11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 []:2007/06/10(日) 02:21:51.82 ID:krPJ4PUBO
今日、親友でクラスメートの菜緒に言われた言葉。
「……君を…保守したい…」
アレは、どういう意味だったんだろう?
菜緒が女の子になって、俺はずっと避けられているものだと思っていた。
やっぱり女の子には女の子の付き合いがあって、僕なんかと一緒に居てもからかわれるだけだから。
だから、僕に寄ってこないんだと思っていた。
いつもつるんでいた仲間を失って、独り屋上で煙草を吹かしていた俺の所に、菜緒は来た。
そして、冒頭の言葉を残して、その場を去ってしまった。
元々クールで無口な菜緒の声は、今も変わらなかった。
女の声にはなっていても、喋り方やタイミング等は全く昔と一緒だった。
それは嬉しくも在り、悲しくも在った訳だが。
その日の帰りに部活を終え、自転車に乗って校門を過ぎようとした時だった。
プラタナスの陰から、菜緒が再び現れた。
「……一緒に…帰ろ…?」
そう言って、以前と同じ喋り方で、以前と全く違う顔の菜緒は、僕の横についた。
話したいことは沢山あるはずなのに、聞きたいことも沢山あるはずなのに、それらを発する事は出来ない。
夕暮れに染まる菜緒の横顔が、何か思い詰めているように見えて。
「……うち…来ない…?」
校門以来初めて菜緒が口に出した言葉は、男の時とはまるで違う重さを感じた。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 []:2007/06/10(日) 02:23:06.73 ID:krPJ4PUBO
「……どうぞ…」
僕は誘いにのってついてきた事を軽く後悔せざるを得なかった。
あんなに来慣れていたこの部屋が、隣に居る人が変わるだけでこんなに異質なものに感じるとは思わなかった。
―――静寂は暫く続いた。
切り出せない僕と元々無口な菜緒。いつもの沈黙でさえ、刺々しいものに姿を変えていた。
僕が胡座を何度目か組み替えた時、丸いクッションを抱えた菜緒の方から、何かが聞こえて来た。
「……グスッ……ヒッ……」
―――泣いてる?
クールで表情をあまり出さない菜緒が、泣いていた。
クッションに顔を押し付けて、細くなってしまった肩を震わせながら――。
「――菜緒?どうした?」
問い掛けてみても菜緒が応える様子は無く、僕は困り果てながら泣き止むのを待った。
もう陽は、完全に沈んでいた。
13 名前:
コゲ丸 ◆CI4mK6Hv9k []:2007/06/10(日) 02:24:04.12 ID:krPJ4PUBO
「……君が……から……」
「―――ん?」
菜緒が喋り出したのは、5分ほど経ってからだった。
その5分が、僕にはとても長く感じられたのは言うまでもない事だろうか。
「……君が…変わった…から……」
「…? 変わったのは僕じゃなくて菜緒のh」
「……勿論…変わったのは…俺…だけど……俺への態度を……変えたのは……君……」
菜緒は、一言一言噛み締めるように話す。
その態度に反論できずに、僕は菜緒の言葉に聴き入った。
「……メールも……学校でも……最初に避けたのは……」
「君……なんだよ…?」
菜緒に見詰められて、僕は思い出していた。
もしかして、避けられていたんではなくて、僕が遠ざけてしまったんではないのか?
女になったという事に勝手にギクシャクして、本当に女体化に振り回されていたのは…僕…?
「ぼ……僕は……」
「……やっと……気付いた…?」
「……君は俺を傷付けた……責任は……取ってくれるよね…?」
その言葉を皮切りに、菜緒は服を脱ぎ始めた。
僕には菜緒が何をしているのか判らず、ただそれを見詰めていた。
終われ!
最終更新:2008年07月21日 21:42