「みっちゃーん!教科書貸してー!」
「………はい」
先日、双子の兄が女体化した
女体化したから私にそっくりになった、と言う訳ではないけど
顔こそ似ているけれど身長と体型が小学生並みになった
なのに高校の制服を着ているのが何ともいえない
「私もこの教科あるから、直ぐ返してね」
「解ったー」
見た目に比例するかのように、精神年齢も下がっている気がする
妙に元気はつらつとして小学生にしか見えない
相手をするのは少し疲れる
「アレじゃあどっちが姉かわかんねーな」
「もう慣れた」
男の時も姉弟に見られたから別に問題は無いけど
私ってそんなに老けて見えるのかな
というか、古い付き合いの恭司含め皆順応力高すぎだよ
「そういえば恭司」
「何?」
「お姉ちゃんが今度の土曜、家に来てだって」
お姉ちゃんが女体化してから1週間くらいで付き合い始めたらしい
何?この人ロリコン?
30 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 01:21:40.89 ID:2ewqsxG30
肌を刺すような冷気が心地良い
休日の朝には特別な何かを感じる
これからの無限の可能性に思いを馳せながら一定のリズムを奏でる目覚ましを止めた
「ん~…」
微妙に眠っている頭を起こす為に顔を洗う
髪を整え歯を磨き、服を着替えて朝食
純和風な米と味噌汁と卵焼きと………とりあえずいつも通り
時間はお昼に近いけど
二度目の歯磨きの最中に、今日の予定を考える
(……あの本発売日だっけ)
………まぁ、予め立てた予定を完遂させた覚えは無いけど
「んー?」
二階から物音が聞こえた気がする
この時間ならいつもお姉ちゃんは出かけてるし
「……………泥棒?」
気分は半ば諜報活動員
壁を背に音を立てないように移動。私妙にノリノリ
お姉ちゃんお手製による威力追求型の違法改造っぽいエアガンを手に、部屋を一つ一つ回っていく
心のどこか冷静な部分が私自身に激しくツッコミを入れていた
31 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 01:22:18.32 ID:2ewqsxG30
二階の部屋を階段から近い方から開けていった。何にも無い
そろそろ飽きてきたなぁ………
なんて思ってると、再び物音が聞こえてきた
「……お姉ちゃんの部屋?」
私さっきから疑問系でしか喋ってないなぁ……
扉に耳を近づけると、中の音が聞こえてきた
防音対策とか大丈夫なの?この家
『階段の音………美衣、上がってきてるね』
『亜衣……やめ……』
『早………美衣……見られるかもね?』
『手……止め……』
途切れ途切れにお姉ちゃんと恭司の声が聞こえてきた
………そう言えば今日、来るとか言ってた気がする
何だ、私の独り芝居だった訳ね
半ば失望的なものを感じつつ、扉を開いた
「お姉ちゃーん」
「「あっ!」」
「え?」
扉を開けると同時に私に飛来する白い液体
反射的に目を閉じると、顔に熱い粘々した液体が掛かるのを感じた
額の辺りから鼻の横、口元まで伝っていく
お姉ちゃん……亜衣と恭司の恐怖に満ちた顔が見えた
銃を持つ手に、少し力が篭った
32 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 01:22:49.62 ID:2ewqsxG30
空いてる方の手で顔を触ると、独特の水音と共に指先が熱くなった
離す動作に釣られてその液体が指との間に橋を掛けた
………時間で言えば後で聞いた話になる
見た目が異常なカップルであるこの二人は、営みにおいて妙に精神が高ぶるのだそうだ
泥沼に沈んでいくように変態的なプレイを求めたのだとか
そしてこの日は『家族に見つかるかも』なんてスリルを加味したのだとかで、私に見つかった
私の顔に掛かったのは事故だと、必死で弁明していた
「…………精液?」
「いいえっ!ケフィアです!」
即答
「そっかーケフィアかー」
「そう、そうなのよ!」
「全く、食べ物って遊ぶなってんだよなぁ!」
「「「あっはっはっはっはっはっは」」」
「…………って!そんな訳ないでしょぉがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「スイマセン!ほんっとスイマセーン!!」」
この日から、姉が少し大人しくなった
~終~
最終更新:2008年07月21日 04:39