「あ~、ここも売り切れかぁ…」
店の入り口に掲げられた看板を目にして、がっくりと肩を落とす。
「だから無理だって。学校が終わった時間じゃ残ってないよ」
小学校からの腐れ縁の長沢はそう言うが、俺はまだあきらめきれない。
「いや、まだ駅から離れたゲーム屋ならあるかも知れないし」
そう言って小走りに次の店に向かって歩き出した。
『DSliteあります』
その張り紙を見た瞬間、今までの疲れなど吹き飛んだ気がした。
欲しいと思ってから5ヶ月、やっと念願のDSを手に入れることが出来るのだ。
店に入るや否や、店主に絶対買うからと念押しして、ソフトのコーナーに向かう。
まずは定番の脳の力を鍛えるソフトと、あとは登場人物がコミカルなマ○オカートを選んだ。
会計を済ませ、とにかく早く遊んでみたい気持ちを抑えきれず、近くの公園で封を開けた。
脳の力を鍛えるソフトは意外と難しく、考える間もなく次の問題が出題される。
次々と出題される問題について行けず、目が回ってしまった。
気がつくと、公園のベンチで長沢に膝枕された状態でいたようだ。
「──っ!ごめん!なんかなさけないな、俺」
「ん?いいっていいって。それでな、このお礼といっちゃ何だけどな…」
そう言って長沢が俺に向かって差し出してきたのは、「お料理ナビ」
怪訝な顔をしてそれを受け取る。
「それ使って、俺に弁当作ってきてくれ」
長沢の顔は、少し赤らんでいた。
「これからは、女の子らしくならないとな」
最終更新:2008年07月21日 03:15