安価『罰ゲーム』終章

「朗読でいいんだね?」
「異論はない。」
俺への罰ゲームの内容が決まった。

1・一週間後
2・コンビニで
3・大貧民の奴が(芋野)
4・エロ本を立ち読みし
5・朗読する

まったく、うまい具合に内容が決まったものだ。
こんなことするなんて、後にも先にもないだろう。
コンビニでエロ本立ち読みくらいならまだしも、朗読ときたものだ。
恐らくこいつらのことだから、全頁読めとかいいそうだな。
ま、どんなことが来てもある程度覚悟は決めている。
後は読む本を待つばかりだ。

「峠、読む本は結局何になるんだ?」
腹を掻きながら河原辺が言う。早くしてくれとせかしてるようにも見えた。

「ちょっと待てよ・・・何々?『SMスナイパー』・・・?」

一瞬場が固まった。
ピザッツとかBUBUKAとかノーマル系ならまだいいものの、SMスナイパーときたか・・・。

「つうか、その雑誌は近所のコンビニにあるのかよ?」
場を切り裂くように、俺が疑問を投げかける。
正直、SMスナイパーなんて雑誌みたことない。
最近見るのは巨乳ものや熟女ものばかりだ。
そんなコアな雑誌がコンビニに置いてあるのだろうか。

「そういや、近所にSMとか鬼畜系が趣味なオーナーがいるって、ウチのばっちゃが言ってた。」
そう言うのは、横にごろんと寝転がっている高野。
なんでお前の家のばあちゃんがそんなこと知ってるんだ。
・・・ま、今はそんなことどうでもいい。

「どこだ?その店は?」
目を輝かせながら東海林が言う。
明日の遠足を待ちきれない子供のように無邪気な瞳をしている。

「経堂駅前のコンビニだったな・・・確か。」
「よし、一週間後経堂駅前のコンビニに行くぞ!」
はいはい、経堂駅前のコンビニな。
それまで俺は訓練しときますよ。

「芋野、絶対やれよな。 た と え 何 が あ っ て も な 」
釘をさすように河原辺が言う。
きっと睨みつけながら言っているが、別に凄味も何もない。
子犬が吠えている程度にしか思えない俺がいる。

「わかってるよ、うるせぇな。」
巻き舌気味に返す。

決戦は一週間後、経堂駅前のコンビニで行われる。



・・・一週間後・・?

俺は何か大変なことを忘れていないだろうか・・・?
まあ、いいか・・・。



カーテンの隙間から洩れる、夏の強い日差しで目覚める。
あの罰ゲームまであと5日。
今日もコンビニへエロ本朗読の練習へ行かなくてはならない。
正直面倒だし、なんだか自分が嫌になってくる。

掛けていたタオルケットを蹴飛ばし、ベッドから降りる。

ふわっ

・・・なんだろう?

体が妙に軽いし・・・目線がいつもより低いような・・・?

・・・!

シマッタ・・・


それに気付いた時には、すでに遅かった。
あの時俺が忘れていたこと。

そう、俺はまだ童貞だったということ。

あの夜から2日後に俺は誕生日を迎えた。
その時点で童貞だった俺は、もちろん女体化。
鏡で自分の姿を確認する。
150センチにも満たないであろう身長。
どう考えても小学生にしか見えないロリフェイス。

これでSMスナイパー立ち読み・・・



女体化した当日、俺はどうにかして学校に出る。
俺の姿を見た4人は、もちろんお約束の反応をみせる。
皆目を見開き、俺のことを舐めまわすように見る。
俺が童貞だと思ってもいなかったのだろう。

「お前・・・女になるなんて思ってもなかったぜ?」
「それにしても、可愛くなったな・・・」
「男の時の芋野からは想像もできねぇな。」
「・・・可愛い(ボソッ)」
昼休みになり、4人が俺のところに一斉に集まる。
上から下から4人の目線が俺のところに注がれる。

(・・・こうやって見られるのも、悪くないな・・・)

見られるということに快感を覚えるのは、まだ後のお話。

罰ゲーム実行まで後5日。
絶対に逃げられない戦いは、刻一刻と迫っていた。



時間は一気に飛んで、罰ゲーム実行の当日。
俺達5人は小田急線の準急電車に乗り、経堂駅を目指していた。

「しっかし、お前本当にいいのか?」
「ああ、かまわん。」
休日の下り線の列車。思ったより人は乗っておらず、俺達はゆっくりと座席に座ることができた。
手すりに肘をかけ、河原辺がにやにやしながら俺を見て言う。
電車まで乗ったんだ。ここまで来て「やっぱりやめよう」なんて言えるわけがない。それに俺のプライドもある。
ここまできたら、やってやろうじゃねぇか。

