653 名前:
くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [餅戸下と幼なじみ] 投稿日:2007/09/24(月) 17:22:10.44 ID:nJQXJ2M8O
1
「藤吉郎君………お出かけ?」
可愛らしい声。
同じタイミングで向かいのドアが開いた。
「うるさい!美咲には関係ないだろ!」
二年前に女体化した幼なじみだった。
美しいとは言わないが、それなりに可愛い顔立ちをしている。
…そして、日に日に大人の女性へと近づいていくこいつを見る度に、あの女との行為を思い出し吐き気がするのだ。
「確かに関係ないかもしれないけど、二年前から藤吉郎君おかしいよ?何でペド野郎になっちゃったの?」
「はっきり言いやがる…」
「だってロリならまだしもペドだもん。心配にもなるよ…」
心底心配そうな顔で近づいてくる美咲。
もう限界が近い。
「ねぇ?」
そして、美咲の指先が肩に触れた瞬間、俺は吐き気が堪えられなくなり胃の中の物をその場にぶちまけた。
655 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [餅戸下と幼なじみ] 投稿日:2007/09/24(月) 17:24:08.05 ID:nJQXJ2M8O
2
「はぁ…はぁ…」
口の中が嫌な酸味で溢れていた。
「…藤吉郎君、大丈夫?」
美咲は背中をさすろうと、また俺に触れようとする。
「触るな!」
「ご、ごめん!」
「お願いだから……触らないでくれよ…」
「藤吉郎君………泣いてる………の?」
美咲に言われて頬を流れる涙に気づく。
「ごめんな美咲。………お前が俺を心配してくれてるのは解る。だけどな、俺は駄目なんだ…」
こんなにも優しい幼なじみに触れられただけで嘔吐したという事実に、涙は止まらない。
「…藤吉郎君は昔から辛いことを溜め込み過ぎなんだよ。ねぇ?何があったのか教えてよ。直接話すのが嫌だったら電話でもいいから」
こんな汚い俺に差し伸べられた救いの手。
俺は『女』を信じることは出来ない。
だけど
「…夜…お前んちに電話する」
…美咲になら…幼なじみのこいつになら、甘えてもいいのかもしれないと思った。
656 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [餅戸下と幼なじみ] 投稿日:2007/09/24(月) 17:26:23.75 ID:nJQXJ2M8O
3
「…そんなことが…あったんだ…」
体中から溢れてきそうになる涙、恐怖、嫌悪、吐き気………全て堪えて俺は美咲に話した。
「辛かった?」
「…うん」
「怖かった?」
「…うん」
「…そっか。今からそっち行くから」
そう言って電話が切られ………二分後、俺の部屋の戸をノックする音がした。
「藤吉郎君、開けて」
「…嫌だ」
「そんなに嫌?女の子が?」
「…嫌」
「…そう。おばさま~?藤吉郎君の部屋の戸、壊すけどいいですか?」
物騒な事を言う美咲。
「いいわよ~。あの子、籠もりがちだから引っ張りだしてやって~」
それを了承する母親。
…まともな奴はいないのかと思った。(←お前が言うな!)
657 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [餅戸下と幼なじみ] 投稿日:2007/09/24(月) 17:27:50.45 ID:nJQXJ2M8O
4
「お邪魔しま~す」
ドアノブの付いた戸を軽々と持ちながら、美咲は部屋に入ってきた。
「…うっわぁ。気持ち悪い部屋」
部屋中に貼られた写真を見て美咲が呟く。
「…全く。いつ、こんな大量に翠ちゃんの写真撮ったのよ…。等身大抱き枕まで作って」
「癒やしアイテムだ。ほっといてくれよ…」
「まぁいいわ。本題!」
それだけ言って美咲は俺の手を掴む。
「…う゛っ!」
すぐに吐きそうになる、が
「我慢!」
美咲の勢いと言葉に何とか堪える。
「やれば出来るじゃない♪」
「はぁ…はぁ…」
息を荒くして我慢する俺の手を
ームニュ
着やせするのか、意外と大きな胸へと導いた。
「やばっ…」
もう駄目だと思ったその時。
659 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [餅戸下と幼なじみ] 投稿日:2007/09/24(月) 17:32:17.69 ID:nJQXJ2M8O
5
「…ねぇ。私だって少なからず異性が怖いわ」
美咲の小さな体は小刻みに震えていて………それを手のひらに感じた俺は、吐き気が無くなっていた。
「藤吉郎君?あなたの好きな翠ちゃんだって、段々大人の女性になっていくわ」
人間、大人になることをどんなに拒絶しようと、体は待ってくれない。
心が子供のまま成長しなくても体が大人であれば、そう扱われる。
「幼女だから翠ちゃんが好きなの?それとも一人の女の子としての翠ちゃんが好きなの?」
言われて思う。
幼女だから?
違う、翠たんは
「無垢なその姿に………一人の女の子としての翠たんに惹かれてたんだ俺は…」
ぼろぼろと涙が溢れてくる。
そして美咲はそんな俺を何も言わずに抱きしめてくれていた。
660 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [餅戸下と幼なじみ] 投稿日:2007/09/24(月) 17:34:52.98 ID:nJQXJ2M8O
6
一時間後。
「ありがとう。美咲のお陰で真っ当に生きていけそうだよ」
俺は心からの感謝を述べた。
「一つ言っとくけど………藤吉郎君?今のままだと翠ちゃんに嫌われるよ?………というか嫌われてるけど」
「なっ?」
「その弛んだ体じゃねぇ…」
確かに。
冷静になった今なら解る。
半端じゃない脂肪の塊と化した俺を誰が好きになってくれようか?
「あと、これを見て!」
美咲が取り出したのは近所のさくらちゃん(5歳)の水着写真。
「ハァ…ハァ…」
「そう簡単には治らないか…」
美咲は溜め息を吐く。
「と、とりあえず痩せてやるさ!」
「頑張れ~。元は悪くないんだから」
この日、俺は翠たんに釣り合う男になって告白する。
そう決意した。
ー了ー
最終更新:2008年07月21日 04:48