『まなとかな』続き

私には同い年の幼なじみがいる。
名を梶浦真奈美。
つい一週間前までは梶浦学。
女性経験の無いまま16歳の誕生日を迎えた学は女の子になったのだが、これまたえらく可愛い。
…可愛いと言うか、綺麗で可愛い。
「香奈ちゃ~ん!起きないと遅刻するよ~」
いや、既に起きてるんだけどね。
「いいも~ん!キスしちゃうから」
目を閉じていても、息遣いから真奈美の唇が迫ってきているのが分かる。
…これ以上はやヴぁい。
本気でキスをされかねない。
「待ちなさい。起きてるから」
瞼を開き、制止の声をかけると満面の笑みで
「おはよう♪」
朝の挨拶をする真奈美。
15年7ヶ月あまりを女の子として生きてきた私なんかよりも女の子っぽかった。

「…ん、おぁよ。…で、君はホントにキスをするつもりだったのかい?」
「…ふふふ、何言ってるの香奈ちゃん?」
そうだよね。
いくらなんでも本気でキスするわけないよね。
女の子同士だし…
「当たり前じゃない!王子様はお姫様のキスで目覚めるものよ?」
「誰が王子で誰が姫か言ってみなさい!てか、喋り方が不自然だっ!」
…と、まぁ。
真奈美が男の子の頃と何ら変わらないやりとり。
…いや、女の子になった分体が触れることが多くなっている。
「そんなことより香奈ちゃん。早く着替えないと、朝ご飯食べられないんじゃないかな?」
真奈美に言われ、時計を見れば7時40分。8時には出ないと間に合わないから、ゆっくりしていられない。
「五分で着替えるから下降りてて!」
「うん、分かった」

制服に袖を通しながら考える。
思春期に入り、お互いが男女であることを意識したとき、気にしなければ気づかないような薄い壁ができた。
だけど、学が女の子になったことによって私達の距離は、幼い頃と同じくらいまで…性別を意識しなかった頃と同じくらいにまで戻れたんじゃないか。
…いや、もっと近いかもしれない。
「大好きだよ、真奈美」
私はブレザーを羽織るとキッチンへと向かうのだった。

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最終更新:2008年07月21日 03:49
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