ある冬の日にそいつはやって来た。
手のひらサイズの白いサルのような見た目。ふさふさの毛並み。愛くるしさを振り撒くそいつは…
【ポケット雪男→女】
巷で大ブームらしいそれを、引きこもりの俺はネットで速攻で注文した。
シーモンキーとかウーパールーパーの世代だってこともあるが、一番はやっぱり寂しかったのかもしれない。
早速届いたそいつを檻から出してやった。人懐こく指にじゃれついてくる姿は、やはり可愛い。出掛けることもない俺は、飽きもせずに毎日毎日遊んでやった。
異変が起きたのは数日後だった。朝起きると、昨日しっかり暖房を焚いて寝たはずなのに、どういうわけか部屋が寒い。
とりあえず暖房を強めて部屋を見渡すと、冷凍庫からスモークのごとく冷気が吹き出している。
「おいおい、どうなってんだよ、これ…」
思わず独り言を漏らしながら冷凍庫を開けてみる。そして中には、純白の和服に身を包んだ手のひらサイズより一回り小さい幼女が、ニコニコ顔で鎮座していた。
アホの子よろしく自分の顔をペタペタと触ったあと、頬を思いっきりつねってみた。痛い。
その様子が可笑しかったのか、手のひら幼女がくすくすと笑っている。口許に袖を当てて、上品に。
それをただポカンと口を半開きにして見ていた俺だったが、ハッと我に帰った。
「いや、なんも面白いことなんてねーよ…」
ボソッと呟く。
すると手のひら幼女はごめんねとでも言いたげにオロオロしていた。なんか可愛い…じゃなくて、
「お前、俺の言葉がわかるのか?」
コクコクと頷く手のひら幼女は、少し嬉しそうな顔をしていた。
そんな感じで俺と小さな雪女の奇妙な生活は幕を開けた。
最終更新:2008年06月11日 23:22