今迄の俺はどちらかといえば暗い性格だった
其れが最近絶叫というか……ギャグマンガなノリなのは
多分というか、絶対
アイツのせいだろうな
校内に、熊がいる
つか、馬鹿がいる
64 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 23:21:28.10 ID:o3tkiY1I0
俺の隣の席の昔からの悪友が朝のHRをまともに受けないのは最早周知の事実だったりする
先日、女になってからと言うものその美貌を活かし皿に槍対砲台……何でもない
そろそろ先生方の生え際が心配になるな
さて、そんな超問題児は今日も今日とて午前中には顔を出さなかった
俺がその姿を目に認めたのは昼休みが終わり五時間目が始まっての事だ
認めた?良いや、違うな。俺はアイツの姿を見てはいなかった
「…………」
先生の抑揚の無い声が睡眠を催促する如く生徒達へのラリホー
つまり眠い目を擦りながら必死に授業を受けていた時の事だ
先生の昔話になった隙を見計らって窓の外へと目にやると信じがたい光景が
「…………熊?」
正しくは熊の着ぐるみ
誰が着てるかなんて訊かれなくてもわかる
そしてこの時の俺の心境は冒頭の通りだ
俺の声に反応するように眠気から冷めた生徒共が校庭を見やる
本来留める役割を担う教師ですら見入ってる
その熊……もとい、馬鹿は、一時期話題になったアニメのEDのダンスを踊っている。一人で
………馬鹿か? いや、馬鹿だったな
「もう、仕方ないなぁ瑠奈ちゃんは」
「俺たちが付いてないとなぁ」
「全く……私達の為に授業を犠牲にしてあんな物用意するなんて……」
あ、この学校もう駄目だ
65 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 23:22:16.42 ID:o3tkiY1I0
「………さて?弁明を聞いてやろうか」
「頭取るなー!熊の生首かえせー!くまー!」
「熊の鳴き声は「くまー」じゃない」
「がおー!」
『可愛いーー!!!』
「やかましい」
………元、男であるこの女、谷内 瑠奈(やち るな)
あだ名は『破壊神』という
その由来は、女体化の際になんか不思議現象が起こり子供っぽい見た目に反して腕力が想像を絶する破壊力を持つ
実際校舎のガラスとかが割られている
こけた拍子に支えようとして、掴まれた男子が骨折している
最近力のコントロールがついてきたが、咄嗟になると全力全開。そして全壊
こんな物騒な女でも何故か人気があるから不思議だ
「と、言う訳でこの着ぐるみなら少しは緩和するかなと思って」
「馬鹿だなお前」
フッサフサの毛皮の着いた妙にファンシーな着ぐるみの腕を振り上げる
後方で歓声が沸いた。ウザイ
「……良いからそれ脱げ」
「え?」
本気で当惑した顔と声。俺そんなにおかしい事言ったか?
手首の無い着ぐるみで器用に手招き
「ちょいとお耳を拝借……」
66 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 23:23:19.81 ID:o3tkiY1I0
「………この下、裸なんだけど」
「………馬鹿だなお前」
そこはかとなく真剣に言われても困る。もう帰れお前
呆れる俺の頭の隅の危機感地能力が某人類の革新的予知能力を見せた
「やぁぁぁぁ!!」
「うわっ!!」
反射的に仰け反る
先程まで俺の頭があった場所をスカイアッパーが通った
「避けんな!」
「無茶言うな!」
今度は両手を振り上げた
丁度黒い三人組の先頭を踏み台にした白い奴に襲い掛かる三人目張りに
ヤバイ、こいつの力で俺がヤバイ
足首とか身体全体の捻りをフル活用して方向転換、脱兎の如く逃げ出す
「逃げんな!」
「無理」
全力で走っているのに後ろからのモフッモフッという足音が近付いてくる
足音の数はこっちが多いのに、何故か後ろの方が早い不思議
「待てー!」
「待たん!」
廊下の突き当たりの直角な角が見えてきた
67 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/20(火) 23:24:11.18 ID:o3tkiY1I0
止まったらやられる。もとい、殺られる
「うおりゃぁぁぁぁぁ!!」
地面を離れ、華麗なる空中滞空
目の前に迫る壁を蹴っ飛ばし、90度の方向転換
5mほど壁走り
俺、何か人間じゃなくなってきてるなぁ、最近
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
どしーん、といった音が背後で響く
振り向くと瑠奈が壁に突っ込んでいた
コンクリの壁にはヒビが入っていた
………喰らったら死ぬんじゃね?
「よけんなよ!」
『よけんなヘタレー』
「じゃあお前等がやってみろよ!」
『いや、其れは遠慮する』
ストレスで胃に穴が開きそうだよ、俺
あぁ……………転校してぇなぁ、ホント
~終~
最終更新:2008年07月21日 04:39