~あらすじ~
狼子と刹那が喧嘩してボコボコになった。
続き↓
~教室・刹那~
ふたり並んで教室に戻り、黒板を見てみると、落書きはもう消されていた。
「あ、円城寺・・・さん!?」
「その顔・・・月島も・・・」
戻ってきた俺たちのボコボコの顔を見て、みんなが呆然としている。
その向こうで美弥たちも、こちらを見たまま固まっていた。
振り返って目線を送ると、月島はゆっくり頷いた。
俺も頷き返し、向き直って一歩一歩、美弥たちの方へ歩いていった。
刹那「・・・あんなことした理由、聞かせて」
美弥「・・・は?」
俺の顔を見て一瞬きょとんとした美弥だったが、すぐに気を取り直したのか、いつもの陰険な笑みを顔に浮かべた。
美「なんのこと言ってるわけ?」
刹「・・・知らばっくれるな。人の事傷つけるようなことばっかして、楽しい?」
美「・・・黒板の落書きのこと?あたしらがやったって言うの?なんか証拠あるわけ?すっごい心外なんですけど~」
刹「・・・袖。チョークの粉ついてる」
美「え!?」
慌てて確認する美弥。
チョークの粉がついてる、なんて、勿論嘘だ。
自分の袖が綺麗なままであることに気づくと、ゆっくりと顔を上げてじろりと睨みつけてくる美弥。
美「・・・騙したね」
刹「・・・これ以上やったら、もう許さないから」
三人順番に睨みつけると、美弥たちは一瞬たじろいだような感じだった。
そして、三人に背を向けると、誰かが直してくれていたらしい自分の席に向かう。
美「・・・大体なんなわけ!?あんたみたいのが女気取って!女体化症候群だかなんだか知らないけど気色悪いのよ!」
刹「・・・好きに思ってれば」
美「だったらみんなに聞いてみようかー?オカマはクラスに必要ですかー?って」
そのとき、背後で誰かの椅子が倒れる音がする。
「・・・城嶋!お前、いい加減にしろよ!!」
「お前の方こそネチネチせこい真似ばっかしやがって性格最悪なんだよ!!」
驚いて振り返ると、立ち上がっていたのはさっき出迎えてくれた男子生徒たちだった。
そして、彼らに続いて他の男子生徒も続々と立ち上がる。
「いつまでもお前のわがままが通用すると思うなよ!」
「お前よか円城寺さんの方がよっぽどいいんだよ!」
「城嶋反対!!!」
取り巻きたちは突然の糾弾にオロオロ美弥の顔を伺っていた。
驚いた顔をしていた美弥だったが、すぐに気を取り直して言い返す。
美「うるさいわねミーハー男!あんたたちは顔さえ良ければどうだっていいんでしょ!あー、男ってサイテー」
「なにぃ!?」
「最低なのはあんたでしょう!!?」
言いながら今度は、女子生徒達が立ち上がる。
これには流石の美弥も、もはや驚きを隠せないようだった。
俺も正直、驚いた。
後ろの取り巻きの二人は、泣きそうになっている。
美「な、何よあんたたち偉そうに・・・」
「偉そうなのはそっちでしょ!?」
「人の知られたくないことまであんな風に茶化してばらすなんて最低!!」
「やられた方がどんな気持ちになるのか考えたことあるの!?」
「円城寺さんに謝りなさいよ!!」
「そうだ謝れ!!」
「謝れーーー!!!」
教室に響き渡る、怒声の嵐。
その迫力に押され、美弥が後ずさる。
美「わ、わかったわよ・・・謝ればいいんでしょ・・・・・・・・・ご、ごめん・・・」
「声が小さい!!!」
「聞こえないぞーーー!!!」
美「・・・ごめんなさい!!!これでいいんでしょ!!?」
「良くない!!!」
「真面目に謝れーーー!!!」
刹「・・・もう、いいよ」
俺の言葉に、急に教室は静まり返る。
みんな、何故か驚いた顔をしてこちらを見ている。
美弥まで、きょとんとしてこちらを見ていた。
刹「本当は、自分で初めに言うべきだった。こういう形になったのは正直残念だけど、みんなに言えてよかったと思ってる。ありがとう」
美「・・・え?」
刹「こっちこそ、この前は掴みかかったりしてごめん。・・・みんなも、ありがとう。もう、いいから」
美「円城寺・・・」
みんなの見送る視線を受取りながら、自分の席へ戻る。
隣に座った月島は、にやりと笑って親指を立てた。
俺はそれに、微笑みで応えた。
~後日の学食・辰哉~
学食は、今日も戦場。
成長期の食欲は、大袈裟じゃなくブラックホールだ。
誰もが血走った目でこの戦争に生き残る為、戦う。
生き残ったものだけが、この先の2時間を満腹の幸福とともに迎えられるのだ。
辰哉「・・・で、そんな壮絶な取っ組み合いを繰り広げた後なのに、お前の顔はなんで傷一つ無い卵肌なんだ?」
