安価『ロールキャベツ』

「ただいま」
 今日は仕事を定時で切り上げ帰宅した私は、いつも通りの帰宅の挨拶をした。
「おかえり~」
 と、キッチンから妻の真理が出てきて言った。そんな真理の姿を見て、本当に若々しいと思った。今日が25歳の誕生日だというのに、ローティーンと言っても通りそうな容姿だ。
 私より20センチ以上は背も低いから150前半くらいか。童顔でショートの似合う彼女を妻に持った私は周りからロリコンと言われても否定のしようもないだろう……私と同い年なんだが。
「誕生日おめでとう」
 そう言ってバラの花束を真理に手渡した。やはり互いの愛の確認の為に、こういうイベントには、はっきりわかるようにした方が夫婦円満にいく、と私は信じてる。
「博史さん、ありがとね」
 そう言った真理とキスを交わした後、花瓶にバラを活ける。
 リビングで息子の玲治がテレビを見ていた。今年で5歳、これからどんな風に成長するんだろうな、そう思いつつ玲治にもただいま、と言った。

 夕食の準備もできたようで、食卓を三人で囲み、
『いただきます』
 と、小合唱。
 今日のメニューはロールキャベツがメイン。真理の誕生日はロールキャベツ、それは結婚当時からの慣習みたいなものだ。
 玲治もロールキャベツが大好きな様子。野菜を食べさせる事ができるから、子供に食べさせるのに丁度いいのかもしれないな。
「最近、真理がお茶に凝ってるみたいだから……」
 そう言って、紙袋から包装されている箱を取り出し真理に渡す。
「え? なになに」
 興味津々といった感じで、真理は箱の包装を解く、中身はアンティークなティーセットだ。正直、鼻血出るほど高かったが、真理が喜ぶだろうと思い購入した。私自身、それで紅茶を淹れて欲しいというのもあったんだが。
「これでお茶が楽しくなりそう」
 そう言って微笑む真理はやっぱりかわいいな、あらためて惚れた。ロリコンでもいい、開き直ってやる。
「昔と比べるとすごいうまくなってるね」
 ロールキャベツを食べながら私は言った。年々うまくなっていく真理のロールキャベツは、もうプロ級かもしれないと感じた。身内補正は否定できないが。
「そりゃあ、思いいれのある料理だしね~」
 当たり前だと言わんばかりだ。まぁそりゃそうか。

 食後、玲治を子供部屋に寝かせ、リビングのソファーに並んで座り、ワインで乾杯した。
「真理……君は25になっても相変らず可愛いね」
 酒に弱い私はワインが入った瞬間、シラフでは言えない本音がこぼれた。素に戻ると赤面ものだ。
「あはは、いつもだけどお酒が入った博史さんかわい~」
 そう言った真理はそんな私をいじりたいのか、からかうように言う。
「でも、博史さんがいてくれたからあたし幸せだよ」
「私も、真理が女になってくれてよかったよ」
 真理の言葉にたまらなくなった私は真理を抱き寄せて大人のキスをした。

 16歳まで童貞だと女体化してしまうという不思議な現象。
 真理もそれで女になった元男だ。
 当時は社会的な認知度も低く、しばしばいじめの原因になったりもした。
 真理は幸いいじめにあわなかったが、それでも精神的にまいる事もあったようで、クラスメイトだった私は悩みを聞いたりしていた。そんなことをしてるうちに惚れてしまったわけだが。
 そんな真理も女になってしまったんだし料理も覚えよう、と最初に覚えたのがロールキャベツ。
 それ以来、真理の記念の料理といえばロールキャベツになった。
 最初の頃は形が崩れたり、味付けの調整がおかしかったりしたが、今となってはいい思い出だ。
 真理の作るロールキャベツのように真理や玲治への愛が熟成していけばいいな、と半ば酔いながら思うのだった。

―終―


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最終更新:2008年08月02日 11:53
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