「間もなくぅ、経堂ぅ、経堂ぅです。お出口は~。」
電車の減速とともに、アナウンスが入る。
すくっと立ち上がり、右側のドアに立つ。

勢いよく開け放たれるドア。
今、勝負の土地に俺達が足を踏み入れる・・・。



第六話



、経堂駅前コンビニ







「エアロスミス~」
コンビニのドアが開くと、店員のやる気のない声が耳に入る。
これが噂に聞く『経堂駅前のコンビニ店員か』と峠がつぶやく。

休日のコンビニ。それほど人はいない。
俺達は目的の18禁コーナーへ向かう。
そこにはパチンコ雑誌やらエロ本やらが乱雑に置かれている。

「えっと、SMスナイパーは・・・っと。」
河原辺が念入りに探す。
若い男4人と、小学生のような女1人がエロ本を探っている様子は、傍目から見たら怪しいとしか思われないだろう。
だが誰も注意はしない。
注意役である店員も、ぼーっと突っ立っているだけ。
実際のところ、オーナークラスの人でなければ注意はしないのだろう。

「お、あったあった・・・」
本棚の奥底に、目的の本はあった。
亀甲縛りの女性が表紙のその雑誌。まだエロを覚えたての俺たちにとって、少し抵抗のある世界だ。

「それじゃ、俺達は向こうで見てるからな。」
「安価は、絶対だ。」
「楽しみにしてるぜ。」
「大声で読めよな。」
そう言うと、4人は雑誌売り場から遠ざかった。
一人ぽつんと取り残される。
店の中には、店員一人、買い物客4人(母と子、高校生くらいの人2人)・・・そしてあいつらだ。

俺は一回深呼吸し、それから雑誌のビニルテープを勢いよく引っ剥がした。

いかれたゲームの始まりだぜ。



すぅっと大きく息を吸う。
上を向き、羞恥心やらを全て捨てる。

よし・・・いくぞ!

「オラオラ!この雌豚がっ!」
「いやぁ、やめてください!」
「聡子の恥部は、男の罵声に応えるかのように、甘い蜜がどんどん溢れ出す。」

俺は精一杯の声で朗読を始めた。
コンビニどころか、経堂駅まで響きそうなくらいの大きな声で。

周りにいた人は、もちろん驚愕の反応。

お菓子を買っていた母子は、持っていたカゴを投げ捨て店を飛び出す。
傍らで雑誌を立ち読みしていた高校生二人組は、瞳孔が見えそうなくらい目を見開いてこちらを直視する。
ぼけっと突っ立っていた店員は、レジから身を乗り出して俺の姿を確認する。

そして例の4人は・・・!

・・・

いねぇ!

逃げやがった!

俺は必死に奴らの姿を確認する。
しかし店中見回しても、どこにも見つからない。

くそっ!くそっ!くそっ!



結局、俺は罰ゲームを消化したが、やつら(証人)が逃亡してしまったので、不成立となってしまった。
その後、俺は店員に呼び止められ、思いっきり注意された。
年齢確認されたのは言うまでもない。

「初めてだからいいものの・・・こういうことは本当にやめてくださいよ?」
後から来た店長に強くお灸をすえられる。
初めてだからいいもののってことは、こういうことをやっている奴が他にもいるってことなんだろうか。
警察を呼ばれそうになったが、何とかそこは俺の技量でうまく流すことができた。

それにしても・・・あいつらめ・・・

「アランドロン不在でしたぁ~。」
店を出る際、店員に嫌味たっぷりに言われる。
俺だって、こんな店二度とくるかっつうの。

でも・・・でも・・・

見られるってのは・・・結構快感なんだな・・・

帰りの電車の中、俺の体はずっと火照ったままであった。
今までやる側に立っていたのが、やられる側に立ったからなのだろうか。
今までにない感覚が、俺の体を蝕んでいく。

家に着くころ、俺は違和感を覚える。
なんだか・・・ショーツが濡れている・・・

そういえば・・・電車の中でもずっと股のところに手が行きっぱなしだったな・・・
隣の親父はいやらしい目で見てきたし・・・でも・・・悪くなかった・・・

それから、俺がドMとして認知されるまではそう遠くなかったという。


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最終更新:2008年08月02日 16:01
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