『きつねこいぬ 中編』

12 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:22:03.71 ID:ssvByqAY0
「サイズはどう?」
「ちょっと、大きいかな」

女体化した次の日
私は女子用の制服であるワインレッドのブレザーに身を捧げている
紅色と黒色のチェックのスカートは少し短い気がする
男の時は気が付かなかったけど、履く立場になると些細な事が気になってしまう
余談だけど『女子用制服』で検索したらセーラー服よりブレザーの方が先に出てくると思う

「お姉ちゃんのお下がりだけど……大丈夫?」
「うん、あまり汚れてないしね」

目の前の姿見には、一人の女の子が映っている
肩にかかる程度の茶髪。黒縁のメガネ
着ると言うより着られているという表現の似合う、ブレザーとチェック柄のスカート
記憶にある男の自分より身長は二桁単位で縮んでいるように感じる
言ってしまえば小柄で、此処に文庫本でも合わせれば立派な文学少女のイメージだ

「コレが……私……?」
「馬鹿な事やってないで、早くこっち来なさい」

珍しく放ったギャグは、朝の喧騒に飲み込まれた
全く、もう少しゆとりを持って生きたいものだね

「あれ?学校行くの?」

恐らくは原稿の徹夜明けか……いまいち焦点の定まらない目で姉さんが聞いてきた

「とても私の妹とは思えないわね」
「その言い草はどーかと」


13 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:24:06.24 ID:ssvByqAY0
かつて、教室の扉を重苦しく感じたことがあっただろうか
否、無い
コレでも全うに生きてきたつもりで、登校する事にやましい事はしてこなかったはずだ
ならば何故今この目の前の扉がこんなにも重く苦しく感じるのだろう
其れは恐らく私自身が心のどこかで緊張をしているからだと思う

「すぅー……ふぅ」

女になれば何か変わるかな、なんて淡い期待を抱いていた
しかし現実はそう甘くない
唐突に性格が明るくなったり、考え方が大幅に変わったり
そんな都合の良い事は起こらない
結局、大事なのは自分自身だと思い知らされてしまった

「んー……よしっ」

覚悟を決めて引き戸を開ける
身長の所為か教室が大きく見えた

「おはよーございましっ」

………噛んだ
けじめと言うか決意と言うか、『元気よく挨拶をする』と決めていたのに
初っ端から躓いた
慣れない事はするもんじゃない

「……おはよう御座います」

ぼそりと言い直して、自分の席へと向かう
不思議と視線が私に集まっている気がした


14 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:26:33.42 ID:ssvByqAY0
(ああああああああああああ!!!)

やり場の無い羞恥心を心の中の絶叫でかき消そうと試みる
何をやっているんだろう、と言う冷めた自分がいて、余計に恥ずかしくなった
鼻の奥がツンと痛む
其れを堪えながら通学鞄を机にかけ、文庫本を取り出す
本の世界に引きこもろう。二次元最高

(そうよ私はさそり座の女……お気の済むまで笑うがいいわ)

半ばヤケになった心の中にイントロが流れてくる
本とアニメだけが友達さ

「あの……」
「え………あ、はい、なんでしょう?」

どうやら先程の視線は気のせいではなかったらしい
遠巻きに私を見ていたクラスメイト、その内の一人
特に話した記憶も無いその人が、私に話しかけてきた
……話した記憶の方が珍しいんだけどね

「君、転校生? 其処は一応座る人が……」

しどろもどろになりながら、彼は言った
私の頭はその言葉を図りかね……数秒後、理解した

私≠赤木 桃哉

こう思われている事を


16 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:28:12.28 ID:ssvByqAY0
「あぁ、それはですね……」
「オーイ、席着けー」
「あ………」

いつの間にか朝のHRの時間になり、先生が入ってきていた
余裕を持って登校した筈だが、扉の前でそんなに悩んでいたんだろうか

「……あぁ、赤木。前に来い」
「あ、はい」

教室の中に驚きの雰囲気が流れた
少なくとも私はそう思った
言われるがままに教卓の所へ立つと、先生が私の紹介を始めた

「皆うすうす気が付いてると思うが、また一人このクラスから女体化する者が出た」
「と言う訳で自己紹介、どうぞ」
「え? あぁ、はい」

一歩前に進み、こほんと咳払いを一つ

「赤木 桃哉改め、赤木 桃です。皆様、どうぞよろしくお願いします」

お辞儀の後、一歩後ろに
儀式じみてるのは否定しない
だぁから、アドリブが効かない人間なんだってば、私は

「んじゃ、席戻ってもいいぞ」

二本立ちするレッサーパンダのような気分を味わいながら席へと戻る
先生の話の最中、私に対する好奇の目線は絶えなかったと思う


18 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:30:18.02 ID:ssvByqAY0
しかし女体化したからと言って、周りの反応が劇的に変わる訳でもなく……

