今日、進路希望調査があった。
高校1年でもう大学選びとか気が早いんじゃないかと俺は思ってたんだが、友人の比呂はそうでもないらしい。
「ボク?ボクはK大に行くつもり」
俺が何気なく聞くとそう即答する比呂。
「神道学科があるからさ、そこで階位取らないと神主になれないんだよね」
と、続けた。
比呂は神社のひとりっ子だから神主になって継ぐというのも当然の流れ、か。明確な目標があるのは羨ましい。
俺は……何がしたいのだろうな……?
とりあえず、どこかの大学に行けたらいいや、くらいの気持ちかもしれない。まだ1年だし深く考えなくていいか、と軽く妥協気味。
そんなある日の事。
比呂の奴が学校休んだので、家も近いし様子を見に行った。
比呂の家、鳥居をくぐって社とその隣に家屋。周りには林……ガキの時、よくふたりでクワガタとか捕ったけなぁ……
そんな感慨に浸りつつ、家屋のインターホンをピンポーン、と。
「は~い」
と、出てきたのは比呂の妹の…
「比呂の妹の……だれだっけ?」
「比呂に妹なんていないけど?」
「そういえばそうか。じゃあ君は従姉妹かなにか?」
「比呂本人だよ」
「んあ!?」
えーとえーと、なんだっけ?16歳まで童貞だと女体化してしまうっていうあれですか?
「あれですか?」
「あれです。女体化しました」
俺のよくわからん質問の意図をうまく汲み取って答える比呂。さすが小学からの付き合いだ。
改めて、Tシャツとジャージを履いてる比呂を見てみると、つぶらな瞳、腰にまで届きそうな黒髪、控えめに主張してる胸。まるで巫女のテンプレートだな。
「それで…どうするんだ?」
「ん、学校は明日から行くよ」
「いや…巫女になるの?」
「神主になるって言ったじゃん。一応言っておくけど女性でも神主になれるんだからね」
「な、なんだってー!!」
巫女服姿の比呂を妄想した俺には衝撃の言葉だった。実は、俺は隠れ巫女萌えだったんだ……
「ちょ、ちょっとどうしたのさ」
と、明らかに落胆した俺に比呂が慌てて声をかける。
「いや…なんでもない」
「もしかして巫女になって欲しかったとか?」
「え?いや、まぁ…」
比呂に見透かされてしどろもどろになってしまう俺。
「しょうがないなぁ…ひとつ、ボクが巫女になる方法があります」
ニンマリとした顔で提案する比呂。
「別の人が神主になればいいのです」
「ん、親戚とか?」
俺の答えに、比呂はチッチッチッと人差し指を左右に振って、
「琢磨、キミが神主になるのです!」
「というか、神社継ぐのって普通親族じゃねえの?」
「そだよ、キミが親族になればいいのさ」
「え?どういうこと??」
「だーかーらー、ボクがキミのお嫁さんになるの!」
ブフーッ。
俺は盛大に吹いた。落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ……1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55……
「ま・じ・で?」
「ま・じ・で!」
ちょっと…いや、かなり戸惑ってるが、気心の知れた親友が異性になってしまったらやっぱり男女の意味でも好きになってもおかしくないよな……見た目もすごい好みだし。OK、覚悟を決めた。
「あー……比呂さん。俺とお付き合いしてください」
「こちらこそ、よろしくね」
俺と比呂は抱き合いキスをした。舌と舌を絡ませ、唾液を交換しあい、俺の胸に当たる比呂の膨らみを感じてた。
昨日まで男だった奴がこんなにかわいいなんて…と、思った長い抱擁と口付けだった。
「琢磨のキス……エロかったね」
「比呂も女になってだいぶエロくなったさ」
境内を手を繋いで歩きながらさっきの感想をお互い言っていた。
「しょうがないから今度巫女の服、着てあげるね」
風に長い髪をなびかせながら、からかうように比呂が言った。そんな表情もまたかわいいな、と俺は思っていた。
翌日。
まだ提出してなかった進路希望用紙にはK大と書いて提出した。
俺も神道学を学ばないといけなくなったからな。比呂と同じ大学いけるのはよりいいしね。あと、早く巫女姿も見たいです。
―終―
最終更新:2008年08月02日 11:59