「で、弁明を聞こうか」
「…………あのですね」
その日は桜から手伝いを頼まれていた
先生から頼まれた仕事らしいが、一人では少々量が多すぎるとのこと
積極的に人を頼るというのは珍しいので、快く了承
頼りにされたことを嬉しく思いつつ、生徒会室で待っていた訳だ
『じゃあ4時半に、生徒会室で』
放課後になった後直ぐに来たので、時間は4時10分
手持のライトノベルを読んで時間を潰していたら、少々夢中になりすぎた
気が付けば4時45分。まだ来ていなかった
まぁこんな事もあるさとライトノベルへと目を落とした
…………5時00分
手持のライトノベルを読み終える
生徒会室にある本棚に目を走らせると、『緋色の研究』の文字
確かシャーロック・ホームズの第一巻だったか
読む本もやる事もないので、自然と手に取っていた
小説は、名声高きシャーロック・ホームズの友人
ジョン・H・ワトスンの語り部で始まっていた
「すみません、遅れました」
そういって桜が扉を開けたとき、時計は5時34分を指していた
335 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/03(月) 20:53:36.17 ID:uW4sT45G0
1時間と4分の遅刻の理由を聞く為に、俺は冒頭の台詞を吐いた訳だ
しどろもどろになりながら、桜は話し始める
「罠です。巧妙な罠です。孔明の罠なんです」
「言ってみろ」
若干、首を庇うように話し始める
怪我でもしたのか?
「扉に、『↓を見ろ』って張り紙がしてあったんです」
「………は?」
力説を始めた
こんな生き生きした桜はいつ以来だ
「そして下を見たら、今度は『→を見ろ』と書かれていました」
無駄にタメを加えながら、あたかも重要な事のように話している
「右を見たら『↑を見ろ』、上を見たら『←を見ろ』、そして左を見たら何と………」
ゴクリ、と唾を呑む声が聞こえた気がする
「何と!『前を見ろ』って書かれていたんです!!」
「…………で?っていう」
某赤い帽子のヒゲ配管工に乗り逃げされたり二段ジャンプの為に谷底へ落とされる緑色の恐竜のような声が出た
ふざけているのかと思ったが、どうやら真剣に言ってるようだ。性質の悪い事に
336 名前:缶詰の中の人 ◆FP9rUXa9Eo [] 投稿日:2007/12/03(月) 20:55:22.77 ID:uW4sT45G0
「延々1時間も首を回す羽目になったので、遅れました」
あたかも正当な理由で遅れたかのように胸を張り、背筋を伸ばしている
俺には君が分からないよ、あらゆる面で。色んな意味で
「…………帰って良いかなぁ。俺」
「………手伝って、くれないんですか………?」
………ずるいよね、女の子ってズルいよね
結果的に言うと、俺達が帰ることの出来たのは時計の短針が7の字を指す頃になる
書類仕事というものは何気に時間が掛かるな
「あ、この猫可愛いですね」
「そうだな……」
「こっちの猫は毛並みが素晴らしい。Beautifulの一言です」
「あぁそう」
「角度が違うだけで可愛いと格好いいに分かれますね」
「………そうだね」
猫の写真を分けるのに、一体何の意味が
というか
「これを生徒に頼むなーーー!!!」
ちゃぶ台返し。ちゃぶ台無いから格好だけ。空気ちゃぶ台。エアーちゃぶ台。ちゃぶ台フォーエバー
あぁ、久しぶりに絶叫した気がする………
~おわり~
最終更新:2008年07月21日 04:42