「そうして私は一人、中庭で朝食を取るのであった……」

いかん、モノローグが口に出てしまった
しかしまぁ、昨日までの自分を笑いたくなってくる
女になれば何かが変わるって? 人生はそう上手くいかないもんさ
『想像していたよりも、未来はずっと現実的だね』と何処かの誰かが歌っているしな

「………図書室行こう」

そういえば今迄説明する機会も理由も必要性もないので説明しなかったが
良い機会なので一応説明しておく

正直言ってしまえば、図書委員が図書室にいる必要はない
本の貸し出しの手続きは自分で出来るから図書委員を通す必要はない
何より利用者がいないからいても意味がないってのが現状
居たとしてもその役目は勝手に持ち出さないように見張り役ってのが大体の役目

私以外の図書委員が仕事をしないのも、こういう事実を理解した上での事だろう
それでも何故私が図書室に行くかって言うと……

「好きだからだよねぇ、この空気が……」

他からは切り離されたかのように、時間の流れが違う空間
いつもの回転座椅子に座ると、いつもより大きく感じる

(こういう所は、やっぱ、変わったんだなぁ)

栞を挟んであった本を手に取ると同時に、本当に珍しい事に、来客があった


20 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:32:16.17 ID:ssvByqAY0
「あ、どうも」
「えぇ、こんにちは」

私以外の人間が珍しく開けた扉の向こうには、比較的記憶に新しい顔があった
一昨日の昼休み、私に話しかけてきた内のショタっ子の方だった
最もその時は男だったから、向こうにとっては初対面なんだろうけど

「あの、入っても?」
「はい、構いませんよ」

見るもの全てが珍しいかの様にしきりに辺りを見回している
この図書室独特の一見さんお断りな空気も人が来ない原因だろうか
もっと時代はオープンシェアを求めているのか? ん?オープンシェアって一体何だ?

「………あのー」
「…え? あ、スイマセン。少し考え事してたもので」

「“Ray Out”って本、何処にあるか分かりますか?」

………はて、何処かで聞いたような


「アレですね」

最奥に並んだ本棚の一番上の段の右から4番目
記憶にあるとおりに、本は其処にあった
見つかったは良いが、問題が1つ

「………届きませんね」
「………そうですね」


21 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:34:13.88 ID:ssvByqAY0
当然と言えば当然になるが
男の頃でさえギリギリで届いていた高さの本棚に、女になった私は届かない
実感にして20cmぐらい身長が縮んでいる
女子の平均身長を少し下回る程度か
隣に居る男子、来訪者のショタっ子も同じぐらいだ
つまり手が届かない

「………脚立、何処にやったっけなぁ」


男の時はギリギリとはいえ手は届いていたので
脚立を使う機会がなく
何処に仕舞ったのかも曖昧で
見つけたのは10分ほど図書準備室を引っ掻き回した後だった

「お手数かけてすみません」
「いえ、こちらの不手際ですし………」

三段程度の小さな脚立に上れば、何とか背は届いたようだ
ようだ、ってのは上ったのは私じゃなくて、来訪者の彼の方だから
何故かその脇で私はその様子を見ている
脚立を渡したら役目は終わった筈なんだけど………なんでだろう
あえて理由をつけるなら、この来訪者に何らかの興味を持ったからだろうか

「ところでその本、何か重要なんですか?」

彼の必死な様子から、ふと訊いてしまった
確かアレは漫画の週間雑誌(もしくは月間)みたいなもので、それほど価値があるものには思えない

「………普通に人に取っちゃ、それほど重要でもないかなぁ」


22 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:36:11.27 ID:ssvByqAY0
出来れば聞かないで、と言う雰囲気が出ている気がする
そして同時に「是非言いたい」ってオーラも出てる気がする
矛盾してるこの二つ
しかし何故か理解できてしまうこの二つ

「えっと、ちょっと長くなるんだけど……」

彼の言葉をそのまま引用すると長くなるし、途中で色々と注釈をつけることになる
なので要点だけ絞って言わせて貰おう

彼は重度の漫画好きらしい
そして彼の探していた雑誌は、かなり人気のあるものだ
その中でも、とある年のとある月に発売されたものは人によっては0を5つつけるほどの価値があるとか
何故ならばその雑誌に掲載された漫画が過激な描写があるとかで、発売後すぐ回収騒ぎになったからだとか

