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孔明 ◆fzpLpgOYbk :2008/03/03(月) 23:24:00.54 ID:UIwJ9QTQ0
「2月28日・・・異常無し」
今日の観察結果を打ち込みPCの電源を落とす。
この仕事にはようやく慣れてはきたが、胸の内の気持ちの悪い感覚だけは消えることが無かった。
「2月29日・・・異常無し」
この観察が開始されてから一週間が経つが、相変わらず変化は見られない。彼女は本当に発症したのだろうか、と時々疑問に思う。
そういえば今年は29日まであるのか・・・。たしか閏年とかっていうんだったっけな。
4年に1度・・・まさに例の症候群と同じだな・・・。
女体化症候群という謎の病気が確認されたのが八年前。それから4年に1度という感覚でその病気が発症していた。
僕はその謎の病気を研究するためにこの機関で働いている。
そしてつい1週間前に貴重な生きている『サンプル』が見つかった。それが彼女。[少女A]と呼ばれている。
この女体化症候群というものはとても奇妙な病気で15,6歳の男の子にしか発症しない。
さらに異性と性的な関係になったことが無い子達が発症する。
そしてほとんどの子供はその肉体的な変化についていけなくなりこの世を後にする・・・。
その肉体的な変化とは性別が入れ替わるということ。
種族は同じとはいえ男と女の体にはいくつかの違いがあり、その変化に体が対応しきれなくなり限界を超えてしまう・・・とお偉いさん方が発表した。
そういうことで『生きている』サンプルはとても貴重だ。
「2月28・・・異常無し」
かれこれ1年近く続いたこの観察だが、なんの変化も見られなかった。
そして、翌日の朝を迎えた。
今年はもう3月か・・・。
朝のニュースを見てふと思う。去年は29まであったっけなぁ・・・。
少し冷めたコーヒーをゆっくりと流し込み、あの部屋へと向かう。
部屋に向かう途中やけに周りがあわただしくなっていた。
いつもの怖いくらいに静まりかえっているこの廊下に人が溢れていた。
へぇ、こんなに人いたんだ・・・となぜか思ってしまった。我ながらバカだと思う。
最終更新:2008年07月21日 20:04