるといいな。
でも・・・死ぬなら、愛する人の腕の中でって決めてたのにな・・・残念だ。
俺は、静かに目を閉じた。
辰哉ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
聞きなれた声が響き、目を開いた瞬間、女の顔に向かってローファーが飛んできて命中する。女の首がそちらを向き、釣られて俺もそちらへ首をひねる。その先は出口。更にその先には・・・
歯を薄くむき出しながらうなり声を上げるズゴック、それから・・・靴を片方しか履いていない狼子・・・そうか・・・そんなところに居たんだな・・・ったく、探す方の身にもなれってんだよ・・・
と、狼子に気付いた女は、そちらを向いたまま警棒を腰のホルダーに収める。そして、腰に下がったもう一つの道具へと白い手が伸びて・・・
残ったすべての力を振り絞って、女の手に構えられた短銃に掴みかかる。女は咄嗟に身をひねり、俺のわき腹に蹴りを入れる。蹴飛ばされた俺は個室の外に飛び出してうつ伏せに倒れこむ。倒れたまま鈍い動きで身体をひねり、女を振り返る。女の手の中の短銃は、俺の方を向いていた。・・・今度こそ幕か。
遠くで狼子とズゴックの声が聞こえる。・・・いいから早く逃げろよ。馬鹿な奴ら。
そして、女の指が引き金に。
・・・ カチッ ・・・
・・・あれ?
と、次の瞬間、信じられないことが起こった。
目の前で呆気に取られた様子で硬直していた女の身体が、横に向かって吹っ飛ばされてトイレの出口まで転がる。
さっきまで女が立っていた場所には、縛り上げられて動けなかったはずの友が居た。が、彼女は間髪入れず倒れている女に向かって駆ける。弾丸のような速さだった。
女は既に立ち上がって警棒を抜いていた。が、その両腕に狼子とズゴックが噛み付く。振りほどこうと女が身をひねった瞬間・・・その顔面に友の高い位置の蹴りが炸裂し、女は再び3メートルほど吹き飛ばされて倒れこむ。
友と狼子は肩で息をしながら、しばらくの間倒れた女を見つめていた。
女はそのまま、動くことは無かった。
・・・なんだ、俺は噛ませ犬か・・・
「はぁ・・・はぁ・・・やった?」
「・・・辰哉ーーー!!」
便所の汚い床で脱力している俺の下に、狼子が駆け寄ってくる。嗅ぎなれた体臭に包まれて、そのまま抱き起こされて腕の中に収められてしまった。狼子の目には大粒の涙が浮かんでいて・・・溢れて、零れ落ちた。額には小さな血の跡があった。捕まるときにあいつに殴られたのだろうか。
痛々しい跡に俺は手を伸ばして・・・俺は咄嗟にその身体を突き飛ばす。
ダーン ダーン ダーン ダーン
瞬間、俺の肩は物凄い熱とともに衝撃を受けて後ろに向かって吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。次に押し寄せてきたのはとんでもない痛みで、しかし俺の頭は痛みで冴えるどころかどんどん混濁してくる。脳と心をつなぐ意識の糸が、どんどん伸びて今にも切れそうになる感覚だと思った。
視界の先では、倒れていたはずの女が短銃を構えていた。その手前で、目の前で発砲された友が呆然としている。突き飛ばされて尻餅をついた狼子は、俺を見つめたまま硬直していた。
遠くの方で佇む女は、緩慢な動作で短銃を腰に収めると、きびすを返して茂みの中に向かって走っていく。
はっと気付いたらしい友が、吠え立てるズゴックとともに女を追って茂みの中へ駆けて行き、狼子は起き上がって俺の方へ駆け寄ってくる。
・・・ キキィイイイイイィィ ・・・ ドンッ ・・・
遠くでした音をぼんやりとした耳で聞いたのを最後に、俺の中で伸びきった糸はぷつんと切れて、狼子の腕に抱かれながら俺の意識は静かな闇に包み込まれた。
~?~
辰「うーん、随分長いトンネルだな・・・お!出口だ!」
辰「なんだここ・・・お花畑?」
辰「風が・・・ふ~、あったけ~♪花の匂いも香ってくる・・・なんか幸せな気分。幸せだしもう俺死んでもいいかも」
