安価『下駄箱』

「孝志ー帰ろうぜー」
「掃除当番だから昇降口で待ってろ。」
「えーサボれよー」
「ほう、それも悪くない。」
「せんせー、だんしがまじめにやりませーん!」
「お前がサボれと!」
こんな漫才も毎日のように・・・っておいコラそこの名も無きクラスメイトたちよ、生暖かい視線は止めてくれと何度言ったら!
「友弥、そういうのはせめて小声か人目につかないところでやってはくれないか。空気がピンク色になって適わん。」
「そーだそーだ、放課後特有のあの若干の憂いを帯びた夕焼け色の空気を返せ!」
話し掛けてくる男子A&B。男時代にはそれなりに喋ってたのだが名前などくれてやるか。
このクラスも既に7割が女子だ。記憶によればこいつらももう誕生日は過ぎてるようだが・・・まあ無駄な詮索は野暮だろう。別に興味もないし。
「うっさい、悔しかったらお前らも・・・ってあれ、孝志は?」
「掃除に言ったんじゃないか?お前が俺達とダベってる間に。」
「えぇ!?」
声もかけずに行くなんて!もう!仕方ない、昇降口で待つことにしよう。
ふと孝志の靴入れを見る。
「・・・なんだこれ?」
靴の上に乗っている白い物体。手にとって見ると・・・
「手紙?」
白い便箋に赤いハートマークのシール。えらく古典的だが、これは紛う事なきラブレター!?
で、でも孝志には俺がいるわけで、えっと、
「よっ、待たせたな」
ビクゥッ
いきなり肩に手を乗せられ体が跳ねる。
「どうしたそんなに驚いて・・・って何だそりゃ。手紙か?」
「あ、あぁこれね、お前の下駄箱に入ってて、見つけちゃって、どうしたもんかなーと・・・」
「どれどれ・・・ってこれ俺宛じゃないぞ!」
「んぇ?」
変な声が出た。
「隣の奴だ。宛名があるな。間違えて俺のところに入れたんだろうよ。」
「ふぇ、よかったぁ・・・」
安堵して孝志に寄り掛かる。
「どうしたんだよいきなり。」
と言いながら頭を撫でるまいだーりん。こうしてもらうと不思議と心が落ち着く。
「だってラブレター・・・」
「あのなあ、俺は今お前と絶賛交際中なんだぞ?」
「でも・・・」
「でもじゃない。何があっても俺はお前を裏切らない。分かったか。だから安心しろ。」
「・・・うん・・・」
なんか改まって言われると恥ずかしいな。
「さあ、帰ろうぜ。たい焼きでも買って食おう。」
「おう!」



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最終更新:2008年09月06日 22:04
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