「んっ、朝か・・・」
体に照りつける夏の強い日差しで俺は目覚める。
朝だというのに気温は30度超。おまけに湿気も高い。日本の夏は嫌いだ。
重い瞼を無理矢理こじ開け、べとついているであろう腕をさする。
フサフサっとした感触が手に残る。俺はこんなに毛深かっただろうか。
一般的な人から見たらそれなりだろうが、こんなにフサフサしていただろうか。
疑問に思いながら、自分の腕を見てみる。
「フサフサ・・・ってレベルじゃねーじょ!」
俺の眠気は一気に覚めた。
それは明らかに人間の腕ではなかった。
薄いブラウンと白い毛が混じっており、手のひらには短い爪とピンクのぷにぷにしたもの。
頭を触ると、角ばった耳がついている。
俺は・・・ぬこ化してしまったのだ。
童貞だった男子が女体化してしまうという話は聞いたことがある。
でもぬこ化するという話はひとっこ一つも聞いたことがない。
そしてついでに女体化・・・いや、女猫化してしまったみたいだ。
ぷらぷらとぶら下がるふたつの玉がついていない。
この状況をいまいち信じ切れぬ俺。
頬っぺたをつねってみようとするが、肉球の柔らかい感触が頬に伝わるだけで意味がない。
俺は尻尾を振り振りさせながら今後のことについて冷静に考えた。
こんな状態で両親に「ぬこになりました」って言っても信じてもらえる訳がない。
その前に、言葉が通じないであろう。
「ニャー」とか「ゴロゴロ」とか、どうやって人間が理解しろと。
とりあえず悟った。旅に出ようと。
俺の冒険はここから始まった。それはまた後のお話・・・
最終更新:2008年08月02日 15:30