『たとわた』小学生編2

67 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 04:57:31.10 ID:RdDtTp6k0?
登場人物

天河 桜…女。小学1年生。主人公

天河 百合華…主人公の姉。元男

一ノ瀬 綾乃…クラスメイト。女

二之宮 浩太…クラスメイト。男

三空 都…クラスメイト。女

前回までのあらすじ

体が縮んでしまっていた!

68 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 04:57:55.79 ID:RdDtTp6k0?
「俺の妻と娘になってくれ」

姉の友達である医者の彼がそんな事を言った
『初号機に残されてる予備電源あと185秒。それだけあれば本部の半分くらいは壊せるよ』
張りに怒りに狂い
『スペシャルで2,000回で模擬戦でバーサーカーソウル追加攻撃!』
と言った感じに彼をフルボッコにしたことで新たに姉の性癖を確認させられた
その後弁解におおよそ2時間ほどを費やし私が理解したのはとどのつまり、旅行のペアチケットが当たったと言う物だった
検証で当たったらしいがこれがまた曲者で、ご家族優待だか何だか知らんが独身より夫婦、夫婦より夫婦&子持ち……
と言った具合にサービスが向上するんだとか
温泉旅館と言う所に魅力を感じたのか即OK
もしかしたらこれ口実にした口説きの一種だったのかもしれんが、姉には回りくどいのは通用しないのは既に身を持って知っている
もしそうだったとするのならばご愁傷様というほか無い
憐憫の情もそこそこに、結構ノリ気で姉の買ってきたパンフレットを読むと結構有名な場所だと言うことがわかった
温泉旅館は決まって和風なイメージがあるが此処も例に沿って和風な感じだ
そして何よりの売りがこの季節は雪景色を見ながらの露天風呂だとか
私も少しは楽しみにしていたのは認めよう


なんて考えていたのは二日前、つまり冬休みに入って直ぐの事

「元気ねーな。どうかしたか?」
「……寒いのは苦手でな。どうも」

何故こんなに悲観的なのかって?

犬か猫かで問われれば、私は猫だからさワトソン君

69 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 04:59:16.63 ID:RdDtTp6k0?
後ろ向きな冒頭とは時間がまき戻った形になるが、旅館の一室
妙なハイテンションで温泉制覇を目指す姉と医者の彼。設定上は母と父
それらに流されることなく露天風呂を楽しんで湯上りな小学生。設定上は娘

「………あー、極楽」
「仮にも小学生が、温泉→マッサージ器のコンボはどうなのよ?」
「そうだぞ、子供は外で遊ぶもんだ」
「………私は貴方達とそう歳は変わらないんだが………」

コーヒー牛乳片手のつやつやお肌で説教されても困るんだが
この人たちは本当満喫してるな
私にとっては一目を気にせずゆっくりできる機会なのだから、放っておいてくれ……

「あれ?桜ちゃん?」
「何でいるんだ?」

………あぁ、世界の見えざる手はどうやら私の休息はお気に召さないか
平凡な道から外れてしまってる私を嫌うのは極自然的なことかもしれんが………何を言っているんだろうな

「………二之宮と三空か」

前者がツンツン髪の活発そうな少年
後者が背中に掛かる程度の髪を揃えている大人しそうな少女
小学校に上がる前からの唯一の知り合いでもある

「今から外へ行くんだけど、桜ちゃんも来る?」

本心としては凄く断りたかったが、背中を冷たい視線が射抜く感覚がする

「…………着替えてくるよ」

70 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 05:00:24.65 ID:RdDtTp6k0?
二之宮と三空は共に片親らしい
二之宮の母と三空の父を見たことがあるが、親だとに納得できた記憶がある
そして子供が幼馴染と言う関係からも解るように親同士の交流もそこそこにあるようだ
その親が懸賞でペアチケットを当て、その事でもう片方を誘うのは自然な流れと言えるか
結局の所、この二人も私と同じ経緯で此処にいるわけだ

「「雪の精霊29柱!魔法の射矢 連弾・雪の29矢!!」」

元気な事だ
1対1じゃ合戦とは言わないんじゃないか?
にしても寒い。雪が降ってるから当たり前か
私達は今、広めの公園で雪合戦に勤しんでいる
何時の間にこんな公園を見つけたのか甚だ疑問は残るが、子供の遊びに対する情熱を侮ってはいけないのだろう
来る途中で雪景色に見惚れながらも、遊び場所の目星を付ける姿が容易に想像できる

………矢張り下半身にも何か防寒具をつけて来るべきだったか
スカートにニーソックスだけだとかなり寒い
萌とか何とか言っても、隠すことでの価値もあるだろうに
にしても、どうしても保護者目線になってしまう
たまには歳相応に羽目を外すのも良いようなものだが
とは言っても実際の年齢はにじゅうわぷっ