無論、その気持ちは理解できる
誰だって希少価値のあるものはどこか特別に感じるものだ
其れが突如自分の身近に現れたら、そりゃあ欲しくなるだろう

(………いいなぁ)

こんなに熱中できる事があるなんて
後この人、凄く美人な彼女さん連れてたよね。彼女かどうかは定かじゃないけど
本当人生楽しんでそうだよね。あぁ羨ましい

………彼女といえば
あの狐耳と尻尾は何かのアクセサリーだったんだろうか?
良い機会だし、聞いてみよう

そう思ったのがまずかった


24 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:38:13.72 ID:ssvByqAY0
「ん?」

ようやく手に入れた本に意識が奪われていたのか
それとも私の呼びかけの所為か
足場の狭い脚立の上でこちらを振り向いた彼の身体が、ぐらりと揺れた
そのままバランスを崩し、倒れ落ちる

――――私の方へ


ガッシャーン!!

………などと漫画的な効果音を響かせ、脚立と彼が倒れた
無論、私も下敷きに

「たた……いっつぅ……」

背中にひんやりとした地面の感触
そして、女になって膨らんだ胸部に、じんわりと人肌の体温が

もにゅん

彼の腕が動き、慣れない感覚
ようやく彼は起き上がり、自分に起きた出来事を知った

「え……あぁ!ご、ごめんなさい!」
「いや、別に……」

「千春ー、お目当ての物はみつか………った?」


26 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:40:18.18 ID:ssvByqAY0
良いですよ、と言おうとしたが、見事にさえぎられた
声の主は一昨日の金髪少女
やはり狐耳と尻尾が生えていた
目の錯覚じゃあないのか、やっぱり

ところで此処でクイズです

Q,今私達の体勢は?
A,私が仰向けになって、その上に彼が馬乗りになっているな
Q,服装は?
A,倒れた拍子にボタンがあいて、丁度着崩した感じになっているな。後胸に手が
Q,その場面だけ見たら、どう思うかな?
A,彼が私を襲っているように見えるな

………全問正解。さすが私

「………何やってるのかな? 千春」
「いや、あの、きつねさん。コレは偶然こうなったと言うか多分モノスゴイ誤解と言うかですね」
「問答………」

きつねと呼ばれた女生徒は、千春と呼ばれた男子生徒との一気に間合いを詰めた
そしてそのまま千春……さん?君?まぁどっちでもいいや
千春さんに某タマ姉よろしくのアイアンクローをがっちりと決めていた

「むよぉーーーー!!!」

ギリギリギリと頭蓋骨が軋む音
バタバタと振られる千春さんの手脚

きつねさんの尻尾は、ぱたぱたと左右に振られていた


28 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:42:08.51 ID:ssvByqAY0
「………と、言う訳なんです」
「………本当?」
「はい、本当です」

このまま放置しておくと千春さんの頭部にこの先取り返しの付かないぐらいの損傷が出来そうだった
なので、事情を話すと以外に簡単に開放してくれた

「………千春、ごめん」
「いいよ、多分あの状況じゃ仕方ないし」

ハハ、と笑う千春さん
先程まで生命の危機に扮していたというのに、タフなお方だ
いや慣れているのか? 良くぞその境地まで精神を昇華させたものだ

「どうやら貴女にも迷惑かけちゃったみたいですね……えーと」
「あ、桃です。赤木 桃」
「桃ちゃん………って、赤木ってまさか?」
「はい、女体化しました」
「あ、やっぱりそうなんだ」

何がやっぱりなのか。唯一働いてる図書委員だからか?
いきなり「ちゃん」付けだけど、不思議と嫌ではない

「それじゃあ、お邪魔してすみません」
「いえ、図書室は皆のものですし」

軽くお辞儀をして、振り返るきつねさんと千春さん
図らずも私の目の前に来る尻尾
沸々と沸き立つ好奇心
気が付けば私は、既に行動を開始していた


29 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:44:11.69 ID:ssvByqAY0
全く乱れのない毛並みを持つ、黄金色の尻尾
その中腹辺りへと手を伸ばした
ふわ、と言う雲のような柔らかな手触り
温かみを持って、触っていると少し安らぎが与えられる
こんな寝具があったら、ぐっすり寝られるだろうなー……

「ひゃんっ!?」

針のように刺さる高い声
ビクン、と脈動する尻尾
一時的に身体を硬直させ、ヘナヘナと地面に崩れ落ちた
地面にへたり込んだきつねさんの肩は微妙に上下して、息が乱れている

………私の所為か!?

