「なぁ…本当にコレって着けないとダメなのか?」
学校が終わり、聖の家に連れてこられた俺は、またしてもピンチだった。
「ダメに決まってるでしょ。こんなに胸が大きいんだから、着けないと痛いでしょ」
そう、いわゆるブラジャーを着けろと言われてるわけだ。
何が悲しくて、男がブラジャーなんか着けないといけないんだ…
とは思うものの、走ったりすると先端が擦れて痛いのは確かだ。
「でも…さきっちょに絆創膏でも付けておけば」
「却下」
俺のすばらしいアイディアの数々を、ことごとく却下されてる。
「ブラはちゃんと付けないと垂れちゃうんだから、着けなきゃ駄目」
むぅ…垂れるのは、正直言えばイヤだなぁ…。
いや、でもブラを着けるのもなぁ…。
「で、でも…男がブラジャーなんてさぁ…」
「今は女の子でしょ、ほら!観念しなさい!」
いい加減痺れを切らせたのか、ブラジャーを手に襲いかかってきた。
「ま、まて!ブラジャーはイヤだあああああ!」
「う、うぅ…男としてのプライドが…」
無駄に大きめな胸に、ブラジャーを装着されてしまった。
ノーブラだった時と比べて、ちょっと苦しいといえば苦しいが、随分と動きやすくなった。
「それじゃ、次はこっちね」
…何やら小さい布が…。
「そ、それは…ナンデスカ?」
「パンツ」
――そんなことはわかってるって!なんで俺がそんなの着けないといけないんだよ!
と、どうせ言っても聞いてくれないだろうから、心の中で言ってみた。
「はーい、パンツお着替えしましょうねぇー」
「あ、あくまあああああああ!」
虚しい叫びが、屋敷に響き渡っていた。
「う、うぅ…男としてのプライドどころか…もう婿にいけない…」
ブラジャーと、女物の下着を無理矢理着けられた俺のプライドは、粉々どころか原子レベルで粉砕されてしまった。
「いやいや、女の子になった時点で婿は無理でしょ」
うう、非常な突っ込みが胸に突き刺さるよ…。
「なぁ、ところでさぁ…このフリフリした服は何なんだよ」
パンツまで履かされて、放心していたら、いつの間にかフリフリした服を着せられていた。
たしか、ごすろり?だっただろうか。
「うちのメイドがたまに買ってくるんだけどねぇ、私には似合わないからクローゼットの奥に仕舞ってたんだけど、秋は似合いそうだったから」
わざわざそんなもん出してくるなよ…。
「はぁ…まぁいいや…」
とりあえず、飯はまだだろうか。
男としてのプライドはこの際どうでも良いとして、腹減った。
「っと、もうこんな時間ね。そろそろ夕食だから、いきましょ」
なんというナイスタイミング。
「わーい」
思わず子供みたいな返事をしてしまった。
「あ、その後お風呂一緒に入るからね」
……ハイ?
「えーと、今なんと?」
「だから、お風呂一緒に入るから。って言ったの」い、一緒に…デスカ?
女とは言え、元々男だった奴と入って恥かしくないのかコイツは…。
「元男だろうが何だろうが、今が女の子なら別に恥かしくないわよ」
そんなもんなんだろうか…。
っていうか、お前が恥かしくなくても俺は恥かしいのだが。
「俺はやだ、一人で入る」
「女の子の身体って結構デリケートなの。
それに、ちゃんとした洗い方してないでしょ」
それはそうなのだが…ちょっと強く擦っただけで痛いし、丁寧に洗えてないのか、ちょっと荒れてる部分があるのは確かなのだが…。
しかしだな…俺の頭の中は男なわけで…。
「まぁ、別にいいわよ。ご飯抜きでいいなら」
…メシヌキ?
「ゴメンナサイ聖サマ…」
たった数時間で、すっかり調教されてるような気がするのは、俺だけだろうか…。
最終更新:2008年08月02日 03:47