―…―prologue―…―

俺と彼は昔からずっと一緒だった。

幼稚園も、小学校も、中学校も、高校も……


彼は、俺が知っている人達の中で一番一緒にいて楽な人。

気を遣う必要のない、それでいて安心できる、そんな人。


鮮やかで彩り溢れる時代を共に過ごして、俺たちは少しずつ流れ出した。


春。ひらひら桜舞う頃に出会い、惹かれ。

夏。きらきらざわめく川面を見、騒ぎ。

秋。はらはら散り行く楓を拾い、見つめ。

冬。さらさら舞い降りる雪を纏い、離れ。


『ねぇあゆむ君、知ってる?』


「え? 何を?」


『僕たちが、進むスピード。 歩く速さがちょうどいいんだって』


「へぇ……さつきってそういうの、詳しいね」


『へへ……僕も何かで読んだだけだけど、ね』


俺は、続くと信じていた日々を懐かしむように噛み締める。

たった一度きり重ねた俺たちは、どうしようもない流れの中にいたのだ
ろうか。

道は少しだけ交わり、離れたり近付いたりしながら、どうしようもなく俺をやる瀬ない気持ちにさせるのだ。

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最終更新:2008年07月21日 20:15
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