安価『お芋タンハァハァ』

「もう悪さしちゃダメだぞ! じゃあねぇ~♪」

今日も今日とて陽は昇る。
我が校のアイドル、お芋タン。
そして非公式ファンクラブ会員である僕たち。
毎日のように追い、追われる関係は当たり前のように続いていた。

でもそれも今日、変わってしまった。
闇に喰われた僕たちは、理性という枷を外され、無性に求めた。
そして後悔という首輪を付けられ、男を失い、会員である資格を失った。

いつに増してけだるい朝、真新しい制服に身を包んだ登校は、常に溜息が纏わりつく。
それは教室に入るまで続いた。

教室に入って席に着くと、皆が声を掛けてくるけど、そんな事どうでもよかった。
僕が喋りたいのは、ただ一人の彼。
底抜けに優しくて、可愛くて、感情豊かで、使命を隠し切れていない、そんなお芋たん。

お昼休みに、誰もいない屋上で。僕は独り弁当の包みを解く。
昨日まで本当に騒がしかったこの時間が、今日は静かで。
そんな思いに耽っていると、不意に扉が開いた。



「あ、加藤君みっけ!」

額に汗を浮かせながら現れたお芋タンは、体に合わないようなサイズの弁当を持っている。

「あ……お芋タン……どうしたの?」
「お芋タンゆ~な!…じゃなくて、えっと…加藤君なんか…元気無さそうだったから…」

普段あまり喋らないのに、僕の事を追って来てくれたの…?

「あゃっ!?わわ、どしたの?どこか痛いの?誰かに何かされた?」
「……ううん……大丈夫、僕は大丈夫だよ……」

嬉しくて、ただ嬉しくて。僕は涙を流していた。
ふと、頭を撫でられて顔を上げる。
お芋タンが、僕の頭を撫でてくれていた。

「髪、綺麗だね……泣きたいときは、泣いてもいいんだよ?」

それから僕は、お芋タンの手を感じながら泣いた。
温かくて柔らかいその掌は、僕が泣き止むまで止まることは無かった。




おわり


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最終更新:2008年07月21日 21:25
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