辰「ん?あそこに居るのは狼子?」
狼?『うふふ♪』
辰「なんだなんだニコニコして。なんかいいことでもあったの?w」
狼?『うふ♪(シャキーン』
辰「・・・え?何その鎌・・・というか、何その格好・・・?」
狼?『うふふふふ(ズバッ!ズバッ!』
辰「うおおおおお!!あ、危ないなお前!?・・・も・・・もしやお前は・・・し・・・死神・・・てことは・・・このお花畑は・・・」
狼?『うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ(ザザザザザザザザ』
辰「ちょ、てめえくんなあああああああああ!!!!・・・ま・・・まだ死にたくなーーーーーーーーーい!!!!!!!・・・・・・」
~病室~
辰「・・・っっっぶあ!?!!?(ガバッ)うお!いててて・・・」
祈「あ・・・」
辰「・・・え?あれ?ここは?」
祈「・・・あにきが・・・・・・・・・あにきが・・・!!!」
辰「え?ああ、おはよう、どうした?」
祈「狼子さーーーーーーーーーーーん!!!ズゴック(ryーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
兄貴が起きたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」
辰「・・・あれ・・・一瞬止めそうになったのは何故だろう・・・」
俺はどうやら三日ほど眠りこけていたらしい。三日も眠っていたとはいえ、当然殴られた頭や銃撃された肩は治っているはずも無く、頭の包帯も取れないし、腕だって骨折したときのようにぶら下げておかなければならないのは少々不便だ。利き腕を撃ち抜かれなかったのがせめてもの救いかと思う。
祈美が出て行ってすぐ俺の両親といっしょに病室に駆け込んできた狼子の額にも大きな絆創膏。しかし、傷跡は残さず治療できる程度の傷で済んだとのことだった。俺は久しぶりに家族の泣き顔を見て、狼子と抱き合って泣いた。布団の端を握り締めてみっともなく泣きじゃくる祈美のことも抱き寄せてやった。死んでしまわなくて良かったと思った。
その後、病室には医者と女性看護師、その後警察の人が来て事情を聞いていった。狼子をストーキングしていた婦人警官は、俺が狼子の家に行く以前に友が一度通報したとき、堂々と部屋を訪れていたらしい。俺が通報したときに来た警官がまるで初めて事件のことを知ったようなそぶりだったのはそういうわけだ。
それからこれは退院した後に知ったことだが、狼子をストーキングしていた婦人警官、彼女も狼子と同じ女体化者だったらしい。名前は門倉良二。しかし、女体化者ということ以外には生活圏も違えば過去の接点も見当たらない。彼女には身寄りが無く、事情を聞く遺族もいないため、結局犯行に至る動機はわからないままだ。今も、多分これから先も。何故なら・・・彼女はもう、この世に居ないから。
一瞬のことだったらしい。
公園を飛び出して車道に出た途端、横手から走ってきた長距離トラックに撥ねられ、即死だったそうだ。
たったひとり、話相手もおらず、職場と自分の部屋を行ったり来たりするだけの生活は、以前の狼子に似ている気がする。自分と似た痛みを抱える狼子を見つめながら、彼女は何を思っていたのか・・・考えていたらうっかり茶をこぼしてしまい、横で林檎の皮を剥いていた狼子に怒られた。
数日後、俺も無事退院・・・といってもやはり傷が完治しているはずも無く、腕は未だに肩からぶら下げられたままだし、頭の包帯も取れない。道行く人とすれ違うたび、きょとんとした顔が一瞬こちらを向いては気まずそうに逸らされた。
そして今、俺は狼子に伴われて駅のホームにいる。休日とはいえ昼過ぎともなるとそこそこ人も減ってくるようで、ベンチを見つけて座り、ふたりでのんびり話した。日々の他愛の無い話題、これからのこと、それから・・・待ち人のこと。
「やっほ♪お待たせ」
振り返ると、肩から大きな鞄を提げた友が居た。彼女は笑顔だったが、隠す為にかぶっているのであろう帽子から覗いた白い包帯が痛々しかった。
