『濃厚エロな厨二病STG』3

遡る事数週間。

なかなか寝付けずに、布団の中でもぞもぞとしているときだった。
急に胸が、いや…全身が苦しくなってきた。
熱い…。
苦しい、というよりは全身が熱い。
――身体が熱い…身体が焼けてるみたいだ…
目を開こうとしても、身体が反応してくれない。
――俺、このまま死ぬのか…?
熱い、熱い、熱い。
自分の心臓の音が五月蝿い。
――どうなってんだ…なんで急に、こんな…。
焼けるような熱さの中、少しずつ意識が薄れていった。

「ふぁ…」
異様に寝苦しかった割に、寝起きは随分とすっきりしていた。
「んー、風邪でも引いてたのかな」
あれ、いつもと何か違うな。
「あ、あーあー…ん?」
声がいつもと違うような気がする。
やっぱ、本格的に風邪引いてたのか?
それにしては、身体は至って快調だしなぁ。
――あれ、そういえば…胸の辺りも。
と、思ったところで気付いた。
まるで、そう――ぼいーん、とでも表現すれば良いのだろうか。
胸を見下ろせば、そこには男のロマンが…じゃなくて。
どうみても、女のソレ――というか、ぶっちゃけて言えば胸があった。
「な、なんで――って、そういや童貞だったんだ…」
こんな事になるんだったら、さっさと捨てておくべきだったなぁ。
我ながら、自分の迂闊さというか、バカさ加減には呆れる。
――ああ、だからあんなに苦しかったのか…。
寝苦しさの原因が判って、少しすっきりしたものの、
次は自分がどんな風になっているのか、ということが気になってきた。
女になりたかったわけじゃないが、やはりどんな容姿になっているのか気になる。
男の顔のまま女になった。なんて事になってないだろうな…。
部屋にある鏡を手に取り、恐る恐る覗いてみる。
「…これ、俺なのか…?」
鏡には、写真で見た若い頃の母さんに、微かに似ている女の子が映っていた。
――本当に、女体化しちゃったんだな…。
結構可愛い顔になっているとは思うが、自分の事だけにあまり嬉しくない。
「あぁそうだ…病院行っておかないとな…」
一応女体化した者は、すぐに診察を受ける事になっている。
女体化した際に、何か異常が出ていないか。という事らしいが恐らくはただのデータ収集だろう。というのが一般の見解だ。
それに、今の男子校には居られないわけだし、転校なり引越しなりしなくてはいけないだろう。
そうなれば退魔協会に生活を補助してもらってる俺としては、
女体化した者が受けられる生活補助は結構ありがたい存在だ。
といっても、数年分だけな上に貰える金額も僅かではあるが。


と、こんな感じで、俺はまたこの町に戻ってくる事になってしまった。
俺が全てを無くした場所。
始まりと、終わりの…もう戻ってくる事は無いと思っていた場所。
退魔協会側は、女体化した際に、肉体的では無く霊体的に異常が出るかもしれない。
という理由から、この町の退魔の任にあたっている人物に預けられる事となった。
なんでも、生まれの地が通常一番霊的に良い。ということらしいが、
退魔の知識の無い俺には訳がわからない。
まぁ、どちらにしろ…俺はこの町で過ごしていかなければならないわけだ。
辛い記憶のある土地だけど、懐かしい面々が居るのも事実だ。
小さい頃によく遊んだ友達とか、近所の人の良いおばちゃんとか。
考えたってしょうがないさ、なるようにしかならない…と思う。
とりあえずは、退魔協会の用意したホテルに向かう事にした。
なぜホテルなのかと言えば、退魔の任にあたっている人の家に行く前に、一晩ホテルで霊的な診察をする。ということらしいからだ。
――たしか蒼条っていうんだったな
電話口で俺を預かってくれる蒼条という家について、受けた説明はそれほど多くなかったが、
蒼条の後継者。と言われる人物について、多少は判ったことがある。
現在は俺と同じ16歳の女の子で、ハーフの為か銀色の髪をしているらしい。
それと、僅か13歳程でこの地の任にあてられたそうだ。
13歳のガキに危険な任をあたえる。というのは異常だとは思うが、
問題は、その蒼条の人間特有の特徴…とでも言えば良いのだろうか。
蒼条とういう苗字は、元々蒼条の力の特徴であった、相乗の効果を増幅させるための言霊として付けられたらしいが、元々が無茶な力だったのかその効果の大きさと、
維持のし辛さから精神力を大きく消費するらしく、理性が極端に薄くなるそうだ。
その為、普段なら出せないはずの、理性の限界を超えた力を出すこともあるらしく、
一歩間違えれば自滅しかねない危険な力の系譜らしい。
といっても、ある程度は修練で制御出来るそうなので、
昔とは違って、自滅する者は少なくなったそうだが…。
しかし、一子相伝っていうのも、家系によって違ったりするのだろうか…?
自滅が起こりやすい家系だけあって、そこら辺の解決策があったりするのかもしれない。
そう思うと、ずっと眠っていた。ずっと諦めていた感情が、俺の中で次第に膨らんでいくような気がする。


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最終更新:2008年08月02日 03:46
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