安価『バニーガール』

「なんでこんなことしなくちゃいけないんだろ・・・ブツブツ・・・」

小声で文句を言いながら、俺は椅子に座っていた。
人が来たら「いらっしゃいませぇ~」とか「ご注文は?」とか言わなければならない。
無駄に装飾され、どこかエロチシズム漂う空間が展開されている。
俺は一刻も早くその場所から抜け出したかった。

学校祭でやるような質の低いコスプレ喫茶に人が来るわけがない。

・・・あ、いや、前言撤回。
結構俺らのクラスには中々上ランクの女子が多い。
(昨年女体化した俺もそのうちの一人として数えられているみたいだが)
俺らのクラスがコスプレ喫茶をやるという話が出たときは、学校中の男子が狂喜乱舞した。

「おいおい、田無のメイド姿が見れるかも知れんぞ!」
「もしかしたら、小平のナース姿とか・・・」
「も、萌えー!」

あらぬ妄想を繰り広げる男子一同。俺らのクラスでも似たようなものだった。
何を着せるか、男子全員集まり衣装選択をする。
どんな衣装になるか不安な俺。だけど周りの女子は妙に乗り気だ。
「アタシ彼氏にチャイナ服着てくれって言われてるんだけど~?」
「着てよ着てよ!アンタの艶っぽい足を見せて売り上げ倍増よ!」
女子のことを気遣った俺にちょっぴり後悔の念が押し寄せる。

何やら見たこともない雑誌を広げている小手指。
そして小手指の周りに群がる男子。
女子を見ながらにやついている男子の目線が非常に危なかった。



今年もやってきた学校祭の季節。
俺がウサミミを付け出してから丸々一年が経った。
相変わらず毎日ウサミミをつけて登校し、俺の人気は急上昇。
ツンツン顔の俺から幼い言葉が出てくるというギャップが人気の秘訣らしい。
先生からも色々な意味で可愛がられるようになった。

「おい飯能!お前この役やってくれないか?」
突然後ろから声が掛かった。
なんか去年も同じことがあったような気がするとデジャヴを感じていたが、それほど気にせず後ろを振り向いた。
悪友、小手指とその仲間達が何かを持ってにやにやしていた。
「ウサミミをつけた今、お前にならこれが最高に似合うはずだ!」
俺のところに近づき、何かを手渡してきた。
「・・・これはなんなのれすか?」
ウサミミをつけた状態の俺。話し方が相変わらず幼女っぽくなる。
小手指が手渡したものを見る。
ふわふわとした円形状の白い物体。
ぱっと見た感じでは何かは把握できなかった。
「ウサミミをつけたお前なら最高に似合う!ソレはウサギの尻尾だぜ!」
小手指が目を輝かせながら言う。他の男子も俺の尻尾をつけた姿を今か今かと待ち構えている。
「これはおしりのところにくっつければいいんでしゅね?」
その物体をお尻のところにくっつけようとする。
が、どうやってくっつければいいのか分からない俺涙目。
「後で衣装と一緒にくっつけておくから、今日はセロテープでね。」
そういうと、教卓からセロテープを持ち出し、それにテープを貼り付けようとする。
素材のせいなのか分からないが、中々セロテープがくっつかない。
5分ばかり格闘するが、結局くっつかなかった。

「ちぇっ、飯能のバニーガール姿見たかったのに・・・」
ぶつくさと文句を言いながら小手指が離れていく。
そんなんだったら最初から衣装用意しとけよと、呟く俺なのであった。



学校祭の前日、ようやく俺の衣装が完成した。
衣装を完成させた小手指の目は、妙に輝いていた。
「ほれ!飯能!完成じゃ!」
自信満々に白い紙袋を俺に渡す。
中を覗くと、網タイツやら、何やらと、教育上よろしくないような衣装が入っていた。
「こてさし・・・これはせんせいにおこられないのでしゅか?」
「まぁ、そんなことどうだっていいじゃないか!早く着替えてこいよ!」
俺は言われるがままに女子トイレへと向かった。

