俺は三郎。私立探偵を志す高校一年生だ。
きっかけは……まぁ、同じ名前のゲームの主人公に憧れた訳だが、俺は本気だ。
放課後の屋上で独り紫煙を燻らすのがたまらなく好きだ。
夕暮れに染まる街を見下ろしながら、口にしたマルボロを吸い込み、煙を吐き出す。
………美味い。
「よっ! 相変わらずオヤジくせぇな」
「五月蝿い。貴様こそ何故俺に構…う…」
振り向くとそこに何時もの悪友はおらず、代わりに息を飲むような美少女が立っていた。
俺は不覚にも、心奪われてしまっていた。
「ん? 探偵志望のヤツがそんなに察しが悪くていいのかぁ?」
「な…! まさか、お前は…!」
「そ。女体化しちまった。不便だなぁスカート。足に絡み付くし意外と蒸すし」
ハハハ、と笑いながらスカートをひらひらさせる元悪友。
俺は未だに、目を離せないでいた。
「ん? 風邪でもひいたか? 顔赤いぞ」
今日の俺はどうにかしてしまったようだ。
俺の目標である固ゆで卵。でも今は何処ぞの温泉卵のような、軟らかくて温かいものが心には溢れていた。
終わり
最終更新:2008年07月21日 21:22