「ス、スカートって落ち着かないな」
「慣れれば大丈夫ですよ……多分」
先日、女体化した
女体化しない確立もあるにはあるのであまり懸念もしていなかったが、実際なってみると少しアレだ
特にいきなり膨らんだ二つの塊が振動するたびに存在を実感する
「筋力も落ちてるし……バイトやめないとなぁ」
「大変ですね」
別に家計が苦しいわけじゃないが、自分で使う分は自分で稼ぎたい
そう思って始めたバイトだが、思い返してみると肉体労働が多い
男の時なら出来ても、女になってか弱くなってしまった今の身体では続けられるとも思えない
改めて小遣いせびる訳にも行くまい
女の身体で出来るバイト探さないと………ウエイトレスとか?
「着ぐるみのバイト、時給良かったのに……」
「着ぐるみ?」
何か食いついてきた。そう言えば教えてなかったっけ
「あのでっかい遊園地のマスコットの着ぐるみ。一番良かったのになぁ……」
「嘘ですよ」
………え?
突如凍る空気
「だって、アレは生き物なんですよ?」
259 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/21(水) 21:55:35.01 ID:Pdbj1oDM0
夜の冷たい風が吹き、園の照明が落ちた
設備の死角に潜んで、見回りの警備員をやり過ごした
誰も居ないのを確認して影からでる
お祭りの後のような寂しさが漂う園内を夢遊病のように歩く
先程この遊園地のマスコットが入っていった、管理室のような建物が見える白い塗装をされた扉は鍵が掛かっておらず、音を立てずに開いた
月が青白く照らす内部には、園内放送の為のマイクやブレーカーのような装置があった
その奥に入り口からは見えないように、もう一つの扉があった
金色のメッキをされた南京錠がその扉を閉ざしていた
学生鞄に入れておいた、組み立て式の鋸を取り出す
部品と部品のつなぎ目を狙い、鉈のように振り下ろした
キンッ、と切なげに音を立てて南京錠が壊れた
「居た………」
台座に乗り、歓迎するようなポーズをとるマスコット
焦点の合わない目で其れを見、自然な動作で鋸を首にあてがう
ベズンッ
そんなくぐもった音が響き、マスコットの首の繊維が断ち切られる
中からは白い綿が飛び出していた
「やっぱり………嘘だったんじゃないですかぁ」
一時間ほどが過ぎた後、女生徒の足元に白いワタと、バラバラになったマスコット
「……………中に誰も居ませんよ?」
260 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/11/21(水) 21:56:19.09 ID:Pdbj1oDM0
「………と言う訳で、やめさせていただこうかと」
昨日は彼女がいきなり走り去ったことに疑問を覚えつつも、何事も無い日を送った
そして今日は今迄バイトしていた場所へと挨拶に来ている
遊園地へ着いた時、妙に騒いでいるのが目に入った
「アレ?どうかしたんですか?」
「あぁ、これ見てくれよ」
「うわ、酷い…」
遊園地の入り口に飾る予定だった、マスコットの等身大人形がバラバラ死体だった
南京錠は壊されており、恐らく深夜の犯行だろう
地面に転がった首の微笑んだ表情が妙に怖い
「鋸で切った感じだな……こりゃ」
「何の為に殺ったんでしょうねぇ」
無造作にバラバラで、一定以上の大きさが無い
まるで中身でも確かめるように……… 中身?
「…………まさか」
突如浮かんだ、知人の不可思議な行動
何か嫌な予感がする
結果から言えばその予感は当たっていた事になる
私が怒られた。スイーツ(笑)
~終~
最終更新:2008年07月21日 04:40