俺は約束の時間の15分前に着いたのだが、すでに春はベンチに座って本を読みふけっている。
俺はこっそりと音も無く背後に回り、春の肩に手を置く。
純:お待たせ。
春:遅い。15分も待ったぞ。
春は本をパタンと閉じると、俺の手を払いのける。
いかなる状況であれど、春は決して動揺しないのでからかいがいがない。
・・・俺がからかわれることはしょっちゅうある話だが。
春:でー・・・どこなんだ?
純:ここから歩いて20分ほどの所だ。
春:ほう・・・。とりあえず行くとするか。
純:了解。
春は立ち上がり、俺は歩き始めた。
純:・・・・なぁ
春:ん
純:お前歩くのはえーよ・・・俺でも急ぎ足じゃないと追いつけねーし・・・。
春:なら急ぎ足で歩けばいいじゃない
純:まぁそうなんだけどさ・・・・なんで急に女言葉になったんだ?
よし、言えた!
春:あぁ、お母様に一日漬けでたたき込まれた。まだ癖はあるけどね。
純:十分女っぽいだろ。服もさ・・・・
今日春の着てきている服はいかにも女の子らしい服だ。
正直、かなりかわいい。
春:よせ・・・照れるじゃない。
純:あ、お前でも照れるのか?
春:うるさい・・・・。
あれこれ話して歩いているとあっという間に着いてしまった。
純:着いたぞ。まだオープンしてないけど。
春:もう着いたか。・・・にしても人多いな。
本日オープンなだけあってかなりの人がいる。
親子連れやらカップルやら多彩な人々が来ている。
純:あぁ・・・。どんな虫が来てもお前を守ってやんよ
春:本気で言ってるのか?私が男だった時に一度も勝ったことない癖に・・・
純:その前に俺が手を貸さなくてもお前一人でシメちまうか(笑
春:だろうね。
こいつは過去、男だった時から喧嘩を申し込まれて負けた試しがない。
なんせ、俺と春の出会いは高校初日にぼこぼこにされてからだ、友人と呼び合えるようになったのは・・・。
喧嘩を売られたにもかかわらず、負かした後に手を貸すようなのはこいつだけだ。
変わってる・・・。しかし、こいつとなら楽しめる。
そう踏んで俺と春は友達になった。
春:お~い・・・また考え事か?
純:・・・あっ・・・。あぁ。お前ほんと鋭さはそのまんまだな。
春:これはお母様譲りだ。だからお母様には隠せる物がない。で、何を考えていたんだ?
純:実はな・・・
時は今から実に数ヶ月前だった。
純:お前か。中学生にして無敗の王子、風名春紀君。俺の名前はは名木沢純斗だ。
春:ご丁寧に挨拶どうも。で、何なのですか。
純:放課後、駅の近くの公園に来い。話はそれからだ。
春:まためんどくさいのに絡まれたな・・・。まぁ覚えてたら行ってやるよ。
純:貴様っ・・・覚えてたらとはなんだ!
俺は春の胸ぐらを掴む。
春:乱暴な真似は後にしてくださいよ。仮にも今日は初日なのですよ?
純:・・・ったく、わかったよ。来なかったら明日この場で潰すからな。
春:出来るといいですね。フフフフ・・・
放課後になり、言いつけた公園に着くと、すでに春本を読んでは待っていた。
春:遅いですよ。もう10分も待ちました。
純:うるせー・・・HRが長引いたんだよ。
春:それはそうですか。では、お先にどうぞ。
春は本を鞄にしまうなど、無防備な姿で俺の攻撃を待っている。
純:全く・・・俺をなめちゃ痛い目見るぜ!!
ご期待通り、思いっきり殴りかかる。
・・・が、当たらない。
春:どうしました?これにてこちらも戦闘準備完了となりました。
純:・・・なめた真似しやがって・・・
俺は春のスカした態度に苛立ちを覚える。
そこからしばらくの間、俺と春は睨み合いになる。
春:どうしたんです?かかってくるならかかってきてくれればいいのに。
純:うるせー・・・じゃあお前こそかかって来いよ。
春:いいんですか?・・・行きますよ。
次の瞬間、春が消えた・・・?
純:ぐふっ・・・・
春:かわいらしい鳴き声ですこと。
・・・!
一瞬にして春は俺の視界から消えて、鳩尾にストレートをぶちかましてきた。
純:この野郎・・・・
春:これじゃたいしたことありませんね。時間の無駄です。
純:黙れ糞・・・勝負はここからだっ・・
俺は春に殴りかかるが、5発撃っても一発も当たらない。
純:ちくしょー・・・
春:勝負はここからと言われましても・・・これじゃーねぇ・・・
純:ぐっ・・・
次は腹に蹴りを入れてくる。
春:おしまいですか?それでしたら帰りますよ。
純:冗談じゃ・・・ねぇ!!
渾身の力を込めて春を殴る。
・・・やっと手応えありだ。
春:不意打ちでも・・・食らってしまいました。
春は悔しさの混じった声ではあるが、顔は微笑している。
・・・どこまで余裕のあるやつなんだ。
アァ、ダメダ、睡魔ガーッ!
春:それでは、本気で行きますよ。どうなっても知りませんから。
そう言うと、春は目を閉じる。
純:目を瞑るとか・・・・正気か?お前
春:いいえ、正気ではありません。本気です。
・・・・スカしやがって!!
俺は春の背後から思いっきり殴ろうとする。
すると、俺は腕を捕まれる。
純:な・・・
俺は勢いだけで春に投げられる。
春:今から1分いないに降参すれば間に合います。
・・・・しないのであれば、命を落とす可能性も考えていてください。
・・・こいつ、本気だ。
スイマセン、ネテキマス。
起きたら続き投下
最終更新:2008年06月11日 22:57