「ど、どうしました!?」
「いや、あの、今………千春?」
「え? 僕は何もしてないけど……」
「じゃあ……貴女?」

きつねさんのその金色の瞳がじっと私を捉えた
頬が紅色に紅潮しており、何処か扇情的だ
女である私にも、何かイケナイ衝動を湧き上がらせる
2日前まで男ではあったけど

「その尻尾………アクセサリーじゃなかったんですね」

妖怪変化かはたまた土地の神様か
其れは定かじゃないけれど
赤木 桃、高校1年の秋から冬にかけての季節、衝撃の出会いがありました


30 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:46:18.85 ID:ssvByqAY0
「―――てな感じで、元々狐だったのに人間になっちゃったの」
「はぁ……生命の神秘ですね」

中庭にて珈琲片手に、きつねさんの女体化談義
元々狐だったきつねさん
巷で流行の「女体化現象」とやらで、人間の女性になったんだとか
……おおよそ30年位前に
いやぁ、大先輩ですね。留年並みの

因みに何故中庭に移動してるかと言うと、「図書室だと誰かに聞かれる恐れがある」からだとか
其れは無いと太鼓判を押す事も出来たが、なんか悲しいので辞めておいた
中庭なら聞かれてもゲームの話とかで誤魔化せるし

「………信じるの?」
「嘘なんですか?」
「いや、嘘じゃないけど……こんな滅茶苦茶な話、簡単に信じてくれるとは思わなかったから」
「だって、実際に尻尾とか見えちゃってますし…それに」

珈琲を口に含みながら、姉さんの顔を思い浮かべる

「もっとメチャクチャな人、知ってますから……」

そういえば、何故急にそんな霊感的なものが備わったのか?
きつねさんの話では耳と尻尾は普通の人には見えないらしい
当たり前だ。街中に動物の耳つけてる人が居たらニュースになるわ
東京あたりの某所ではよく見かけるらしいが

「まぁ、詳しく知りたい人は『つみきつね前~後編』でも読んできなさい」
「何の話ですか?」


31 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:48:12.15 ID:ssvByqAY0
結局その後は昼休みが終わり、解散
放課後また集まるって訳でもなく帰ってきた

「母さん、姉さん居る?」
「さっきまで友達が来てたみたいだから、また部屋にカンヅメでしょ」

私の姉さんの仕事は、無論両親も知っている
と言うか、ファンだ。二人とも
本当ならもっと紆余曲折あっても良いかもしれないが、進んでGOサインだったらしい
自由な家族だ、本当

「姉さん、入るよ?」
「はいよー」

ドアノブを回して部屋に入ると、其処は別世界だった
少なくとも、私の部屋よりは

地面に放り出されたボンテージに鞭。そして縛り用に手入れされた麻縄
マニアックなプレイに対応する低温度の赤いろうそく
クローゼットの扉が開いて、セーラー服やバニーガールの服装が顔を覗かせる
無造作に放り出されたダンボールの中には用途が想像付かない大人のおもちゃ
本棚には普通の漫画もあるが、殆どは18歳未満閲覧禁止な内容
その一番奥にベットがあり、その向かい側の机で姉がパソコンに向かって熱心にキーボードを叩いている

とりあえずベットに腰掛け、部屋の惨状を見回す

「…………今日は何したの?」
「バニーガール姿でパートに勤しむ貧しい女子高校生と、影から支える足長おじさんかなー」

………どんなシチュエーションだ


32 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:50:22.11 ID:ssvByqAY0
やはり1つの非常識が現れたと言って、他の常識が覆るわけではないらしい
姉さんを無茶苦茶だとは言ったが、其れはやはり常識の範囲内だった
変わらないと言う事は、何処か安心もする

「………ねぇ、姉さん」
「んー?」
「出来れば、笑わずに訊いて欲しいんだけどさ」
「うん、言ってみ」

「……いきなり妹が、『狐の尻尾と耳を生やしてる人が居た』って言ったら、どう思う?」
「なんも」
「あら」

拍子抜けだ
結構勇気を持っていったのに
ギャグだと思われたか?

