『つみきつね』中編

47 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 20:58:28.25 ID:3unSCnx50
前に今住んでいるこの町を“都会”と表現した
しかし前に住んでいた所に比べて、と言う意味
それを踏まえてこの町を表すならば………
そう、自然と調和した町とでも言っておこうか

「………ふぅ」

秋に入ったというのに私の額には汗が浮かぶ
元を考えれば彼女のこの一言

『週末、泊まりに来ない?』

その時は軽く請け負った
友達の家に行くなんて経験は今迄したこと無かった
病院にいたし

「……はぁ」

いや、正直嬉しかったよ?
それなりに心細い物もあったし
友達が出来たって実感できることだったし
だからこの一週間、楽しみでいられたわけだし

「………うわ」

神社って事は聞いていたよ
石段があることも聞いていた
でもね……

頂上、見えないんだけど

48 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:00:23.74 ID:3unSCnx50
「………………」
「………えと、ごめんね?無限廻廊の術掛けっ放しだった」
「…………10年分の病み上がりの身体には………責め苦だよ」

だから妖術とか普通に使ってるじゃん、君。『ファンタジーじゃあ無いんですから……』とか言ってた割りに
5km分ぐらい石段を登り続けた気がする
脚が笑ってる
座りたいのに、屈むだけで脚がつる
何だかまだ前に進もうとしている

「………えやっ」

ちょっとした腹いせにきつねちゃんの尻尾に飛びつく
身体を震わせていた

「ちょ、秋乃ちゃん!?」
「ふわふわー……」

狐が人間になった、といっても完全ではないらしい
私みたいに特殊な感性を持っている人には狐の耳と尻尾が見える
他が人間になった分狐の部分……主に尻尾に感覚が移っているようだ
品の無い言い方をすれば、快楽については性器を弄られるに等しいとか

「あの、ちょっと!」
「ゴメンねー……脚が動かないの」
「せめて尻尾離してー!!」


「…………何やってんの、お前」

49 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:02:43.38 ID:3unSCnx50
巫女姿のきつねちゃんが悶える姿に何かしらの情熱を持て余しながらも、何とか体力が戻ってきた
妙に成人指定っぽい絡みに入りそうな空気から助け出してくれたのは、神主さんだった
男の大人の人で、此方も狐の耳と尻尾をつけている

「アンタが秋乃さん?きつねから話は聞いてるよ」
「あ、初めまして」
「……正確に言えば、昔一度会ったんだがなぁ」


苦笑交じりに言う。恐らく神隠しに会った時だろう
きつねちゃんが持ち上げられ、左右に振られる
しかし別次元へと精神を昇華させたきつねちゃんは応じない

「おーい、起きろ」
「無理………力、入らない………」

恍惚の表情を浮かべていた

「…………駄目だなこりゃ」

物のように捨てられる
きつねちゃんは気にしてない様子
自分の身体を抱きしめるように腕を回し、目が空ろになっている
………やりすぎた?
他に巫女さんの姿見えないのに、唯一の巫女さんが使い物にならなくなっちゃった

「掃除、接客………まぁ、なんとなるか。少々面倒臭いが」
「あの………」

「お手伝い、しましょうか?」

51 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:04:19.78 ID:3unSCnx50
巫女服を着てみたいっていう理由が無かった訳じゃない
というか、それしか理由は無い
掃除ぐらいなら何とかなると思っていたけど………

『すいませーん、お守りくださーい』
「ハイ、ただいま」
『あのー、おみくじお願いします』
「はい!」
『必勝祈願のお守りって、どういう効果ですか?』
「えーと……か、勝つぞ!」
『彼女が他の男と会ってるみたいで………うぅっ』
「思いつめるのはよくないですよ?一度面と向かって話し合ってみるとか……」

………キツイ
神社の売店と敷地内の落ち葉集めの往復
無限階段の影響もあって、もう駄目です
しかも最後の方、明らかに巫女の仕事じゃないですよね
どちらかと神主、もっと言えば教会とかの仕事だよね

「………神社って、結構人来るんですね」
「ま、このシーズンはな。受験に向けてピリピリしてる頃だろうし」

いつの間に
そう言えば其処の地面に転がっていたきつねちゃんも消えている
布団に潜ったら尻尾刺激され放題で大変なことになるんじゃないのかな

(……………この人の尻尾弄ったら、どうなるんだろう)
「それやったら、石段から突き落とすから」

………おおぅ、心を読まれた?

53 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:06:23.19 ID:3unSCnx50
カポーン
と、言う擬音は誰が考えたのだろう。音の組み合わせが凄いよね
現在午後7時ほど
きつねちゃんに連れられて銭湯に来ています

「………あー気持ち良い」

既に湯船に使っているきつねちゃんに目をやりながら、髪に付いた泡を洗い流す
銭湯だと言うのに、貸切状態
狐のLet's try try try 摩訶不思議パワーによって一般人は入れない秘密の欲情、もとい浴場
神社の裏手の石段を下ったらたどり着くこの銭湯、経営してるおばあさんも狐だとか
自然に女体化したのはきつねちゃんだけで、他の人は人間に化けているだけらしい
違いが全然分からない
しかし、まぁ、なんというか………

「…………」

…………大きいなぁ
完全に負けてるよね
女体化したもの同士なのに、何でこんなに差が出るんだろう?
私平均よりも小さいぐらいだし………

「はぁ………」
「どーしたの?」

言いながら、背中に押し付けられる柔らかな感触
脇の下から二つの腕が通ってきて、私の胸を揉み始める

「秋乃ちゃんはこれでお悩みかなぁ?」
「や、やめ………んっ………はぁっ……!」

55 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:08:25.48 ID:3unSCnx50
「………いやー、堪能した」
「………もうお嫁にいけない」

