現代文の授業はいつも退屈だ。
教科書には訳の分からん文字が羅列し、先生はずっと小難しいことばかり話している。
その退屈さ、先生の低いダンディな声が子守唄となって、俺はいつも夢の中へダイヴしている。
(・・・ん、なんだこれは・・・?)
チャイムが鳴り、現代文の授業は終わった。
そのチャイムとともに、ほのかな香りが俺の鼻についた。
間違いなく先生の加齢臭ではないだろうし、前の席の人の屁でもないだろう。
少しばかり甘い匂い・・・香水の匂いだ。
机に突っ伏していた体を起こし、背伸びをしながら辺りを見回した。
「あれ・・・?孝也・・・今来たの?」
先程までいなかったはずの友人が、いつの間にか来ていた。
孝也は長い髪をなびかせながら、俺の隣の席にどかっと座った。
(こいつもこの姿がすっかり板についてきたなぁ・・・)
頬に手を当てながら、俺はぼーっと眺める。
あれほどごつかった男が、こんなに可愛くなるとは思いもしなかった。
「・・・ところで、なんで1限でなかったんだ?」
ふと疑問を投げかける。
「いや、化粧に時間がかかっちゃってね。」
茶目っ気たっぷりに、ウインクしながら答える。
俺は思った。
ああ、こいつもどんどん女性になっていくんだなぁ、って。
最終更新:2008年08月02日 16:02