──今日も蒸し暑いな…
長く感じた梅雨も終わりの気配を見せ始め、気の早い蝉が鳴き始める季節。
太陽の勢いが強くなり、空には大きな入道雲がひとつしかない晴れた朝。
学校への道のりが陽炎でゆがみ、そのせいか自分がまっすぐ立っているのかすら判らなくなる。
「あっつー…」
そう口にしたところで、気温が下がるわけもない。すでにワイシャツは汗で身体に貼り付いていて気持ち悪い。
なんとか学校にたどり着き、教室の自分の席でへばっていた。
「どうしたんだよ、なんか今日は元気ねえじゃん?」
同じクラスの信二が声を掛けてきた。
「ああ、どうもこうも、こう暑くちゃたまらねえよ」
「もうすぐテストだぜ?体調崩したら大変だぜ、気を付けろよ」
信二はそう言うと、他のクラスメイト達がダベっている輪に入っていった。
始業のチャイムがなり、担任が教室に入ってきて、それに合わせて日直が号令をかける。
「きりーつ…」
立ち上がろうとして、その瞬間目の前が真っ暗になり、そのまま倒れてしまった。
──ん…ここは…?
目を覚ますと、周りをカーテンで囲まれたベッドに寝ているようだった。
──あ、保健室か。
ベッドの上で、半身を起こす。
窓が開いているのだろう。カーテンで適度に勢いが抑えられた風が心地よい。
ふと、耳元で耳障りな音が聞こえてきた。その音の元凶は、しばらく自分の周りをさまよい、そして胸元で止まった。
反射的に、その小さな吸血鬼を叩く。そのとき、自分の体が女性のそれになっていることに気が付いた。
最終更新:2008年07月21日 03:21