きつねちゃんは達成感を漂わせながらコーヒー牛乳を飲んでいる。勿論、瓶
私はフルーツ牛乳で、神主さんは牛乳
たっぷり30分ほど使って揉まれた
まだ胸に感触が残ってる

「どう?大きくなった?」
「そんな早く変わる訳無いじゃないですか…」

のぼせたり未知の快感だったりで頭がよく働かない
とりあえずフルーツ牛乳は美味しい

「揉んだら大きくなるんだよ?女性ホルモンがどうとかで」
「揉んだそばから大きくなる訳じゃないでしょう……」

最早反抗する気力もありません

「違うの?」
「俺は知らん」

精神的におばあちゃんの様になってしまった私の襟を誰かが掴む
ひきづられるようにして、さっき出てきた不可視更衣室の方へ

「きっと揉むのが足りなかったんだね」
「いえっ、もう充分で……助けてくださーい!」

「………先、帰ってるぞー」

56 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:10:33.29 ID:3unSCnx50
木製の引き戸を開けてみると、心地良い畳の香り
神社内の一部屋、其処にしかれている布団へとダイブ
もふっと体が包み込まれる

「………疲れたぁ」

朝から階段5km踏破
神社敷地内によるシャトルラン
公共浴場貸切状態による、百合の花
etc
…………疲れたなぁ

「大丈夫?」
「……神社って精進料理じゃないんだね」
「それ、寺だから」

寝返りを打つ
そう言えば布団二つ並べるこの配置はどうなんだろう
新婚初夜でもあるまいし………?

「きつねちゃん?」

瞼越しの電灯の光が弱まったと感じる
きつねちゃんが四つん這いで私に覆いかぶさっていた
そのキメ細やかな白い腕が服の中に忍び込んでくる
きつねちゃんの表情に熱っぽさが加わり、艶が滲む
蘇る恐怖。fromお風呂

「ゴメンねぇ……ちょと我慢出来ないや」
「私は確かに元男ですが今女ですし!だから女の人とそういうのは、って……キャーー!!!

58 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:12:33.24 ID:3unSCnx50
チュン………チュン……
    ざわ………ざわ………

爽やかな朝だ
鳥の囀りで目覚めるのも悪くは無い………

「………」

昨夜の情事、その執拗な愛撫の感覚がまだ残っている
今何時?昨日は何時に寝たんだっけ………
隣ではきつねちゃんが幸せそうに寝ている
時折ピクピク動く狐耳が可愛らしい
昨夜の情熱が暴走したような彼女とはまるで別人だ

「…………」

衝動的に触りたくなったのを必死に押さえる
今起こしたらヤブヘビになりそうだ
…………少しだけなら

「耳を触ると、生殺しには丁度良い快感になる。まぁ、確実に起きる事は保障しよう」

やめた
狐耳と尻尾を生やした妙にシュールな姿の神主さんが、いつの間にか戸口に立っていた
金髪金目の人しかいない神社ってのもどうなんだろう

「おはよう御座います」
「あぁ、おはよう。と言っても昼に近いがな」

60 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:14:47.52 ID:3unSCnx50
朝食として用意されたのは、神社らしく純和風だった
畳に座って食べると言うのも良いものだね
既に足が痺れてますけれどもね。正座辛い

「きのうは おたのしみでしたね」
「ぐッ!」

危うく味噌汁を噴出しそうになった
何故いきなりDQ宿屋主人風味の口調?

「し、知ってたんですか………」
「まーな」

焼き魚の身をほぐしながら頷いていた
海苔と米の組み合わせの美味しさは異常

「アイツ、月に一回発情するんだよ」
「…………は?」

今、凄い事をサラリと言われた気がする
はつ………じょう………?

「昨日がその日だったしな。いつもなら俺が相手してるんだけど」
「……そこら辺、もうちょっと詳しく聞かせてもらいましょうか」

相手って……昨日のアレの?
アレを男の人相手にやるとは……
もったいぶる様に味噌汁を飲んでいる。非常にゆっくりだ

「君も好きだねぇ………そうだな、まず巫女衣裳の着衣では当たり前。他にも日中に参拝客が来たときとかに……」

62 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/02(日) 21:16:10.97 ID:3unSCnx50
「有る事無い事吹き込んでんじゃない!!」

入り口から膳が飛んできた。ナイスタイミング
有る事無い事って……実話含め?
今の「月一で発情する」を前提とした話だから……つまりは
凄い形相でコッチを見た

「今聞いた事、学校で………いいえ、もし何時如何なる状況においても口外したら……」
「したら………?」
「その時は、今度こそ純潔を奪ってあげる♪」

朝から何の会話をしてるんだろう、私達は
でも、こういうのって何か良いな
入院中は話してるより、物を書いたりしてる事の方が圧倒的に多かったからね

…………そう言えば、一週間になるのか
「まだ」と言うべきか「もう」と言うべきか
この一週間は、ベットの上で過ごした10年間より素晴らしいといっても過言では………

 ――――――ドクンッ

手から箸が零れ落ちる
胸に強い痛みを感じ、額に汗が浮かび上がって来た
息が不鮮明になって、体が地面へと崩れ落ちて行く
二人が不安そうな顔で私を覗き込み、呼びかけて来る
そんな二人の声が段々遠くなるのを感じながら―――

 私の意識は、闇に包まれた

~つづく~

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最終更新:2008年07月21日 04:28
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