『須藤と中崎』(3)

18 名前:名も無いFLA屋 ◆upb/RTungI []:2007/07/20(金) 02:03:00.94 ID:5343rhjm0
いつも通りリアルタイム更新ですー
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女になってから、僕自身、わけがわからない遠慮や恥じらいが猛烈に増えた。
水泳は6月から始まってはいたが、…もうなんというか、プールサイドで見学をしていたけど、どこに目を向けて良いやらわけがわからないとか、
学校以外の外出がなぜかすごく気が引けてしまうとか、近所の人に顔を見られたくなくて通学も親が車で校門前まで送ってもらっていた。
なんだかんだいいつつ僕の交友関係は女性化以後、不安定ながらもかなり広がった。…のかもしれない。
ただ、僕としては自分のポジションがはっきりしないというか、男子には若干遠慮され、女子の会話にはいまいちついていけず、
宙ぶらりんなまま徐々に宙ぶらりんな生活に慣れていった。
女子の会話というのは案外恐ろしい。以外にもずけずけとアレな話をするし、正直そっち方面は知らない単語だらけだし。
てゆーか、赤面してると散々弄られるし。お洒落や趣味の話になるとついていけないし、陰口の妙なパワーバランスができてるし…。
それでもこの2、3週間でまともに話したこと無かった女子とそれなりに話せるようになったというのは割とがんばったと思う。
以前からの男友達とも、相手が多少遠慮しようと極力話すように心がけて(というか、女子と話すのが億劫でもともとの友達のところに逃げていた節もあった)いたので、
話し相手は確実に以前より増えていた。






27 名前:名も無いFLA屋 ◆upb/RTungI []:2007/07/20(金) 02:45:20.70 ID:5343rhjm0
そうこうしているうちに中学2年の1学期のもっとも大きなイベントである宿泊合宿がやってきた。
このイベントの趣旨を大岸先輩が簡単に説明した話によれば、
土日を使って青年森の家という宿泊施設に行き、オリエンテーションやら、カレー作りやらをやらせて生徒に楽しい印象を刷り込みながら、
進路を考えるにあたってどうだとか、こうだとか、中学2年生のすごし方で一生が決まる的なお話をいっぱいきかされる行事だという。
ちなみに、このイベントは2年生全員だけが対象なのだが、1年と3年もどこかしらで土日を返上しており、その振り替え休日は終業式を2日早めることで埋め合わされるということらしい。
土日学校に出てきて翌月曜に振り替えが無かった場合、今までは友達とぶーぶー言っていただけだったが、谷脇さんをはじめとする割ときっちりした女子の友達のおかげで、
その辺の日程事情に強くなった気がしないことも無い。

行きがけのバスはクラス別で、前6クラス。ウチのクラスは3号車で僕と中崎は隣同士に座った。
出発前からバスの中は騒がしく、既にお菓子とかの交換が始まっている。
バスが出発する頃には僕の手元にもどこぞ席の女子から回ってきたキャラメルが届いたが、誰がくれたのかよくわからなかった。
「なぁ、ナカ。今回の合宿。俺、どこの部屋に寝泊りするんだろ?」
「はぁ?しおりに載ってるだろ。」
「いや、俺の名前は載ってないんだ。」
「おまえ、なんで載ってないの知ってて先生に聞いてねぇんだ?」
「あぁ、うん。聞いてないつーより、決まらなかったつーか。男子部屋と女子部屋とどっちに入れるべきか先生も悩んでたっぽくて……」
「あー。…それはありそうだなー。」
カバンの中から菓子を取り出そうとして、ふと中崎が僕の顔をまじまじと見ていることに気がついた。
「何だよ。」
言われて中崎は急に目線をずらした。
「いや。……お前、髪染めたか?」
僕は黒かりんとうの袋を開けて言った。
「…染めてねーよ。」
「…そうか。」
僕が黒かりんとうを食べ始めたのを食べ始めたのを見て、中崎は何も言わずかりんとうの袋に横から手を突っ込み、喰いはじめた。
「……須藤。お前、もうちょっと可愛げのある菓子もってこいよ……。」
ぼりぼりぼりぼり。






33 名前:名も無いFLA屋 ◆upb/RTungI []:2007/07/20(金) 03:33:32.26 ID:5343rhjm0
1日目、到着と同時に1時間ほど開会式や施設利用のオリエンテーリングで体育館っぽいところに閉じ込められっぱなしだった。
その後、各部屋へ移動、荷物を置いて、私服に着替える。結局僕は井上先生に誘導されて誰かが風邪を引いたときなどに使う予定だった予備室に荷物を置いた。
予備室もほかと同じ8人部屋だが、保健室の先生と僕の二人だけしか居なくて、先生は荷物だけ置いてどこかに行っているようだった。
昼ごはんは外のキャンプ施設でカレーを作る。この班分けは結局部屋の班分けとは別途に男女混合の班にしたらしく、
ことうちのクラスは井上先生の気遣いがフルに発揮された班編成となっていた。
それはもう見事に女子の間のパワーバランスから、一人一人の相性や、弄りキャラ、弄られキャラのバランスにいたるまで的確すぎる上に一人も仲間はずれの出ない見事な班編成だった。
僕の班は他班より一人少ない5人だったが、割りとリーダーシップが取れてかつ面倒見がよい谷脇さんを班長に、僕としてもそれなりに話しやすい割と物静かな原さん。それに男子バスケの中崎と平岡。
そこに僕を加えた5人。かなり僕に対して神経を使ったのだということがわかる。井上先生のベテランっぷりには本当にいつも助けられてばかりだ。

が、流石に料理の腕までは考慮されていなかったらしい。
谷脇さんは包丁で手を切りそうになるし、中崎はなぜかお米のとぎ汁を鍋に移し変えるし、原さんは米を炊くときの水の量を間違え、平岡はその飯盒を豪快に薪でバーニングさせて焦げてるけど芯の硬いご飯を作った。
「須藤。…お前、ホント料理うまいな。」
ちがう。違うぞ中崎!お前らがひどすぎるだけだ!
「ジャガイモの皮をそんなにきれいに剥けるってすごいと思うよ。うちらよりはるかにうまいじゃん。」
と、原さん。
「親の帰りが遅かったから昔から手伝いとか下ごしらえとか手伝ってたからね…」
結果、どろどろびちゃびちゃでちゃんと野菜に火が通ってないカレーを食べる羽目になった。


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最終更新:2008年09月04日 17:28
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