「すみません、先生……、あの」
「あー、うん。分かった、いってらっしゃい」
急に席を立ちクラス中の注目を浴びてしまうが、この際仕方ない。今すぐにトイレに行かないと俺はもっと恥ずかしい目に合ってしまう。
――ちくしょう、アイツら生理だとか勘違いしてるんだろうなあ………。
もっとも、それはあながち間違いでもない。センセイの言うことには「生理が近づいているから」だそうだ。全く厄介なものだ、女の体も、頻尿も。
『う~ん、君の体に異常はないねぇ……。多分、心因性のものだと思うけど』
『シンインセイ、ですか?』
『そう、君みたいに女体化した子にはよくある事なんだけどね。急激な環境の変化にストレスを感じてしまって、体が悪くないのに病気にかかってしまうんだ』
『女の体のせいじゃなくて、心のせいなんですか?』
『うん。まあ、どれそれのせいだ!みたいに思うのもいけないんだけどね。それに、生理が近いからかもしれないし』
『はあ……』
用を済ませ、とぼとぼと廊下を戻っていたら急に声をかけられた。
「どした?元気ねーな」
驚いて顔をあげると、クラスメイトの田淵がそこにいた。
――ああ、もう授業終わったのか。などと考えていると、田淵は肩に手をかけてきた。
「そう落ち込むなって」
「落ち込んでねーよ」
つい声に刺が出てしまう。そんな俺の肩をぽんぽん叩くと、
「変わった所にばかり目を向けているんなら、悔やむよりは喜んで迎えたほうが楽しいぜ?」
そう言って田淵は先に教室に入っていってしまった。
アイツにそう言われると、なんだか急に自分の悩みが、簡単に理解できるほどの薄っぺらなものに思えてきた。
ちくしょう。心の中を見透かされたようで、ムカツク。
一発蹴りを入れてやるために、俺は教室に戻った。
最終更新:2008年07月21日 05:06