「そっかそっか、桃も見えるようになったかー」
「はい?」

こちらを向かず、うんうんと頷いてる
桃も? 「も」つったかこの人。「ももも」つったか。何がなんだか

「も、って事は………?」
「うん、私も見えるよー。て言うかいつも呼んでるカップル居るじゃん? 彼女の方は犬耳生やしてるよ」

………驚天動地だ。いやさ青天の霹靂? 霹靂ってのは雷を指すらしい。青空なのに雷落ちたらそりゃ驚くよね
どうやら今まで私が常識だと思っていたものは、既に非常識のラインを余裕で天元突破していたらしい
見方を変えてみれば、非常識や非日常なんて物がこんな簡単に見つかるとは
どこぞの暇してる団長さんにでも教えてあげたい気分だよ


33 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:52:08.66 ID:ssvByqAY0
「ほら、お母さんが巫女さんでしょ?元々は」
「確か、そんな話を聞いたよーな……」

何度か実家に行ったが、見事な和風建築だった
地元のお祭りでは巫女として舞を舞った事もあるとかないとか

「その所為か不思議な物見えてたらしーからね。私達はその血を継いだって訳でしょ」
「でも、男の時は見えなかったんだけど」
「うん、私も。其れは多分アレでしょ」
「アレ?」

「ゆーれいとかも、可愛い女の子に見て貰った方が良いからじゃん?」

「………訊いて損した」

何かもう、どっと疲れた
やっぱり霊感なんてあっても、漫画みたいな事にはならないか
いや、ならない方が私としては嬉しいんだけど
でもちょっとは興味あるかなー……なんて
ハッ!コレが流行のツンデレか!?

「桃ちゃん、明日学校休みだよね?」
「うん、服とか買いに行くつもり」

「おねぇ~ちゃんも、一緒に行って良いかなぁ?」

………有無を言わさず付いて来るつもりだ。あの目は
断っても後をつけてくるつもりだ。輝いてるもの。爛々と輝いてるもの
しかしよく考えたら私は女の子の服とかぜんぜん知らない訳で
気が付いたら頷いていた


34 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:54:09.74 ID:ssvByqAY0
「それじゃあ、しゅっぱーつ!」
「ぱーつ!」

休日だと言うのに、妙にテンションが高い二人
今この場に居るのは4人
私と姉さんと、そして姉さんがよくモデルにするカップルのお二人である

彼氏さんの方は寡黙と言うかクールなお方で、整った顔立ちには無駄なものが殆ど無い様に感じる
例えるならそう、名工の作った日本刀というか
見た目も良く、芸術品のような美しさを兼ね揃えていると言うか……質実剛健?

彼女さんの方は彼女さんで、これまた可愛らしい人だ
桜の木をイメージさせるような優しくふんわりとした空気を持っている
姉さんと同い年のはずなのに、まだ高校生に見えるほどだ
それに何か甘い匂いがする
女性の理想形みたいな人だ

とにかく、美男美女のカップル、という訳だ

因みに私の服装は、赤地に白の模様があるTシャツと、ジーンズパンツ
その上から紺のジャケットを羽織、ベレー帽風味の野球帽をかぶると言う簡素なもの
男物だから、少しぶかぶかだ。下着は姉から借りた

「で、何処に行くの?」

私の疑問は天に溶け、姉さんと彼女さんは先へ先へと進んでいく

「………ドンマイ」

彼氏さんが同情するように言ってきた


35 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:56:12.00 ID:ssvByqAY0
『技のデパート サカシタ』

何処の力士だ
と突っ込みたくもなるわな、そりゃ
全国にチェーン店を持つ大型デパート
わざわざ電車に乗ってまでやってきた

「私、そんな手の込んだのじゃなくて良いんだけど」
「とっつげきー!」
「きー!」

……うん、分かってたけどね
本当は私の為じゃなく8割方自分の為だって事ぐらいね。うん

「…………ドンマイ」
「…どうも」

普段は彼氏さんがこの役回りなんだよなぁ。お気の毒に

「「………」」

あ、何か今心が繋がった気がする
同じ境遇に対する同族意識というか

「おーい、二人ともー!早く早くー!」
「ハーイ……」
「今行く」

言いつつ、足取りは軽い
まぁ、何だかんだいって楽しみにしてるんだよね、私


37 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 00:58:07.47 ID:ssvByqAY0
「コレなんか良いんじゃないでしょうか?」
「んー、ちょっと地味じゃない? 其れよりこっちを合わせてさ……」
「わぁっ!凄く良くなりました!」
「でしょでしょ?」

