312 名前:
くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:22:17.43 ID:tfQSCfeZO
「アハハ♪だ・か・らあなた達は愚かだと言うのよ。自分たちが信仰する神の正体すら知らない」
目の前で高らかに笑うのはあらゆる武具を使いこなし、作り出す魔女「戦女(いくさめ)」ことシルバー。
「…あなた達教会は神の名を語り、どれだけ罪の無い人間を殺した?」
我々に休む暇も与えず、次々と繰り出される攻撃。
「教会における神って何?そこのあなた、休ませてあげるから答えなさいな?」
シルバーは私を指名する。
「…神とは人間を始め、万物を作り…絶対的な力を持った我々の守護者だ」
「ぶぶ~、それは違いま~す♪人間の守護者って言うなら私たち「魔女」だって刈らないわよ、「人間」だもの。…あなた達の信仰する神っていうのは…」
シルバーは後ろにいた部下三十名を一瞬で倒すと、私の背後に回りこう言った。
313 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:22:46.07 ID:tfQSCfeZO
「他の星から来た人間よ。自分たちの星を滅ぼして行き場を無くし、この星に目を付けた侵略者。…そして、二千年経った今…」
シルバーは俺の首筋を見て驚いた様に言う。
「なぁんだ!あなた、刻印があるじゃない♪」
ふざけるな!
神に仕える騎士の私に刻印?
「お仲間じゃあ優しくしないとねぇ…」
「…私は騎士だ!」
最後に残った力で剣を振るうが、シルバーを捉えることは出来ない。
「あぁん………面倒だから寝てて!」
「…あ」
後頭部に鈍い痛み。
頭がグラグラと揺れて、私は意識を失った。
314 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:24:22.43 ID:tfQSCfeZO
「………つぅ」
頭がズキズキ痛む。意識を失ってからどれだけ経った?
「…あらぁ、お目覚めかしら?」
のほほんとした声。
「貴様、シルバー!」
憎らしい声に立ち上がろうとするが、四肢を拘束されていて無駄な足掻きとなる。
「おはよ~。可愛らしい騎士様?うふふ♪」
「可愛らしいだと?…貴様、私を愚弄するか!」
「私は見たまんまを言ってるんだけど?」
「何?」
私は固定されていない首を動かし、自分の肉体を見る。
いつも通りの鍛え抜かれた…
「………」
肉体ではなく柔らかそうな女性の物だった。
「き、貴様!何をした~!」
興奮していて気付かなかったが声も少女のそれとなっている。
「私はなんにも~」
シルバーはフルフルと首を横に振る。
「嘘を吐け!」
「ホントよぉ。あなた、教会の教えは忠実に守ってた?」
「当たり前だ!私はこの身を神に捧げた」
「だからよ。あなた、女の子とエッチしたことないでしょ?」
「それが神の教えだ!」
「良かったわねぇ♪」
何を言っているんだシルバーは?
「だって、あのままだったらあなた………教会に刈られてたもの」
316 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:27:46.84 ID:tfQSCfeZO
「ねぇ?何で教会が20歳以下の人間に性交する事を禁じていると思う?」
「それは…」
私はシルバーの問いかけに答えが見つからなかった。
教会の教えは絶対であり、幼い頃から何の疑問も抱きはしなかった。
「私たち「先住民」はね、生まれながらの女っていないのよ」
「それでは子を成せないではないか?」
「…ふぅ。教会に毒されて何も知らない。哀れね…」
やれやれと溜め息。
317 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:28:19.72 ID:tfQSCfeZO
「教会内の「魔女」を見つけて刈るために性交を禁じているのよ?私たち「先住民」は15~20歳手前まで純潔を守れば女として生まれ変わるの。二千年前までは当たり前の常識だったのよこんなのは」
シルバーは表情を引き締める。
「それが一般的に忘れ去られ、男と女が明確に分かたれた現代………「侵略者」達は星中に蔓延り、私たち「先住民」は男に化けて世に忍んでいる「魔女」として迫害されてるってわけよ」
困ったものだわ、とまた溜め息を吐いた。
「あなた達の神はね、この星を自分たちの種で満たすため………いいえ、自分たちの星を再現するために魔女刈りをしている殺戮者なのよ」
「殺戮者は魔女の方ではないのか?」
「何言ってるの?私たちは自分や仲間を守る為にしか力を使わない。魔女に殺された人間っている?」
318 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:30:01.00 ID:tfQSCfeZO
シルバーに言われて気付く。
魔女と戦い重傷を負った騎士は多数いたが、死に至った者を一人も見たことがない事に。
「魔女は星の声を聞くわ。星は人を殺すことを望まれていなかった………たとえ、この星が嘗ての在り方を失うことになろうとも…ね…」
何ということだ………教会に拾われ、育てられたこの12年。
私はその教えを疑ったことなど無かった。
魔女は異端也、滅ぼすべき悪也と叩き込まれてきたというのに。
「…私がやってきたことはただの殺戮だったというのか」
シルバーと話していると、教会の教えがおかしいと気付く。
何をした訳でない少女たちを魔女として一方的に刈った。
ただ、刻印が浮かんだ僧侶、騎士、信者たちを有無を言わさず殺した。
「…悪は私自身か」
319 名前:くみちょ! ◆nvmgYjRe.Y [ファンタジー風] 投稿日:2007/09/25(火) 20:30:52.67 ID:tfQSCfeZO
自分を正義と信じ、神の名の下に何の疑いもなく人を殺めてきた自分が哀れだと思った。
「ま、それに気付けたあなたはまだ救いがあるわよ♪」
シルバーに抱きしめられて思う。
(何も違わない。この温もりは同じ人の物ではないか…)
「で、本題。このまま聞いてくれる?」私は頷く。
「1ヶ月位前になるんだけどね………星は初めて人を殺すという決断をしたの。このままじゃこの星に住む命は全て無くなると知ってね…」
「それは…」
「教皇と教会の幹部7人が…」
「…ぐはぁ!」
首筋の刻印が尋常じゃなく痛む。
頭がクラクラする。
「あら、覚醒が始まるのね………。お話はまた今度にしましょう」
「覚醒だと?」
「言ったでしょう?魔女は星の声を聞くと。そのために魔女は星と繋がるの…」
…星と繋がる?
「星と繋がった時、あなたは新しい力を手にする。この星を守るための力を…」
「シルバー…」
沈みゆく意識の中
「おやすみなさい!あなたの目覚めが素晴らしいものであらんことを!」
シルバーの声だけがはっきりと頭に響いていた。
最終更新:2008年07月21日 04:49