そして、電車が来るまでの間、友も交えての雑談。友が狼子と仲良くするようになったのは最近のことだが・・・実は、小学校時代、俺と同じ学校に通っていたらしいことが判った。どうやら、俺とは話したことがあったらしい。よく覚えていないと話すと友は少し寂しげに微笑み、俺は狼子に噛まれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、そして・・・別れのときは訪れた。
「じゃ、ふたりとも元気でね」
開いた電車のドアの前で、友は笑顔でそう言った。
「うん・・・友も・・・家に電話してね?ケータイ買ったら、連絡するから・・・」
「うん。メールしてね。待ってる」
そうそう、狼子は今までケータイを持っていなかったが・・・それを契約する為に小さな弁当屋でアルバイトを始めたそうだ。あの狼子がそんなに細々した仕事をするのは意外な気もするが・・・料理だけなら狼子は俺よりも上手だし、考えてみればそれほど不思議な取り合わせでもないだろうと思う。
「友ちゃん、元気でな。その・・・覚えてなくて済まなかった」
「ん、いいよ」
友は儚げな微笑を浮かべて首を横に振る。
そして、ホームに響くブザーの音。もうすぐ電車が出発する。狼子と友は一度だけ抱き合って、狼子はホームに残り、友は電車に乗り込む。
「あのさ・・・狼子」
「え・・・?」
友が口を開き、狼子は少しだけ歩み寄る。
「・・・ほんとはね、あたし・・・」
そのとき、狼子の目の前でドアが閉まり、電車が動き出す。本当の、お別れだ。
「・・・ゆう・・・ゆう!」
狼子は、動き出す電車を追って走る。我慢していた涙はもう溢れ出していた。狼子を追って俺も走る。しかしすぐにホームの端に辿り着き、友を乗せた電車はすぐにビルの谷間に見えなくなってしまった。ホームにはもう、俺たち以外の客はいなかった。
「えへへ・・・寂しくなっちゃったね・・・」
駅前に出ると、先を行く狼子は振り返らずに呟いた。駅前は休日らしく様々な人でごった返している。道の隅には、いつか見た詩人も露店を開いて小さな人だかりを作っていた。
「友、最後に何言おうとしてたんだろうね」
振り返って笑顔で狼子は言う。でも、無理してるのはバレバレだ。
「これから、聞かせてもらえばいいさ。転校するって言っても、同じ日本なんだし。これからも会えるよ」
俺の言葉に、狼子は曖昧に笑い、また歩き出した。その背中の拭いきれない寂しさ・・・友に嫉妬していないといえば、嘘になりそうだ。今の狼子は、昔のように同性ではない。俺では、埋められない穴だって有るのかもしれない。そう考えると俺も少し寂しい。狼子が女性らしくなっていくんだから・・・まあ近しい者としては喜ぶべきなのかもしれないが。
「・・・あーも!俺らしくないや!しゃきっとしろー!!」
突然の大音声に俺は面食らい、うっかり立ち止まって狼子を見つめる。道行く人の視線も一瞬狼子に集まるが、すぐに何事も無かったように通り過ぎていく。狼子は振り返って舌を出した。
「えへへー・・・辰哉、しっとしてるだろw」
「・・・へ?」
言い当てられてつい頬が熱くなる。俺の様子に、狼子はにやりと陰険な笑みを浮かべる。
「えへへwww図星かーwwwそうかーwww」
「ばっ・・・////////・・・馬鹿!!お前、最近意地悪くなったな///////」
「そっかー?それは辰哉のが移っただけだよwwwww」
狼子は立ち止まってくるりときびすを返す。きょとんとして見つめていると、歩み寄ってきて俺の目の前で立ち止まる。やはり何も言えずポカーンとしていると、突然背伸びしてきて噛み付かれた。
「うお!いてて!?」
「・・・お前は心配するなー!!」
口を離して元の位置に戻ると、狼子は真っ直ぐに俺の目を見つめて微笑む。
「俺達は、恋人で、親友!だろ?」
道行く人の声、車の音、アナウンス。
笑顔の狼子に俺は、ゆっくりと頷いた。
おすまい。