デパート内の洋服売り場で繰り広げられるファッションショー
コーディネートは姉さんと彼女さん。名前は戌井さん
モデルと言うか被害者はこの私、赤木 桃でお送りします

「リカちゃん人形の気分……」
「世界一人気の人形と自分を同等に扱うか……なるほど、あの人の妹らしく、自信家だ」
「いや、そういう意味じゃないんですけど……」

真面目な顔をしてボケる彼氏さん。その名を鳥野さん
今回は自分に被害が及ばない為か、何処か嬉しそうだ
この人の表情の変化は、最近若干分かる様になってきた

「じゃぁー……次はコレとコレ!」
「いや、あの」
「問答無用!さぁ、試着試着!」
「さぁさぁー」

姉さんと戌井さんの迫力に押され、試着室に押し込まれる私
既に何着も試着を済ましている……そのうちの数着は姉さんのお眼鏡にかなっている
出かける際に母親から諭吉さんを何人か受け取っているはずだから、軍資金に問題は無い
ただ……私の服なのに、私の好みが反映されて無い気がする
好みなんて殆ど無いけど

「ふぅ………」


39 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:00:16.85 ID:ssvByqAY0
試着室の鏡に、自分の姿が映し出される
薄紫色の下着をつけた少女
贔屓目を抜きにしても………まぁ、可愛いんじゃないかな
女の子特有の白くてすべすべな肌
丸みのある少し小さめの顔
アンバランスな黒縁のメガネ
髪質も男のときとは違い、さらさらと流れるようだ

姉が選んだ服に袖を通すと、鏡の中の女の子も同じ動作をする
女になって既に三日目
女の身体に慣れるには、少し時間がかかる
普段の生活ではあまり意識しないようにはなっているが、こう客観的に見るとどうも

「へぇ」

思わず感嘆の溜息が漏れた
鏡の中の自分に
今来ている服は、制服のブラウスのような感じ
中央のボタン付近と袖口にフリルがあり、シンプルながらも女の子らしい
体型がはっきり出る感じの服だが、幸いな事に女体化の際に変化した身体には見事にマッチしている
スカートもスカートで黒地のシンプルなもの
ただ二段重ねのフリルが付いており、見た目のボリュームの割りに軽い作りになっている
しかし、スカートは未だに履きなれないな……制服といい

「うむ」

鏡に映った自分を確認する
見事に女の子だった

「………髪、伸ばそうかな」


42 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:02:19.04 ID:ssvByqAY0
勝手な主観だが、この服には長髪の方が似合いそうだ
後はコンタクトにしてみるとか……うーん、やっぱ怖い

「着替えたー?」
「あ、うん」

返事を聞く前に試着室のカーテンがシャっと開く
ちょっと待て、まだだったらどうするつもりだった

「あらら……似合ってるじゃない、桃」
「そ、そう?」
「はい、とても良くお似合いだと思いますよ~」

「あ、店員さーん」

この服で服のノルマは達成したのか、コレを着たまま清算を済ます
他の服と同様着てきた服も紙袋に入れ持ち運ぶ事になった

「イヤー、格段に女の子になったNe!」

どこぞのマスコットの様に舌を出した
何でこんなにハイテンションなんだ
しかし、意外と疲れる
早く帰りたい……

「あぁ、ちょっと。何処行くの?」
「え?」

帰りかけた私を、姉さんが引きとめた
もう買い物終わったんじゃ?


43 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:04:09.25 ID:ssvByqAY0
「馬鹿ねー、他にも下着とかパジャマとか、色々あるでしょ」
「あ」

流石経験者、盲点だった
と言う事はあれか、またファッションショーの始まりか?

「んー、やっぱニーソックスは必須よね。黒の方が良いかしら?」
「こっちの白も良いと思いますよぉ?」
「この縞模様も捨てがたいと思うがな、俺は」

……なーにちゃっかり参加してやがりますか、鳥野さん

「おや、鳥野君はしましまが好みかい?」
「そ、そうなんですか!? ……すみません、私、今迄気が利かなくて」
「多大な誤解を生んでそうだから言っておく。縞々“も”好きなだけだ」
「よし、じゃあ黒、白、縞々の三つね……縞々は何色が良いと思う?」
「水色に決まっているだろう」
「何か物凄い勢いで貴方のイメージが崩れていくんですけど」

その後も何かヒートアップした鳥野さんを加えた三人組は、私そっちのけで服を選んでいく
其れが終わったのは太陽がそろそろ沈み始める時刻
因みに始めたのは太陽が南中するぐらいの時間

三人組の熱がようやく冷め、電車に乗り、ようやく帰ってきた。お腹がすいた
この買い物で何人の福沢諭吉が犠牲になったかは知らない
ただ確かなのは、紙袋4つ分の買い物をした事だ