「うっわ、これはエロイwww」
着替え終わった俺が一言呟く。
正直、この姿でトイレから出るのが恥ずかしかった。

今日は学校祭の前日。多くの人が廊下を歩いている。
皆に見られたら恥ずかしいったらありゃしない。

「で、でも皆のためなんだからね!!自分ファイト!」
俺は意を決してトイレのドアを開けた。
するとどうだろう。ざわざわとしたどよめきが廊下に響き渡る。
やっぱり俺の衣装がまずいみたいだ。
俺を見る皆の目線が痛々しく突き刺さる。
顔は間違いなく紅潮している。ずっと下を向いていた。
穴があったら入りたい・・・そんな気持ちで自分の教室へと帰っていった。



「畜生、教室に帰ったら断ってやるんだから・・・」
そう思いながら、教室のドアを開ける。
待っていましたと言わんばかりに、クラスメイト全員が俺に注目する。

「うお、飯能すげぇぞ!」
「めちゃめちゃエロスwwww」
「飯能さん、似合ってるよ!」
「こ、これは萌えとは言えないですな!飯能氏!」

クラスの皆が俺のことを見て騒ぎ出す。
相変わらずふにふにっと揺れるウサミミ、そしてぷるぷると震える尻尾。
網タイツを履き、上乳がはみ出し、そして毛が見えそうなくらい際どいレオタードを着用。
首にはピンクの蝶ネクタイ、そして両腕に白いカフスをつけている。
どっからどうみてもキャバレーのお姉ちゃんだ。

皆に騒がれて、ちょっぴりいい気分になってくる。
何だかこの役でも悪いような気がしなくなってきた。
俺は恥ずかしくなり、ちょっとだけ頬が赤くなった。
「その恥ずかしがる姿、反則的までに似合ってるぜ!」
小手指とどめの言葉。俺はこの役をやる気になった。

・・・あれ?これも昨年同じようなことがあった気が・・・まぁ、いいか・・・

「そ、それじゃやってみようかな・・・?」
そう小声で呟くと、一気に教室が沸きあがった。
「べ、べつにやりたくてやってる訳じゃないからね!」
顔を赤らめながら言う。教室はさらにヒートアップ。
顔に熱が帯びてくるのが自分でも分かっていた。すごく恥ずかしい。
その場の流れに任せて、俺はこの役に決まった。



「今思うと、はめられた気が・・・」
煽てられるとすぐ調子に乗ってしまう俺。
去年とまったく同じ展開を思い出せなかった自分自身を恨んだ。

「それじゃ、始まるよ~」
扉付近の案内係の人から声が掛かる。
様々な衣装を着た女子達から張りのある返事が飛ぶ。
周りを見ると、皆妙に張り切っている。

チャイナ服を着た下井草。彼氏からの借り物らしい。
宣言どおりに、すらっとした足を惜しげもなく披露している。
大人びた顔立ちをしている下井草には適役だ。

次は学校内で話題の美少女、田無。彼女はメイド服を着ている。
メイド喫茶でアルバイトしているらしく、衣装はアルバイト先からの借り物という噂を聞いた。
そう考えると、メイド服は妙に彼女に似合っている。
それ以前に、彼女は何を着せても似合うのだろうケド。

そして小平。彼女はナース服に身を包んでいる。
「姉貴からの借り物だから!」と恥ずかしそうに言っていた彼女。
先日、ドンキホーテで周りを気にしながらナース服を買っている彼女を見たのは内緒だ。

他にも多様多種の衣装に身を包んだ女子生徒がいる。
やる前は文句を言いながらも、いざとなったらやるんだもんなぁ。
まだ男の意識が残っている俺。こういうときは女子の方が潔いんだな、と痛感した。



開始と同時に客がぞろぞろとやってくる。
そんなに宣伝したつもりはなかったのだが、予想以上に人が来る。
しかも男ばかり。まあ、それが普通だが。
やっぱり女子生徒の質の高いクラスだからだろう。俺も含m(ry

あ、お客が来た!
田無や小平が元気よく声を掛ける。
さてさて、俺も挨拶をしなくては・・・

「なんで来たの?」

一瞬場が凍りつく。
田無や小平たちから笑顔が消えた。
教室に足を踏み入れた男子生徒もきょとんとしている。

いや、自分自身でも驚いている。
意識せずにこんな言葉が出てきているのだ。

(・・・これもデジャブだなぁ・・・)

