安価『罠』

「やばいやばいやばい!明日俺誕生日だよ!!!」
教室で慌てふためく男子生徒。
花の童貞15歳、都内の高校に通う東野中である。

「まあ、いいんじゃないか?お前が女体化した姿を見てみたい気もするし。」
はははは、と笑いながら話すこいつは大久保。保育園のときからの友人だ。
大久保は他人事のようにさらっと言う。
お前だって童貞じゃないか、俺はと心の中で繰り返す。
今時の男子高校生にとって、経験済みというものは一種のステータスとして確立されている。
いや、ステータスというより、今後も男として生きるものが持つ勲章として輝いている。
15、16歳の誕生日近辺で童貞ということは、すなわち男を捨てるということを意味していた。

「なんで童貞脱出しなかったんだ?」
「う、一応試してみたんだけど、女性の前に立つと俺の愚息が萎んじゃって・・・」
インポってことではないのだろうが、女性の前に立つと勃たなくなってしまう。
極度の緊張が原因なのか分からないが、そのフニャチンのお陰で今日まで一切経験出来ずにいた。

がっくりと肩を落とす俺。でも相変わらず大久保は楽観的だ。
「女でもいいじゃん!俺が見てみたいからな!」
・・・結局こいつは俺が女になった姿を見てみたいだけなんだ。
友人を心配しない大久保に、若干の殺意が沸いてくる。

授業中、休み時間と所構わず学校全体の女子に懇願して回った。

「お願い!やらせて!」
「俺と一緒になろうぜ!」
「男でいられるのが今日までになっちゃうんだ!」

無論、引き受けてくれる女子はいるはずもなく、皆ドン引きである。







失意を胸に俺は帰宅の途に着く。
こんなキモがられるようなことを言ってしまったら、明日から学校に行けない・・・
不安と失望がぐるぐると目の前に立ちはだかる。
どうしようもない現実。明日には女になっているはずだ。

家に帰り、部屋に篭る。
パソコンの電源を入れ、インターネットのお気に入りのサイトを徘徊する。
新都社、拾得ブログ、そしてvip・・・
常駐しているスレに書き込みをし、電源を切ろうとした。

そのとき、気になる書き込みが俺の目に留まった。

「女体化を防ぐには、オナニーを一晩中続けてけばいいらしい。」

少しばかり気にかかり、そのスレを一通り見る。
何だか色々とSSが投下されていたり、雑談が交わされていたりする。

板名・・・

15、6歳くらいまでに処女でなければ男体化する世界・・・?

何だか夢のような話。俺のいる世界と逆の世界だな、と苦笑しながら見ていた。
その書き込みはスレの趣旨とは反していたため、他の人から無視されていた。
だが俺はその書き込みに妙に興味を示す。
誕生日まで残り5時間とちょっと。

もういまさら女性と性交渉できるわけがない。
最後の悪あがき、その書き込みを信じて、実行することを決意した。







「ティッシュよし・・・エロサイトは・・・取得ブログ!そして○○○(あえて伏字)!」
PCの前に陣取り、俺は自慰行為の用意をする。
ちょっと半信半疑だが、今は藁にもすがる思いでその書き込みを信じる。

静寂に包まれた部屋の中で、小さく擦れる音が延々と続く・・・

―――――――――――――――――

どれくらい経ったのだろう、何発出したのだろう。
途中まで回数を数えていたが、今は数えていない。
女体化とオナニーとか、もうどうでもよくなってきた。
漠然と擦り続けていたため、俺の愚息はとても赤くなっている。
擦りすぎて、とある部分が切れ血があふれ出す。
昇天しても、白い濁液はほとんど出てこない。血と混じって不思議な色となっている。

「うっ、ァぁぁあああああああぁぁ!!!!!!」

李朝は発狂した。
自分が虎の姿になったとは思いもしなかったのだろう。
満月に虎の姿が生える

・・・ってこれは全く別のお話。確か高校2年のときの現代文に出てきたお話だ。

下半身を丸出しにし、俺は夢の中へ果てた・・・








ちゅんちゅこちゅん。

小鳥のさえずりが聞こえ、カーテンの陰から光が漏れる。
どうやら朝になったようだ。

俺は確か発狂して、そのまま眠りについた・・・というところまで覚えている。
愚息は真っ赤になり、所々傷ついていたはず。

「んっ・・・体がだるいな・・・」
体を起こし、股間をまさぐる。

・・・あれ?おかしい・・・

俺は思った。
朝はいつも元気百倍な息子の感触がない。
昨日やり過ぎて縮こまったのかもと思い、ズボンを脱ぐ。
そこには少しばかり生い茂った毛と、一筋の割れ目があった。
よく見ると、胸のところが少しばかり膨らんでいた。

「あ・・・は・・・女か・・・」
知らず知らずのうちに涙が溢れていた。
今日から16歳。ハッピーバースデー、女の俺。さようなら、男の俺。
台所からは、赤飯を炊く匂いがした。








その日、俺は学校を休み、色々と女の子になるための準備をした。
ブラジャーの付け方、生理用品の使い方など、これから来るべきであろうことを母親と共に確認し合った。
俺が女体化した日から、母親の機嫌がいい。
後日父親に聞いてみると、母親は女の子がほしかったようだ。

男の俺はいらんかったことですが、そうですか。
ちょっぴり落ち込んだ俺である。

翌日、俺は学校にで向かう。
最初は職員室に向かい、先生に事情を話す。
こんな世界だから、先生もこういう人の扱いには慣れている。
淡々と今後の学生生活についての注意点を述べる。
俺ははぁ、と生返事で返すことしか出来なかった。

先生の話も終わり、俺は教室へ向かう。
がらっと扉を開けると、教室全体がざわめく。

「あいつ、東野か・・・?」
「昨日来てなかったもんな・・・」
「け、結構可愛い・・・」








皆の意見は人それぞれ、俺を見る目は好奇心に溢れている。
「よう、東野!やっぱ女になったんだな!」
にやにやしながら大久保が近づく。
俺はきっとにらみつける。それでもお構いなしに話し続ける。
「お前、一昨日家帰ったらシコリ続けたろ?」
大久保の意外な一言。え?というような表情で彼を見る。
なんで知ってるんだ?という表情をすると、こう答える。

「あれ書き込んだの俺だから。」
「あぁ?」
どこからともなく変な声が漏れる。
それはまさに意外な一言。なんでこいつがvipに書き込んでるんだ?
「やっぱり、あれ見たんだな。男体化のスレ。」
「ちょっと目に付いてね・・・」
俺はことの成り行きを聞く。どうやら大久保はそのスレに投下しているSS職人&住人であったようだ。
「いやね、お前がヴィッパーっていう雰囲気が出てたからさ、前々から。」
耳元でぼそっと呟く。こんなこと大声で言えたもんじゃない。
確かに自分の言動には、それらしいことが含まれていたように思える。
分かるやつには分かる言葉。それがたまたま大久保に把握されてしまった。

「つーわけで、あれはモチロン嘘!嘘八丁だ!」
「・・・っ!」
「一晩中しこって女体化防げたら誰も苦労しないっつうの!」
「冷静に考えればそうなのだが・・・」
「嘘を嘘であると見抜けない人が(ry」

く、くぅ、騙された!大久保に騙された!
騙されたっていうより、普通に考えれば気がつくこと。

後日、俺が大久保に食べられたというのは後のお話・・・


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最終更新:2008年08月02日 15:25
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