「………それで、荷物もちは俺の役目な訳だな。例によって」
「と言うか、そのために呼んだといっても過言じゃないわ?」
「疑問系にするな」


45 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:06:10.20 ID:ssvByqAY0
「………で、お姉ちゃん達は他に買い物があるので、先に帰ってて?」
「ハーイ」

そう言いつつ、三人組はどこかへ消えていった
あの面子で私を外すって事は………仕事関係か。また新しい衣装が増えるのか

「さて、どうしようかな」

いつもならまっすぐ家に帰るんだけど……
今の私は、何故か何処かに街中に行きたいと言う欲求があった

(新しいおもちゃを見せびらかしたい、子供の心境かな)

要約して言えば、見て欲しいのだ、自分を
なんというか、男の時とは変わった自分を
其れは多分自己満足だし、外見以外変わってない気もする
しかしこの湧き上がる欲求を抑えられない

気が付けば、足は勝手に歩き出していた

気持ちが違えば、同じ道でも色々と発見がある
ゲームセンター、美容室、ファーストフード店、色んな店の集まった建物………
今迄興味を示さなかった建物が、新鮮に見える
男の時はせいぜい本屋ぐらいしか記憶に留めていなかった

(変わりたいなら、自分から進んで変わらなきゃ)

今日の買い物で、其れを理解した気がする
服装を変えるだけで、まるで違う自分になれた気がする
要は、気の持ちようって事なんだろうな、きっと


46 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:08:06.79 ID:ssvByqAY0
男の時の私は、「変わりたい」と言いつつ何もしていなかった
女になれば変われるかなー、なんて非常に他力本願な事を考えてしまっていた
『明日から本気出す』とか言ってるのと同じ事だ、それじゃあ

(其れを気づかせてくれたって事では、姉さんに感謝かな)

おもちゃにされてただけの気がしないでもないが
ていうか、絶対そうだが
まぁ気の持ちよう気の持ちよう

「あ、」

ふと、脳裏を掠めた映像
ながーい石段を上った先で、聳え立つ鳥居
即ち、神社
女体化する前に見た不思議な夢
なぜかは知らないが、唐突に行ってみたくなった

そして10分後、後悔した

「……ぜーっ………はーっ」

運動不足が否めない
石段を登りきる頃には、私の心臓は張り裂けそうだった
コレは精神的な理由ならロマンティックな青春なんだろうが、生憎身体的な理由
ていうか、この石段こんなに長かったっけ? なんか不思議パワー働いてるんじゃないの?

「……スゥーっ、はぁー」

目の前には、夢と記憶、そのどちらとも違わない神社の風景が広がっていた


48 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:10:19.65 ID:ssvByqAY0
鳥居に掛けられた注連縄
鳥居の両脇では、お稲荷様の像がお出迎え
日本全国何処にでもある、神社の風景だった

「お邪魔しまーす……」

誰に言うでもなく、呟いた
鳥居から一歩中へ入ってみる
………誰も居ない?

普段、神社にお参りに来る人なんて居るのだろうか、そういえば
にしても、巫女さんとか神主さんとか居ないのかな?

(………お参りしとこ)

此処まで来てそのまま帰るのも癪なので
五円玉を取り出し、賽銭箱の前へ
何かちゃんとしたお参りの方法とかがあるらしいが……生憎そんなもの知らない
とりあえずガラガラと鈴を鳴らし、両手を合わす

(……頭が良くなりますように、てのは違うよな。うーん……友達が出来ますように?)

良く考えたら、お参りと願い事って違うよね
まぁ、友達が出来ますようにって祈っとこう
………いや、別に信じてるわけじゃないんだよ? 念のためって言うか、ほら

「あ、桃ちゃん?」
「ふぇ?」

予想外の呼びかけに、つい変な声が漏れた


49 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:12:12.39 ID:ssvByqAY0
「きつね………さん」
「あ、名前覚えててくれたんだ」

其処に居たのは、金髪の巫女さん。というかきつねさん
日本の着物は言うなればスレンダーな女性が似合うらしいが、きつねさんが着ても妙にマッチしている
そして相変わらず耳と尻尾がある
尻尾を出すためか、巫女服の赤い方はスカート型、それもギリギリのミニスカート
正直目のやり場に困る

「おい、きつね。何をサボって………其方の方は?」
「あ、兄さん。私が話してた桃ちゃんだよ」
「あぁ、霊感が備わったとか言う………なるほど、確かに似てるな」
「は?」
「いや何、こっちの話だ。気にせんでくれ」