そう思いながらも、俺は謝ろうとする。
が、意識とは反して、どうもツンツンした言葉が出てくる。

「ほら、さっさとメニュー決めなさいよ!」
俺はそういうと、メニューを客に投げつけた。
相変わらずその男子生徒は呆気に取られている。
他の女子も何が起きたかよく理解できていない。



去年もそうなのだが、今年もやっぱりおかしい。
何がおかしいって、小手指が持ってきたものには不思議な力が入っているということ。
昨年はネコミミつけて幼女言葉、そして今年はなんだ?ツンデレか?
客が帰る寸前になったら「え、帰っちゃうの?」とか言うんだろ?
俺はそう思いながら、接客につく。

コーヒーを注文した男子生徒はびくびくと震えながらコーヒーを飲んでいた。
明らかにバニーガールの俺を怖がっている。
彼の目には涙がちょっとずつ溜まっていった。

「ちょっと、飯能!お客泣かせちゃ駄目でしょ・・・」
田無から怒られる。そうは言っても、と反論しようとしたが、油に火を注ぐような発言をしかねないので、両手を合わせてごめんのポーズをとった。
気をつけるんだよ、呆れ顔で言われる。
俺は頭をぽりぽりと掻きながらちょっぴり反省していた。

・・・って、俺が反省する必要はない。小手指が原因なのだから。
とりあえず学校祭が終わったら小手指をぶん殴っとこう。

ふつふつと湧き出る怒りを抑えながら、次々と接客をこなす。
だが俺のツンデレバニーガールは一向に収まらない。
むしろひどくなっている。

「ほら、勝手に持ってきな!」
「・・・帰っちゃ嫌・・・(はぁと)」
「そこ、さっさと注文しなさい!」

昨年に引き続き、俺はバニーガールではなく、ツンデレバニーガールとして確立していた。
午後になると、午前中に来た男子がたくさん来る。
俺はそいつらを罵るだけ罵り、帰り際にデレを見せる。
どうやらそのギャップがいいらしく、多くの男子生徒が俺らのコスプレ喫茶に足を運んでくれた。



その後、俺のキャラクターが確立された。
男時代はただの一般凡人として平々凡々な人間だったが、女体化してから一変。
昨年までは幼女言葉を話すツンツン少女だったのだが、今年の学校祭を終えて、超ツンデレ少女というキャラクターになった。

そうそう、小手指をぶん殴ってからこの現象について聞いてみたのだが、全く分からないとのこと。
試しに小手指にバニーガール姿になってみたのだが、言葉変らず。ウサミミだけくっつけてみても変らず。
クラスメイトの女子に着てもらっても、何にも変らず。
結局、俺だけの時に変化するという特異的なモノだということしか把握できなかった。

流石に、毎日バニーガール姿で学校に登校するということはしていないが、希望があれば学校で着替えて、その姿になる。
今年の学校祭以来、俺はコスプレというものに興味を持った。
俺だけではなく、クラスの女子ほとんどがコスプレ好きとなった。

放課後の教室はコスプレ会場と化す。
学校内外から、カメラを持った男子生徒が多々押し寄せる。
先生も黙認している。というか、先生も混ざって写真を撮っている。
放課後の教室は、異様な空気と熱気に包まれる。

そこに俺のバニーガール姿があったのは、言うまでもない・・・。




120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2007/09/23(日) 02:43:04.64 ID:xiMBnkMk0
>>118
パンピーってなんすか?wwww
そしてフリーダムタイムとは???


でも近所の路線だったらある程度は分かりますよね?
次回作はどこにしようかなぁ~
誰か路線書き込んでくれないかな?wwww


主人公 飯能(はんのう)
 西武池袋線、一応終点、田舎

悪友 小手指(こてさし)
西武新宿線、各停の終点駅でもある

PC研 石神井(しゃくじい)
西武池袋線、石神井公園っていうでっかい公園がある

チャイナ服 下井草(しもいぐさ)
 西武新宿線、高田馬場の近く

メイド服 田無(たなし)
西武新宿線、「魂のルフラン」ではなく「田無のルフラン」に聞こえる俺は限りなく鉄オタw

ナース服 小平(こだいら)
西武新宿線、東京都小平市ってあったよね?

これはマニアックすぐるwwwww


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最終更新:2008年08月02日 16:29
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