「…………二之宮」
「へっへー、命中!」

顔に雪球をぶつけられる経験は初めてだな。結構痛いぞ
一ノ瀬の存在で忘れていたが、こいつも何かと絡んでくるんだったな
勉強より体力勝負のほうが得意らしいが
久しぶりに勝負を挑んできたが、何故かな
あの屈託の無い笑みを見るとイライラするのは

72 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 05:02:06.64 ID:RdDtTp6k0?
「手加減はしてやれんが………死ぬなよっ!」
「ハッ!上等ぉぉぉぉ!!」
「頑張れー」

     (ナレーション)
     後に雪原の桶狭間と呼ばれるこの戦いは、三日三晩続いたそうじゃ         嘘じゃ

「寒いな………」
「何時間も遊んじゃったからね」

手が悴んで雪球を作れなくなったので試合終了
歳相応に羽目を外した結果が之か
何気に傍観者に回っていた三空が一番賢いかもしれない
そして冷たくなった身体を冷やす為に、旅館へ戻って温泉に
雪を見ながら入る露天風呂というのもまた乙な物だな


「これで猿でも出たら完璧なんだがな」
「良くあるよねー」

最近気付いたことでもあるのだが、三空は精神の面で大人っぽい気がする
二之宮のような活発な人間が傍にいると、釣り合わせる為に大人しくなる傾向にある様な気がする
………となると、あの姉の出鱈目な性格は私が真面目だった所為でもあるのだろうか
あまり考えたくは無いな………

「………あ、浩太君」
「は?」
「え?」

73 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 05:03:08.08 ID:RdDtTp6k0?
「お、お前等!何で此処に!?」
「此処は混浴だからな」
「浩太君も、私達が入ってくの見たでしょ?」
「女湯の方じゃ……」
「脱衣所は別々だが、中は一緒だ」

漫画で見るような岩のゴツゴツした露天風呂
外にある所為か湯気が濃霧のようになっており、今迄気付かなかった
私達の格好は所謂スクール水着であり、混浴という状況だからこそ認められたものだ
湯浴み着という物もあるにはあるんだが、サイズが合わなかった
二之宮の方はというと一糸纏わぬという奴で、恐らく男湯のつもりで入ったのだろうな
私達のほかに客が居ないのが救いだが、繁盛してないのだろうか?
いや、昼間から温泉に入る方が異端だと言う考えもあるな
恐らくは後者か

「浩太君もこっちに来て入ろうよー」
「で、出来るかバカ!」

小学校一年生といっても恥ずかしいか。やっぱり
それとも三空相手には別なのか?
前々から思っていたのだが二之宮はどうも三空を特別に見てるような気がする
それが異性としてかと聞かれたら自信は無いが
まだ早いとも思うが、何だか微笑ましくもある様な………
なんて、親心を出してる場合じゃないな

「二之宮、その、何だ………目のやり場に困る」
「み………見てんじゃねーよ!」
「見た訳じゃないんだがな。目を瞑っててやるから、早く上がれ」
「………わーったよ」

74 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 05:04:17.20 ID:RdDtTp6k0?
正直に言えば見届けてみたいと多少は思っていたことは否定しない
しかし子供の頃は結構トラウマに残るもんだ
一度の悪ノリで双方に一生消えない鋼の楔を打ち込むのはどうも忍びない

「気持ちよかったねー」
「そうだな……」

同じ懸賞で当てたとは言っても部屋は結構違うようで
T字になっている廊下で二人とは別れた
久しぶりに歳相応のはしゃぎ方というものをした気がする
同年代の友達とは良いものだな
あくまで、肉体年齢での話になるが
多少の満足感を経て部屋の障子を開けた

「ただいま」
「おか~~えり~~」
「………Zzz」

へべれけに酔っ払った酔っ払いが一人。酔いつぶれた酔っ払いが一人
散乱する部屋
恐らく片付けるのは私か?
私が“歳相応”に過ごせないのは、頼りになる大人が居ないのが最も大きな要因ではないのかな

『折角若くなったんだから、歳相応に過ごしてみれば?』

この身体になった当初に、姉が言った言葉だ

せめて、そう出来るように協力ぐらいしてくれ。頼むから

75 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/11(日) 05:05:26.08 ID:RdDtTp6k0?
――というのが去年の冬の話
今は4月の新学期。学年も上がり、クラス替えの時期である
三空達は先に言ってるのだろうか

「よ。今回は同じクラスだな」
「…二之宮」

教室へ向かう途中、二之宮と出会った
今年はどうやら同じクラスらしい
一年の時はクラスが違う所為か機会が無かったが、彼とのライバル関係とやらも回復するのだろうか
するんだろうな。彼の目に見えそうな闘争心がそれを語っている
ライバル関係に付け加えるなら……

「…………おはよう」

今回の競争相手は二人という事だろうか
今年もまた何かしらの苦労が降りかかることは、今この時点で決まったような物だ

まぁ、決まっている事に文句を言っても仕方が無い
この一年も頑張っていこうか

それに………

案外、嫌いではないのでな

  ~続く~

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最終更新:2008年07月21日 04:34
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