白と赤のズボン型袴の神主さん登場。……ん?袴でよかったか?
こちらもきつねさんと同じく金髪金目
そして耳と尻尾も健在。どうやったのか外にでている
長身で服の上からでも分かるしっかりとした体付き
鳥野さんとはまた別のタイプの格好良さを持っている
言うなれば日本人的な格好良さと、外国人的な格好良さというか
多分この人も狐だから、日本生まれだろうけど
何だろう、髪とか目がそういう印象を持たせるのだろうか

「どうしたの?………アレ、その人確か……赤木、さん?」

作務衣を着た千春さん登場
制服より若干大人びて見える。耳と尻尾は………無いな、流石に

それにしてもなんだなんだ、非日常のバーゲンセールだな最近は


51 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:14:28.11 ID:ssvByqAY0
「いえ、お構いなく……」

目の前に出された薄い琥珀色の液体を、ゆっくりと口へ運ぶ
お兄さんの『まぁ、お茶でも飲んでいってください』と言う言葉につられて、つい頷いてしまった
通された部屋は恐らく客間の、畳敷きの部屋
私の部屋以上に余計な物が無い
人によっては緊張するのだろうが、私は何故かリラックスしていた
自分の部屋と似ている状況と言うのが理由だろうか
末期だな

「そういえば、何か用があったの? 登るの大変でしょあの石段」
「……なんとなく、かな。何か急に来たくなって」

きつねさんと千春さんも慣れたもので、見事にくつろいでらっしゃる
しかし何だ。カップルの二人と同じ部屋に居ると、私がお邪魔虫の気がしてならない
空気を読んで出て行くべきか? べきなのか?

「…………あ、其れ小説ですか?」
「うぇ?………あぁー…うん」

きつねさんの傍らに置かれている、ブックカバー付きの本
カバーのお陰で表紙が見えないが、小説と言う事は分かった
しかしこのきつねさんの反応、気になる
何か、しまった、とでも言いたげな
とても気になる

「どういう小説を読むんですか?」
「えぇと……あの、SFとか、推理物とか、かな」
「へぇ」



52 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:16:18.96 ID:ssvByqAY0
しかし私、何時になく饒舌だ
服装を変えた効果か?

「その本もそのジャンルですか?」
「え、いや、コレは違うって言うか……その」

その時
カバーから本が滑り落ちた

本を持っている人なら誰でも経験した事があるだろう
こう、カバーから中身が滑り落ちると言う現象
今其れと同じ事が起こったのだ

「………『調教日記~僕の妹はM奴隷~』?」

きつねさんがしまったという表情と動作をする
千春さんが同じく、やれやれと言った表情と動作
官能小説だ、完っ璧に官能小説だ
そしてこのライトノベルズみたいな題名と、『染井吉野』と言う作者の名前

「………あぁ、姉さんの本ですか」
「えぇ!?」

私の呟きに、きつねさんが食いついた
一瞬にして距離を詰められる

「も、桃ちゃんのお姉さんって……染井吉野さん?」
「えぇ、まぁ。そうですが」
「え、で、でも、苗字違うよ?」
「いや、其れPNですからそりゃあ……」


53 :『きつねこいぬ 中編』 ◆FP9rUXa9Eo :2008/05/18(日) 01:18:10.47 ID:ssvByqAY0
姉さんの小説、本当に人気なんだな。一部の人には

「そっかぁー……まさか先生の知り合いがこんなに近くに居たなんて……」

姉さんを先生って呼ぶ人、始めて見たよ
ファンレターとかは何通か届いていたけど

「やかましい。何を騒いでる」
「あ、兄さん!聞いて聞いて!」

お兄さんが芋羊羹を持ってきた
千春さんは優雅に茶を啜っている

「桃ちゃんのお姉さんって、この小説の作者なんだって!」
「ほぅ……?」

子供のように無邪気にはしゃぐきつねさん
明らかに眼光が鋭くなったお兄さん
何か嫌な予感がする

「其れは其れは……ちょっと詳しい話を聞こうか?」
「いえ、あの、私、そろそろ時間がー……」

「何、今日は泊まっていくと良いさ。友達の親交を深める意味でもね? ははっ」

エライさわやかな笑顔で言われた。その裏に何か暗いオーラじみた物を感じた
有無を言わせない、圧倒的な圧力。すっごい怖い

とまぁ、こんな感じに。なしくずしに。私の初めての友達宅へのお泊りが決定しちゃった訳である
―続く―

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最終更新:2008年07月21日 04:30
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