お盆。先祖の霊が帰省ラッシュで込みあう時期。
俺も先祖の墓参りと、久しぶり補正の掛かった孫ボーナスを目的に、父母とともに田舎の祖父母の家に向かっている。
それにしても、無人駅って危ないよな。それとも田舎の人は都会人よりも正直なのか。ああ、美しき日本はどうなるのだろう、などと本心でもないことを考えながら歩いていると目的地に到着したようだ。
父が呼び鈴を鳴らす。
「父さん、母さん、帰ったぞ」
「おぉおぉ、お帰り。ん、友弥はどうした?一緒に来るんじゃなかったのか?」
「あ、あの・・・爺ちゃん久しぶり。」
「友弥に妹なんておったか?」
「いや・・・俺が友弥です・・」
「え?と、友弥、まさかあれか?」
「うん・・・」
ああ、なんだこの気まずい空気は・・・家族に初めて知られたときと同じだ・・・
「あらあらあらあら、友ちゃん、女の子になったのね」
婆ちゃんは何だか嬉しそうにしてる。やっぱり女の子のほうがよかったのだろうか。そういえば母も同じような対応だった覚えが。
なんとも複雑な気分である。
そして墓参りをし、先祖に女になったことを報告した。先祖の人たちは怒ってないだろうか。
「そんなことじゃ怒らんさ。まあ仕方の無いことだしな」
「もしかしたら、友ちゃんが女の子になって嬉しいのかも知れないわよ?」
婆ちゃんじゃあるまいし・・・
その後、親には秘密の孫ボーナスを貰ったり縁側でスイカバーを食べたり婆ちゃんに浴衣を着せてもらったりした。
この浴衣は、俺の彼女ができたときに着させるために用意したのだという。準備がいいことだ。
一泊して翌日、浴衣ときれいな髪留めを貰って家路についた。
今度の夏祭りはこれを着てって、孝志にクレープやらかき氷やらをせびりまくろう。
終
最終更新:2008年09月06日 22:00