狼子「うん、俺、こういう怪我一日で治るから。女体化って不思議だな~」
辰「そ、そっかそっか・・・まあ、不思議なのは主にお前だと思うけどな・・・でも、良かったな。その子」
狼「えへ~、そうだな~。・・・ん?あ!刹那ー!こっちだこっちだ!」
辰「え?刹那?・・・え!?綾波レイ!!!?」
某漫画のキャラクターのように痛々しく包帯まみれの少女は、狼子に気付くと、ほっとしたような顔になって駆け寄ってくる。
辰「あ!誰かと思ったら、刹那ってキミか!」
刹那「!黙れ。こr」
狼「ちっっっがう!!!(かぷっ」
刹「!!~~~~~~~~~~~~~~~~ぃたい・・・」
狼「お前女になるって決めたんだろ!?だったらそういう乱暴な言い方はいけないって教えただろ!この前教えた通りに言ってみろ!」
刹「・・・だ、黙ってください、ぷ、ぷち殺しますわよ」
狼「よく出来ましたっ!」
刹「(*´∀`*)」
辰「・・・こ・・・根本的な解決になってない・・・」
狼「よし!じゃあ次、自己紹介!」
刹「お、俺の名前は円城寺刹n」
狼「違う!!!一人称は『俺』じゃなくて『私』だって何度言えばわかるんだ!!!ペナルティ噛み付き!!!(かぷっ」
刹「Σ(TдT )~~~~~~~~~~~~ぃたいぃ・・・」
辰「自分こそ出来てないくせに・・・」
狼「なんか言ったか!?」
辰「ん?いや、なんでも無いよ。なんでも」
考えてみれば刹那は、昔の狼子に似ているかもしれない。
いつも孤独で、何も望まず、誰のことも受け入れない。
でもそれは、本当は誰よりも愛されることを望んでいるからだ。
だが、それを誰かに伝えるにはあまりに不器用で、結局周りの誰かを傷つけることでしか自分を表現できない。
誰かを傷つけた分だけ、自分自身も傷つきながら。
狼「お前、女の子っぽい食事の仕方はちゃんと勉強してきたのか?ちょっとやってみろ」
刹「・・・(コクコク」
誰かとつながりを持つと言うことは、その中で自分のあり方を模索し続けることだと思う。
だから人は、寄り添ってくれる誰かが居なければ変われない。
世界との関わり方が変わってしまうのが女体化で、その世界との新しい関わり方を見つけたときが女体化の完了なのだとしたら、
それはきっとひとりきりで成し得ることじゃない。
変わってしまった自分を受け入れ、新しい自分に生まれ変わるには、寄り添って歩く誰かの力が必要だ。
狼「お~♪よく勉強してきたな~♪なかなか可愛いぞ」
刹「(*´∀`*)」
狼「でもわざとらしい!かわいこぶりっ子するな!仕置きに噛ませろ!(かぷっ」
刹「Σ(TдT )」
時を止めた少年はゆっくりと歩き出し、少女になった。
彼女の向かう道の先はまだ見えないが、でも・・・
「円城寺さん・・・あたしたちも混ざっていい?」
刹「!」
狼「いいぞ!お前らも来い!」
「あたしらも女の子のこと色々教えてあげるからさ~♪月島さんが先生じゃ女道は遠のくばかりよ~」
狼「ど、どういう意味だよ!」
「あの、俺らも混ざっていいでしょうか・・・?」
狼「お前らは他当たれ!」
辰「・・・じゃ、俺も噛まれないうちに川合たちの所にでも行きますか」
狼「あ!待て辰哉!お前逃げるなー!!(かぷっ!」
辰「ちょwwwwwいたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!!!!」
・・・その先にはきっと、幸せが待ってる。
辰「(しかし、こうして見るとなんか、あの二人群れの中の狼みたいだな・・・上の者が下の者に噛み付いて自分との関係を知らせる)」
辰「・・・」
辰「あれ?だとしたら俺もその中に入ってる?」
辰「・・・あれぇ~~~~~~~~?????」
こうして、狼子の群れに2頭目の犬が加わったのだった・・・
~廊下・刹那~
美弥「円城寺・・・これ。返しそびれてたから」
刹那「?・・・ロケット」
美「・・・あ、ゴミ箱から拾った後、ちゃんと、拭いたから・・・さ」
刹「うん・・・」
美「・・・入ってるの、彼氏の写真?」
刹「・・・お爺ちゃん。家族の中で一番、可愛がってくれた人。死んじゃったけど」
美「そっか・・・」
刹「・・・」
美「その・・・今までごめん。・・・なんか、あたしでも協力できることあったら・・・相談、乗るから」
刹「・・・ありがとう」
美「・・・じゃ、また後で・・・教室で」
刹「・・・うん」
悪い奴ばかりじゃ、ないかもしれない。
オワタ
最終更新:2008年07月21日 02:46