そう、まるでこの吹雪は悪魔の吐息。この山小屋に取り残された我々を、下界に帰すまいと荒れ狂う怒りなのだ……。
「一人で勝手にナレーションぶって悦に入るの止めてくれる?」
「失敬な。俺はあくまでこの状況を冷静に分析しようとしているのではないか」
「……冷静に分析して下山できるのなら、いくらやっても構わないんだけどね」
「はは、そう悲観するな」
「あんたは嫌に陽気ね」
「まあな。何しろ我々は別に、二人だけでこの山に来たわけではないからな。いずれ山の麓にいる先生や他のクラスメイトが気づくだろう。そうなれば明日にでも我々は下山できる!」
「っていうか、まさかスキー合宿で遭難だなんてマンガみたいな展開が起こるとは思ってもみなかったわ……」
「安心したまえ!俺がついている!」
「だから余計に不安なのよ!今日は仕方ないから一緒に一晩過ごすけど、私に何かしたらソッコー外に放り出すからね!?」
「心外な!この俺が君に手を出すと!?」
「え……、そりゃ、まあホラ、男の子だし?」
「この俺が君の目に、そこまで低劣な人間に映っていたとは…っ」
「あーもー!悪かったわね、謝るわよ!」
「ふふ、では仲直りと行こうか」
「はいはい。んじゃ、アンタもたとえ明日が16歳の誕生日でまだ童貞だったとしても私に手を出さないって誓ってよね?」
「………ちなみに今日は何日だ?」
「……………12月の22日だけど」
「…………………」
「………………………」
「……………………………ラブコメ的王道に沿えば、この山小屋で何が起きても不思議ではないと思わんか?」
「あんたを燃やして薪の足しにするわよ?」
12月23日の朝、『女性二人』が救助されたという。
最終更新:2008年07月21日 05:00